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大嘘が現実を変えたーー『カメラを止めるな!』上田慎一郎監督&市橋浩治Pが語る“映画が持つ力”

リアルサウンド

18/9/4(火) 10:00

 わずか2館から現在220館以上の映画館で公開されている『カメラを止めるな!』。6月23日に公開され日本列島を“感染”させる勢いで人気を広げ続ける本作は、“37分ワンシーン・ワンカットで描くノンストップ・ゾンビサバイブムービー!”……を撮ったヤツらの話。“ネタバレ厳禁”にも関わらず、SNSを中心とした口コミは止まず、シネコンから小さな町の映画館までを大いににぎわせている。

 今回リアルサウンド映画部では『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督と市橋浩治プロデューサーにインタビュー。次々に拡大公開が決まる大ヒットへの思いや映画を作り続けることなどを聞いてきた。【インタビューの最後には、サイン入りチェキプレゼント企画あり】

ヒットの大きな要因は“お客さん”

ーーどんどん拡大公開されますが、ひとまずヒットまでの経緯をおさらいさせてください。

上田慎一郎(以下、上田):最初はインディーズ映画としては異例の盛り上がりの中で公開に突入したのですが、最初の1週間は池袋シネマ・ロサは満席ではなく、平日は5〜60人の日もあったんです(参考:池袋シネマ・ロサの座席はCINEMA ROSA 1が193席、CINEMA ROSA 2が177席)。新宿K’s cinemaもギリギリで満席になったときもあって、1週目は簡単に席が埋まったわけではありません(参考:K’s cinemaの座席は84席)。それから2週目以降に、だんだん人が入り切らなくなって、朝から並ばないといけない状態になりました。だから1週目は必死になってSNSで発信していました。

ーー公開当初の動員目標はどれくらいだったのですか?

上田:僕と市橋さんとキャストが揃って宣伝会議をしましたね。

市橋浩治(以下、市橋):その時は5,000人でした。『カメラを止めるな!』は監督&俳優養成スクール・ENBUゼミナールのシネマプロジェクト第7弾目の作品なのですが、これまでの作品は2,000人くらいの動員実績があったんですね。だから「2,000人は多分いくけれど、2館で5,000人動員できれば良いよね」という考えで動いていました。新宿K’s cinemaが1日3回上映で、池袋シネマ・ロサが1日1回しかなかったので2館分の動員数を計算すると、ほぼ8割入らないとダメくらいの数字だったんです。

ーー見込みを大きく上回ったわけですが、「キテる!」と感じたのはいつ頃でした?

市橋:2週目以降に興行面での手応えを感じました。その当時、新宿K’s cinemaと池袋シネマ・ロサの支配人と話をした時に、2館だけではまかないきれないので館数を広げていいという話ををいただいたんです。それから、川崎のチネチッタや渋谷のユーロスペース、イオンシネマ大宮で2館から5館の拡大が決定しました。でも、それでも足りないくらいのお客さんの反応があって、「これは凄いことになりそうだ」と思いましたね。それが2週目が終わり3週目に差しかかる頃でした。あとお客さんが熱狂的になったもう1つの理由は、毎日誰かが舞台挨拶に登壇していたからだと思うんです。僕たちはインディペンデントの中でやっているので、キャストたちのスケジュールが割とゆるく(笑)、毎日のようにサイン会やイベントを開催していました。ですから、お客さんたちは、その舞台挨拶やサイン会を含めた、ある種の劇場エンターテインメントとしてこの作品を楽しんで帰っていただいたようにも思います。「この映画を広めたい」とお客さんが宣伝マンになっていただけたのもヒットの大きな要因です。

上田:1週目のお客さんはインディーズ映画ファンの50代〜60代くらいのおっちゃんが多かったんですが、2週目から若者もどんどん増えてきた印象です。でも、僕自身は公開館数や動員数のような目に見える凄い数字が出ても、なかなか実感しにくくて……。だから街で『カメラを止めるな!』のTシャツを着ている人にすれ違ったりとか、女子高生が女子トイレで『カメラを止めるな!』の話をしていたというツイートや、Tシャツを着ていたら街中で「面白かったですか?」と声をかけられたというツイートを見たり、街の声を聞き始めたときに「凄いことになってきたな」という思いを抱きましたね。

ーーツイートといえば、キャストや監督、スタッフ一丸となって感想を積極的にいいねやリツイートをしていましたよね。それも拡大の要因かなと思っています。

上田:みんな寝不足になるぐらい、エゴサーチしてました(笑)。

市橋:最初の方は本当に喜んで返していたんです。いまや、それが追いつかなくなっちゃって(笑)

上田:1週目とかは多分全部見てたと思います。

市橋:全員が全部見ていいねを押していましたね。

上田:かつては「これ見た?」なんて発見したツイートを報告し合えるくらいだったんですが、もうどこかの段階から全く追いきれなくなりました。

ーー本作の拡大公開にあたって、配給会社のアスミック・エースが途中から加わりましたが、それが決まったのは?

市橋:1週目にアスミック・エースの方が観てくださり、2週目に相談をいただいて、2週目の終わりくらいには拡大の話が決まりました。ただその時には劇場の夏休み編成がほぼ決まってたので、8月のお盆過ぎくらいから徐々に公開していく計画だったんです。でも、世間の熱狂ぶりとかお客さんの入り具合、あとイオンシネマ大宮や川崎チネチッタというシネコンでの動員成績がよかったこともあり、劇場さん側も前のめりになってくださいました。当初予定していた拡大公開がガッと繰り上がって、8月3日スタートになったんです。

ーーTOHOシネマズなどでの公開が決まった後は、市橋さんは具体的にどんな動きを?

市橋:色んな準備作業を図ったという感じですかね。メディアの取材対応は基本的に上田くんにやってもらっていたので、それこそ物販とかパンフレットをどうすんねんと……(笑)。今まで2館で売っていたものが150館で売るとなったら、「そりゃ無理だろ〜」と思いましたね。

ーー拡大するにあたり大変な仕事もあったと思いますが、自分の作品が大きなスクリーンで流れるのは最高ですよね。

上田:なんか本当にまだそれは言葉にできないです。ずっとふわふわしながら、「本当なのかな、いや本当だよな」と思いながら観ていました。実感できるのは多分、もうちょっと後になった頃じゃないかな。驚くようなニュースが毎日1時間おきに飛び込んでくる状態で、びっくりしているうちに1日が終わっていくんです。感慨にふける時間はないですね。

ーーちなみに上田監督と市橋さんが組んだきっかけは何だったんですか?

市橋:テアトル新宿でかかっていたオムニバス映画『4/猫(ねこぶんのよん)』の4人の監督のうちの1人が上田くんだったりと、以前から僕が一方的に上田くんの映画を観ていたんです。でも、コミュニケーションは取ったことがなくて。それから、シネマプロジェクト第7弾の企画が始まったのですが、2人の監督のうちもう1人が決まらなかったんです。で、すでに決まっていた岡元雄作監督が「上田くんどう?」と言ってきて、「上田くんだったら良いんじゃない」ということで一緒に仕事をすることが決まりました。

ーー劇中でのプロデューサーは、強烈なキャラクターでしたが、市橋さんもあんな感じだったり?(笑)

市橋:あれは、僕じゃないですよ! 僕もっと何もしないですからね(笑)。僕は、映画プロデューサーというよりも俳優や監督を養成するENBUゼミナールの代表なので、卒業生を含めた若い人たちが世に出るきっかけ、場を作るプロデュースの方が強いんです。シネマプロジェクトもそういう意味合いが強くて、若い監督さんと若い俳優さんがワークショップを通して映画を作る。そして最後に上映して、色んな人に観てもらえれば、彼らが活躍できるきっかけになるかなという思いでやってきました。メインは場作りのプロデュースなので、ぶっちゃけていうと映画自体のプロデュースは、そんなにないんですよね。

ーーそれでは2人で話し合って決めたことはあまりなかったと。

上田:僕がずっと自主映画を作っていたので、中身のことは全部任せてもらえました。一個だけあるとすると、火炎放射をぶっ放すっていうシーンを書いた時に、「火炎放射はやめて」とストップがかかりましたね(笑)。マイクブームで押すことになりました。

市橋:危ないし、怪我するからね。スプレー缶みたいなので火炎放射器をやろうとしたんですよ(笑)

上田:虫除けスプレーをシューッとしてライターで燃やして……(笑)

市橋:もしかしたら爆発するかも知れないから、「それはやめとこ」という話にはなりましたね。撮影日数とか予算に関わってくるので、そこは言ったりもしましたけど、あとは本当に監督にお任せでした。

ーーずっと自主映画を撮っていたとのことですが、上田監督が人生で初めて映画づくりを始めたのはいつだったのですか?

上田:映画というより、銃で追いかけ合ったりの自主映像を撮り始めたのは中学生の頃ですね。

ーー映画を好きになったきっかけは何だったのでしょうか。

上田:僕は人口1万人にも満たない田舎の出身で、映画館に行くにも1時間くらい電車でかかるほどなんですよ。でも、中学生とか高校生の時って、レンタルビデオ店で借りるお金もそんなにないじゃないですか。だから、友達のお父さんの本棚に山程の映画のビデオのコレクションがあって、それを借りて観ているうちに映画が好きになったんだと思います。

ーーそれから映画監督を志して今に?

上田:夢は、映画監督になるかお笑い芸人になるかでしたね。僕は映画監督よりもお笑い芸人の方が影響を受けていると言っていいくらいお笑いが好きなんです。高校を卒業する時に映画の道を目指すか、吉本のNSCに進むか迷った末に映画の道に進んだんです。M-1も応募したことがあります。

ーー誰かを楽しませたいという気持ちは共通していますね。

上田:やっぱり笑いが好きなんですよね。中学校高校の時も、漫才とかコントを作って文化祭で発表したり、駅前で何時からやるので来てくださいとか言って漫才を披露したりしたこともありました。

ーー市橋さんは、そんな上田さんを見出して……?

市橋:人となりまで詳しくは知らないですよ(笑)。ただ上田くんの短編集も、基本良い話なんですけれども、どこかコメディー要素が入っていて、くすっと笑えるところが多いので、そこに魅力を感じたことはありました。

ーー本作の制作前にクラウドファンディングサイトで支援を募っていましたが、上田監督の「映画は夢であり大嘘」という言葉が胸に刺さりました。

上田:あそこに書いた夢が叶ったなという感じです。脚本で書かれてることは大嘘だらけなんですけれど、本当にラストのあのシーンはバランスを取るために演技とか全くしていないんですね。大嘘だらけの脚本の中に、本物が混ざってくるというのを僕はずっと目指していました。大嘘だらけのハリウッド映画を観て育ってきたわけで、でも僕は映画監督になろうと決めた。これは“大嘘が現実を変えた”わけじゃないですか。同様に『カメラを止めるな!』を観てくれた方の中にも、「もう1回部活を始めました」とか、「脚本を描き始めました」と言ってくれる方がいたんです。それは本当に嬉しいなあと思いましたね。監督としてこれ以上の幸せはないです。

ーー舞台挨拶で色んな劇場を回って実際に見たお客さんの表情はどうでしたか?

上田;舞台上からお客さんの顔ってなんとなく見えるんですよ。今まではたまに、「ああ、なんか気にいらんかったんかな」っていう人もいるんですけど、本作の場合、皆良い顔していて、みんな味方って感じがしました。同じチームのような、なんなら子を見る親のような顔で舞台上を見ていてくれていて嬉しかったです。

ーーそんなヒットを受けて、ENBUゼミナールを取り巻く状況はなにか変わりましたか?

市橋:うちは1年コースの春募集なので、まだ実感はないのですが、この時期にきたことなかった資料請求がきてるなという感触はあります。今、第8弾のクラウドファンディングをやっているんですけど、初動の集まり具合は半端ないです。たぶん上田くんの時は、締切10日前にようやくだっただったと思うのですが、今回の柴田啓佑監督のは目標額も高いのにすでに達成してしまいました。インディペンデント映画を応援しようという人が増えたのかもしれないなとは思いますね。

ーー観客だけでなく、作り手からのアプローチも増えたのではないでしょうか。

上田:ロビーで連絡先を結構聞かれて、メールやFacebookのメッセンジャーを通して、若い人たちから連絡が凄くきますね。「なんでもいいんでやらせてください」というものからキャスティングについてや使っている機材などの質問までたくさん。

ーー上田監督は、若い人たちにどんなアドバイスを……?

上田:「まず、撮れ!」と返していますね。1本目から100点を目指している人が多いのですが、僕は他愛ないものを放課後に大量生産していたので、トライ・アンド・エラーを繰り返して映画を作ってきました。なので、まずは撮って体で失敗するのが一番覚えが早いんです。四の五の言わずに撮るべし撮るべし!と思っていますね。

ーーわたしも含め、若い世代は失敗をするのは凄く恐れている人が多い気がします。

市橋:あと周りのこと、とても気にしますよね。周りからウケるようなことをやろうとするんですよ。でも、考えるのをやめて、やりたいことをやったら良いと思いますよ。うちの生徒もそうですけど、やりたいことをやっている人の方が面白いです。変に周りのこと意識していると、出来上がった作品がどこかで観たことあったりつまんなかったりするんです。

ーーでも正直失敗は怖いです。

上田:僕が作った短編の台詞なんですけど、僕が妻と結婚したのは、幸せになりたいからではなくて、この人とだったら不幸になっても良いかなと思ったからなんです。僕はずっと「幸せになります!」って結婚式とかで言うことに、すごく違和感を抱いていたんですね。幸せになりたいからその人と一緒にいるんじゃなくて、不幸になってもいいと思える人だから一緒にいる。映画を志した人が折れるのって、映画を撮って幸せになろうとしていて、それが叶わないからですよね。でも、自分が不幸になってもいいなと思える仕事をすれば、不幸にならないんですよ。逆に不幸になってもいいくらい好きじゃないと続かないと思います。「失敗を恐れるな」とか、「死ぬこと以外はかすり傷」みたいな言葉って結局精神論なんですよね。その言葉を見た時は火照れると思うんですけど、燃えた炎は続かない。僕の場合、失敗が起きた時に、面白おかしく書いて毎日のようにブログを更新していました。だから、失敗が起きてもよかったんですよ、ネタになるから。失敗が起きても前に進んでいく仕組みを自分の中で生み出すのが秘訣かもしれませんね。

(取材・文・写真=阿部桜子)

■公開情報
『カメラを止めるな!』
全国公開中
監督・脚本・編集:上田慎一郎
プロデューサー:市橋浩治
出演:濱津隆之、真魚、しゅはまはるみ、長屋和彰、細井学、市原洋、山崎俊太郎、大沢真一郎、竹原芳子、浅森咲希奈、吉田美紀、合田純奈、秋山ゆずき
配給:アスミック・エース=ENBUゼミナール
(c)ENBUゼミナール
公式サイト:http://kametome.net/index.html

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