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ASIAN KUNG-FU GENERATION『ホームタウン』、バンドがサウンドにこだわる利点を考える

リアルサウンド

18/12/15(土) 10:00

参考:2018年12月17日付週間アルバムランキング(2018年12月3日~2018年12月9日)

 2018年12月17日付のオリコン週間アルバムランキングのトップを飾ったのはコブクロ『ALL TIME BEST 1998-2018』。サブスクリプションも解禁となり、彼らの音楽に触れる機会は増えていくことになるかもしれない。厚い支持を持つアイドルやK-POP勢に加えて、サウンドトラックなど特定のコンテンツと紐付いた作品が多いのはお馴染みの光景だ。

(関連:ASIAN KUNG-FU GENERATION、『BONES & YAMS』ツアーの音から感じた“揺るぎない自信”

 さて、今回ピックアップするのは、7位のASIAN KUNG-FU GENERATION『ホームタウン』。本作に注目するのは、今週唯一のロックバンドであることに加え、本作が同バンドの後藤正文(Vo/Gt)がかねてから発言してきた、日本のロックバンドの慣習的なサウンドメイクへの問題提起が形になった作品だからだ。本作のサウンドを検討しながら、「いま、ロックバンドがサウンドにこだわることの利点」について考えてみたい。

 これまで後藤はいたるところで“低音”の大切さについて語ってきた。それには、低域が増すことで迫力が出るという単純な利点もあるし、ヒップホップやEDMといった低域重視の音楽がポップミュージックのスタンダードになったのも理由と言える。たとえばビリー・アイリッシュのようないま注目を集めるポップアクトの楽曲では、ほぼボーカルとピアノだけのシンプルなアレンジの楽曲にも重々しいサブベースが加えられていたりする。他のジャンルと見劣りしないためにも、ロックでも低域を重視しなければならなくなっているのだ。

 しかし、本作を聴けば、バンドが取り組んだ新しいサウンドの持つ意味がそれだけではないことがわかるはずだ。

 『ホームタウン』のサウンドの特徴は、まずは第一に、低域を強調したずっしりとしたドラムスとベース。さらにもうひとつ、ギターがステレオの左右に大胆に振り分けられていること。中央には後藤のボーカルが位置し、全体の空間に無理なく各楽器が配置されている。どの曲も基本となるこのフォーマットに従いつつ、丁寧にバランスを整えてある。

 このように低域から高域までを存分に使ってサウンドを整理したことで、楽器の鳴り方や重なり方、メロディの動きがはっきりと感じられる。特に、シングル曲にもなっている「ボーイズ&ガールズ」のアルバムミックスでは、クライマックスを迎える楽曲の後半、ボーカルに重ねられたコーラスやフェイクがとりわけ耳に残る。メロディやギターリフ、そしてボーカルの響きを活かすスローなアレンジが中心になっているのは、そうしたサウンドの特徴をふまえてのことだろう。トラップを意識したハイハットの処理や譜割りを取り入れた「UCLA」のように、“遅さ”のなかにさりげないチャレンジを盛り込んでもいる。

 一方、既発曲の再録「荒野を歩け」や同時リリースの『Can’t Sleep EP』(CDでは初回生産限定で付属)に収められた疾走感のあるエイトビートの楽曲も、パワーが加わってより迫力を増している印象だ。

 このように聴き心地が一変すれば、自ずとリスナーの注意が向くポイントも変わってくる。ツインギターとベース、そしてドラムスのアンサンブルというバンドの個性はそのままであるにもかかわらず、どこか“新しさ”を提示できているのはそのためだろう。また、新たなサウンドを手に入れたゆえの“伸びしろ”がいたるところに感じられるのも新鮮だ。結成から20年を超えてなお、ロックバンドというかたちを活かしたまま、次の表現の可能性を垣間見せる作品を提示できたこと。多くのリスナーからすればもしかしたら些細な達成に思えるかもしれないが、ここにこそ彼らがサウンドのつくりかたを抜本的に見直した意義がある。(imdkm)

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