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フライング・ロータスが語る、『KUSO』と日本文化「三池崇史、塚本晋也、北野武は僕のヒーロー」

リアルサウンド

18/8/17(金) 18:00

「この『KUSO』はみんなのために作ったんだ。本当だよ!」

参考:Dirty Projectors、Amen Dunes……村尾泰郎が選ぶ、メロウな歌心を持ったオルタナ作品5選

 監督のフライング・ロータスことスティーヴは、満面の笑顔でそう言い切った。『KUSO』(スティーヴ名義)と銘打たれた本作は、米『Esquire』誌に「史上最も気持ち悪い映画」と言わしめた珍作である。94分に渡って、不条理なストーリーとグロテスクな描写が続き、サンダンス映画祭では退席者が続出したとさえ謳われている。「KUSO」はもちろん日本語の「糞」のことで、本人曰く「アメリカでは全く問題がないよ。だってみんな意味がわからないからね。タイトルを教えたって『へぇ、KUSOかぁ。クールだね』で終わりさ」とのことだ。

 物語の舞台は、大地震が起こった後のロサンゼルス。人々はみんな奇病におかされ、気の触れた状態で生活している。首に喋る“こぶ”ができた女、ある“とんでもない虫”で人を治療する医者、常にお腹を下している男の子、コンクリートを食べる女性……ひとりとしてまともな人物が出てこない群像劇を、ときにスチームパンク的な時代錯誤のテクノロジー描写を織り交ぜつつ、テレビのザッピングを通してコラージュ的に描き出していく。便器の中から顔を出して元カノを口説く男性もいれば、おっぱい恐怖症に悩む男性もいる。悪夢を見るのに近い感覚がありながら、妙に滑稽であり、時にハッとするような高尚さを感じさせる作品だ。

 異質なものを切り貼りして組み合わさることで、観る者をギョッとさせるのは、極めてヒップホップ的な手法である。また、悪趣味な冗談が散りばめられた作風は、90年代の日本のサブカルチャーにおける「鬼畜ブーム」を彷彿とさせる。そうした方法論に、どこか音楽家としてのフライング・ロータスの作品群に通じる部分が感じられるのは、非常に興味深いところだ。

 『ソニックマニア』への出演を控えて来日したスティーヴは、8月16日に渋谷シネクイントで行われた『KUSO』のプレミアム上映会に登壇し、本作を制作した理由やその意図を明かした。伝説的ジャズミュージシャンであるジョン・コルトレーンを大叔父に持つスティーヴは、2000年代よりヒップホップに新たな解釈を与える作品を次々と発表し、レーベル〈ブレインフィーダー〉の仲間たちとともに“LAビート”と呼ばれるジャンルを築き上げ、2010年代のあらゆる音楽シーンに多大なる影響を与えたアーティストだ。そんな彼がなぜ今、このような長編映画を撮ったのか。司会者に尋ねられると、「もともと音楽ではなく、映画の道に進もうと考えていたんだ。ハイスクールを卒業したあとは映画の専門学校に通っていたし、自分なりに映画作りを追求してもいた。でも、音楽方面で注目されるようになって、すっかり忙しくなってしまった。いつかは映像の仕事もしようと思いながら音楽活動を続けてきて、2014年にアルバム『You’re Dead!』をリリースした後に、ようやく少し余裕ができたから、念願の映画作りに取り組んだというわけさ」と、意外な回答をする。

 また、今回の作品は日本のカルチャーから多大な影響を受けていることを明かし、尊敬する映画監督として、三池崇史、塚本晋也、北野武らの名前を挙げる。そして、「僕にとって、彼らはヒーローさ。ここ20年くらい、映画はもちろんアニメやラーメンに至るまで、僕は日本のカルチャーからインスピレーションを受けまくってるんだ。第二の故郷だと思っているくらい。今回、この映画を日本で上映することで恩返しができたと思うと、すごく嬉しいよ」と語った。

 ベーシストのサンダーキャットが楽曲提供をするなど、ブレインフィーダーの面々が制作に携わっていることについて聞かれると、スティーヴは「周りの友達のおかげで、作品を形にすることができた。みんな本業ではないのに、音楽や衣装のことで街中を駆け回って協力してくれた。自分でお金を出して、友達と一緒に作り上げたという意味で、本作は真のインディペンデント映画だと言えると思う」と回答。また、パーラメント/ファンカデリックを率いるジョージ・クリントンが、虫で患者を治療するマッドな医者を演じていることについては、「もちろん、彼本来のキャラクターに合わせた当て書きだよ!」と言って観客たちを爆笑させたほか、「ジョージは撮影の直前になって、『俺は演技なんてしたことがない』と言っていたけれど、いざ本番になったら即興を交えながら想像以上の演技をしてくれた。彼に役者としての才能があることは疑いがない」と称した。

 司会者から、本作の独特な作風について、「スティーヴさんの頭の中を覗いてしまったような感覚」と言われると、「そういう面もあるかもしれない。この映画では、僕がどういうものを可笑しいと思うか、どういうものを見たときにギョッとするか、どういうものを怖いと思うかを表現したから。一種のダークジョークだね。もちろん、四六時中こんなことを考えているわけではないからね(笑)」と言って、またも観客たちを笑わせた。

 日本のカルチャーについて改めて問われると、スティーヴは「おそらく日本とアメリカでは、根本にある発想が違うのだと思う。『僕のヒーローアカデミア』『ドラゴンボール』『カウボーイビバップ』『寄生獣』『殺し屋1』『AKIRA』『新世紀エヴァンゲリオン』……大好きな作品はたくさんあるけれど、どれもアメリカでは絶対に出てこないタイプのものだよ。日本には先見の明を持ったアーティストが大勢いて、そこにすごく惹かれているんだ」と語り、プレミアム上映会は幕を閉じた。

 海を渡って伝わった日本のカルチャーを、LAの天才ヒップホップアーティストの視点から再構築した作品としても、『KUSO』は興味深い作品といえるだろう。8月18日から24日にかけて、渋谷シネクイントで一週間限定のレイトショーとなるため、見逃さないように。(松田広宣)

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