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けやき坂46はより高いステージへと駆け上がるーー“走り出す瞬間”を体現したツアー最終公演レポ

リアルサウンド

18/7/21(土) 12:00

 若さ溢れる力強い曲がある。爽やかさの中にも時おり見せる切なげなメロディがある。中盤で可愛らしいユニットソングを挟みながら、フォーク調の懐かしいテイストを取り入れ、クールに魅せるダンス曲もあり、最後には全員でビシッと締める。なるほど、これは確かに”欅坂46″のライブである。幕張メッセイベントホールにて行われたけやき坂46の『「走り出す瞬間」ツアー 2018』千秋楽で彼女たちが見せたものは、我々の知っている”欅坂46″がこの2年ほどで打ち立てた唯一無二のスタイルだ。では彼女たちは、先輩たちが作り上げたその”欅坂46”の路線をただ踏襲しただけの二番煎じのグループだろうか? その疑問には、あの場にいた誰もが「No」と答えるだろう。

ライブで輝くグループの魅力

 ファンタジーな舞台美術をバックにおとぎ話の世界のような演出を経て、1曲目「ひらがなで恋したい」からスタート。続く「おいで夏の境界線」「最前列へ」とストレートで勢いのある楽曲を繰り出して、グループのストロングポイントとなっているMCへと繋ぐ。隙がなく、スムーズな滑り出しだ。しかも、けやき坂46特有のハッピーオーラで溢れる世界観を序盤からフルで見せていく構成である。富田鈴花が得意のラップを披露するなどメンバーの特技を活かすことも忘れない。

 また今回は、彼女たちにとって初めて持ち曲だけで臨んだライブである(※厳密には1曲だけ漢字欅との合同ユニットによる曲が含まれる)。「制服のマネキン」や「二人セゾン」といった今までカバーしてきた先輩グループの代表曲から離れることで、自分たちだけの力で、持てる能力を存分に発揮したライブだ。今回のツアーはまさに自分の足で”走り出した瞬間”なのである。

 とはいえ、彼女たちは先輩グループを思わせるコンセプトの楽曲にも果敢に挑戦している。独自のカラーを見せつつも、そうではない楽曲にもしっかりと取り組んでいるのだ。例えば、「こんな整列を誰がさせるのか?」と「未熟な怒り」の2曲はいかにも漢字欅が歌いそうなテーマの楽曲だ。〈完璧な機械のように/美しく一つになっても/歯車でしかない〉といった全体主義批判、〈僕たちはなぜに生かされてる?〉のような実存不安を綴った歌詞は、言ってしまえば欅坂46のトレードマークである。しかしながら、けやき坂46というグループの特性上、そうした楽曲から我々が感じ取れる印象は既存のそれとはまったくの別物と言ってよいだろう。

 この2つの曲には、「メッセージ性」と「グループの経緯」とが結び付いた強い説得力を感じ取れる。〈努力をすれば報われるなんて…/運命を教えて欲しかったよ〉などといった歌詞には、単なる若者の青臭さややり場のない怒りに加えて、不遇なグループ史を背後に感じ取れる作りになっているのだ。先輩グループの作り上げたコンセプトを持った曲たちは、彼女たちが歌うことで初めてオリジナルな意味を帯びるのである。

 このように、序盤の5曲ほどでけやき坂46は自分たちのやり方を分かり易く提示している。ライブ慣れしている1期生は圧巻のオーラを見せ、昨年の夏に加入したばかりの2期生は落ち着いた表情を、特に小坂菜緒のキリッとした眼差しはこの日を通しても印象的であった。彼女たちが大切にしているライブという場で、けやき坂46は一層明るく輝いていた。

けやき坂46が打ち立てたスタイル

 シックな深緑の衣装で踊る「線香花火が消えるまで」が始まり、それまでの雰囲気を一掃。先ほどラップを披露していた富田に加えて金村美玖、松田好花の3人によるこの曲は、トラディショナルなテイストが取り入れられた今までにないタイプの楽曲だ。アイドルソングとしては珍しい裏打ちのリズムでもあり、会場のムードを変えるのに十分な楽曲である。佐々木美玲による「わずかな光」や齊藤京子の「居心地悪く、大人になった」などメンバーの人柄や個人史に寄り添ったソロ曲も続けて披露され、個人個人にスポットライトが当たる機会が用意された。新曲を立て続けに披露したり、既存のユニット曲でもメンバーを入れ替えたりなど新鮮な姿でファンを楽しませる。

 それまでの流れを一旦リセットできる安定したMCは折り紙付きで、もはやそれすらも演目の一部のよう。すでにけやき坂46のライブでは定番となっている「永遠の白線」と「誰よりも高く跳べ!」はもちろんのこと、以前まではクールに踊るタイプの曲だった「NO WAR in the future」を和やかな笑顔でパフォーマンスすることで楽曲は見事に進化し、会場の熱気はグイグイと上昇した。場を盛り上げるという目的を念頭に置いたこうした楽曲を後半に固めることで観客の意識は自然とラストの曲へとフォーカスしていく。

 誤解を恐れず言えば、昨年までの彼女たちのファンには先物買い的な意識があったはずだ。あるいは、地道な努力がなかなか実らないもどかしい状況からくる同情票も少なからずあったことだろう。しかし今の彼女たちには、己の感性に忠実に従った結果「ひらがなけやきの世界観が好きだから」という純粋な気持ちで応援されている感がある。それはまさしく独自のカラーを確立したことで勝ち得た状況に他ならない。そればかりか彼女たちは、先輩グループの路線を引き継ぎつつ自らの色もしっかり出すという絶妙なバランスを保っている。それこそが彼女たちが確立したものではないか。つまり、けやき坂46が打ち立てたスタイルというのは、暖簾分けしたグループが徐々に独創性を発揮するための成長戦略そのものである。

高い目標を立てて終えるラスト

 そして本編最後の楽曲は「車輪が軋むように君が泣く」。ここで会場全体の大合唱が起きた。この曲は端的に言って”世代交代”の歌だ。〈古い列車は古いレールを走って/古い車輪が軋む/次の世代は新しいレールの上〉と会場全員がコーラス。それはまさしく今の彼女たちが体現しようとしていることである。この日はアンコールで活動休止中の影山優佳が途中参加。久々にファンの前に顔を出した影山は「やっぱり私って、ひらがなが大好きなんだなって……」と満面の笑みで話すと、この日一番の歓声が湧き上がった。

 その後、1期生全員揃って「ひらがなけやき」「僕たちは付き合っている」を歌唱し、”1期生の絆”を確かめ合う。グループの目標の込められた「約束の卵」を全員で歌い上げ、終演へ。「ライブが私たちの帰ってくる場所」と話すキャプテン佐々木久美の言葉で多くの観客が頷く。

 自らの足で走り出し、独自のカラーを発揮、メンバーの絆を示して、さらに高い目標を立てる。今の彼女たちが見せられる中での最大限のパーフェクトなライブをやり切った。ダブルアンコールでは「NO WAR in the future」を再度披露。最後にはステージから会場の真逆の扉へと走り去っていった。ファンはメンバーへ向かって手を振り、彼女たちのその姿勢を後押ししているかのようだった。

(文=荻原梓/写真=上山陽介)

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