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Awesome City Clubのバックグラウンドにある幅広い音楽地図 今夏の新曲プレイリストから紐解く

リアルサウンド

18/8/31(金) 17:00

 7月には『フジロックフェスティバル ’18』のRED MARQUEEへの出演を果たし、8月には2020年のカルチャーフェス開催に向けた主催イベント『Welcome to AwesomeCITY Vol.0』を開催するなど、充実した夏を過ごしたAwesome City Club(以下、ACC)。そんな季節の幕開けを飾った配信シングル『SUNNY GIRL』の発表に伴い、彼らは「ACCの新曲『SUNNY GIRL』を知るための10曲」というプレイリストを公開していた。

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 ストリーミング時代に突入し、海外ではアーティストが自らの影響源やお気に入りの曲をプレイリストにして公開するケースが増えていたが、これまでも新しいツールを積極的に活用してきたACCだけに、非常に彼ららしいアクションであり、その選曲自体も非常に興味深いものであった。

 「SUNNY GIRL」でテーマとして掲げられていたのは“レトロソウル×エレクトロ”。これまでも生演奏と打ち込みをオーガニックに融合させて、ソウルやファンクを今に更新してきたが、「SUNNY GIRL」ではクラップやタンバリンを用い、60年代のスタックスやモータウンを連想させる跳ねたリズムを基調としながらも、ホーンやオルガンといった生楽器ではなく、シンセサイザー/シンセベース、ボーカルエフェクトなどを組み合わせることで、新たな質感の楽曲が生まれている。そして、この曲をさらに紐解くためのヒントが、プレイリストに詰まっているわけだ。

 10曲の内訳は、海外アーティスト4曲、国内アーティスト4曲、そして、ACCの過去曲が2曲。まず海外アーティストから見てみると、ジャネール・モネイ「Tightrope(feat.Big Boi)」、ベック「Up All Night」、メイヤー・ホーソーン「Back Seat Lover」、エル・キング「Ex’s & Oh’s」といった並びで、いずれも2010年代に発表された曲であり、ブラックミュージックをそれぞれの形でモダナイズしているという意味で、「SUNNY GIRL」と通じていると言えよう。

 一番直接的なリンクが感じられるのはメイヤー・ホーソーンだろうか。一聴シンプルながら、洗練されたアレンジメントは流石の一言で、過去へのオマージュを忍ばせつつも、さりげないシンセ使いなどが現代性を感じさせる。涼しげなハーモニーやトレモロのかかったエレピなど、まさに「夏に聴きたい一曲」でもある。

 また、エレクトロ寄りのベック、ブルース寄りのエル・キングもさることながら、新作『Dirty Computer』も話題のジャネール・モネイによるレトロフューチャーな独自の質感は、現在のACCにとってのひとつの指標となっているのではないだろうか。

 一方、国内アーティストはというと、Mr.Children「シーソーゲーム~勇敢な恋の歌~」、斉藤和義「ずっと好きだった」、KIRINJI「グッデイ・グッバイ」、大橋トリオによる小沢健二のカバー「ラブリー」の4曲。KIRINJIに関しては、かつて「エイリアンズ」をカバーするなど、かねてから影響を公言しているだけに、独特なコード進行などは今回も大きなインスピレーション源になっていると思われる。

 Mr.Childrenと斉藤和義に関しては、それぞれの曲がエルヴィス・コステロとチャック・ベリーのオマージュ的な曲であることもポイントだが、ここでより注目すべきは歌詞だろう。「SUNNY GIRL」は溢れ出す〈君〉への想いを男目線で歌った一曲であり、「シーソーゲーム~勇敢な恋の歌~」も「ずっと好きだった」も、同様のモチーフをユニークな視点で描いていることが共通点。「ラブリー」も同じく〈君〉について歌っているが、こちらはアコースティック寄りなアレンジによって、夏の夜に聴きたい一曲となっている。

 一時期は「シティポップ」という言葉が一人歩きしていた感もあるが、こうしたプレイリストを見てみると、ACCのバックグラウンドにある幅広い音楽地図がよくわかるというもの。そして、それはブラックミュージックのモダナイズ、あるいはクロスオーバー化といった2010年代の世界的な潮流とシンクロしつつ、KIRINJIや大橋トリオといった先達の歩みを踏まえ、日本におけるMr.Childrenや斉藤和義ばりのポピュラリティをも感じさせるという、ACCの特異なポジションを改めて浮かび上がらせるものでもある。

 8月22日には、配信シングルの第二弾として『8月とモラトリー』を発表。こちらもクラップを配した小気味いいリズムと、シンセのレイヤーを組み合わせ、レトロとモダンが混在する現在のモードをさらに印象付ける一曲に仕上がっている。一方、歌詞に関しては、〈君〉とのこれからを夏の始まりと重ね合わせていた「SUNNY GIRL」に対し、過ぎていく季節に対するメランコリーが綴られているが、atagiはこの曲についてTwitterで「僕がオーサムを始める前にソロでやっていた『青春の日々』という曲を、オーサムでやる為に歌詞やアレンジを手直しして作った」と記している。

 8月27日に渋谷WWWにて開催された『Welcome to AwesomeCITY Vol.0』は、昔から繋がりのある仲間を集めたイベントでもあり、当日「8月とモラトリー」を披露する際は、この曲が彼らと過ごしたライブハウスでの日々をモチーフにしていると話してもいた。過去には雪景色のミュージックビデオも印象的な「青春の胸騒ぎ」という曲を発表し、現在では冬の定番曲となっているが、「8月とモラトリー」もまた夏の定番曲として愛されることだろう。

 なお、ACCは9月も毎週のように全国のフェス/イベントへの出演を予定。「SUNNY GIRL」と「8月とモラトリー」の2曲によって、様々な感情が交錯する、特別なダンスフロアが作り上げられるはずだ。

■金子厚武
1979年生まれ。埼玉県熊谷市出身。インディーズのバンド活動、音楽出版社への勤務を経て、現在はフリーランスのライター。音楽を中心に、インタヴューやライティングを手がける。主な執筆媒体は『CINRA』『ナタリー』『Real Sound』『MUSICA』『ミュージック・マガジン』『bounce』など。『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)監修。

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