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ユアネスが語る、バンドとして変わらず大切にしていること「真ん中にあるのは歌」

リアルサウンド

18/11/21(水) 12:00

 3月に初の全国流通盤『Ctrl+Z』(コントロールゼット)をリリースした福岡発の4ピースバンド・ユアネスから1st EP『Shift』が届けられた。このタイトルには“Ctrl+Z+Shift”つまり“元に戻した行動をやり直す”という意味が込められていて、前作『Ctrl+Z』と密接につながった“2枚でひとつの作品”として位置づけられている。

(関連:ユアネスが東京初ワンマンで示した、過去の延長線上にある今と未来

 以前からライブで披露され、ファンの間で音源化が待ち望まれていた「凩」、黒川侑司(Vo/Gt)の表情豊かなボーカルが印象的な「日々、月を見る」など収めた本作『Shift』には、ノスタルジックなメロディ、物語性のある歌詞の世界、ポストロック、音響系、マスロックなどを融合したアレンジなど、このバンドの特性が色濃く反映されている。本作の制作を軸にしながら、CDパッケージに対する考え方、人間性を重視するというバンド観などについても語ってもらった。(森朋之)

■「CDを手に取る意味を作りたい」
ーー1st EP『Shift』がリリースされます。前作『Ctrl+Z』と今回の作品で“2枚でひとつ”として構成されているそうですね。

古閑翔平(以下、古閑):はい。パソコンで曲を作っているので、“Ctrl+Z”(コマンドキー“元に戻す”)をよく使うんです。それを前作のタイトルにしたときに、「次は『Shift』にしよう」と。先にタイトルを決めたというよりも、制作を進めていくなかで「このタイトルが合うな」と思ったんですけどね。

黒川侑司(以下、黒川):うん。前作は過去を振り返るような曲が多かったから、『Ctrl+Z』というタイトルはピッタリだなと思いました。今回の『Shift』は(“Ctrl+Z+Shift”で)“元に戻したものをやり直す”という意味ですね。

古閑:作詞・作曲している立場からすると、全体的なテーマだったり、伝えたいことの核だったりがはっきりしていたほうがやりやすいんです。それをもとにして、歌詞やメロディを選べるので。

ーー物語性のある作品が好きなんですか?

古閑:そうですね。推理モノ、ミステリーとか、ワクワクできるものが好きなので。「どうしてこうなっているんだろう?」と考えるのが好きだし、もともと敏感なんですよ。たとえば本を読んでいても「作者は何を考えてこの作品を書いたんだろう?」と考えたり。曲作りの勉強にもなりますからね。

黒川:古閑はギミックが仕掛けられているのものが好きなんだと思います。それは彼が作る曲にも出ていて。

ーー曲に込められた仕掛けは、メンバーに話しているんですか?

古閑:ほとんど話さないですね。

黒川:こういうインタビューの場で知ることがほとんどです(笑)。

田中雄大(以下、田中):うん、それはけっこうある。制作中はフレーズを考えて、しっかり録ることに集中しているので……。

小野貴寛(以下、小野):まずはしっかり演奏して、後から「この曲にはこういう仕掛けがあって」と教えてもらうっていう(笑)。

黒川:僕は歌う身なので、多少は教えてもらいますね。レコーディング中に、ふと紙に書いて渡されて、その歌詞に込められた意味が図で説明されていたり。まあ、それは僕らだけの楽しみなんですけど、歌詞カードやジャケットにも色々なことが隠されているので、そこも楽しんでほしいなと思います。

ーー曲を聴くだけではなく、いろいろな楽しみ方ができると。

黒川:そうですね。過去の作品でもちょっとずつやってきたので、「今回も何かあるはず」と思ってくれている方もいるので。

古閑:ユアネスというバンドのいろいろな側面を見つけて、楽しんでほしいんですよね。そのためにCDジャケット、歌詞カードにも注力していて。CDが売れない時代と言われてるけど、だからこそCDを手に取る意味を作りたいんです。単に音楽を再生するメディアではなくて、小説や絵本のような要素を持たせたいなと。

ーーユアネスの幅広い音楽性が感じられるのも『Shift』の魅力だと思います。

黒川:ありがとうございます。前作とは違ったテイストのアレンジの曲も入っているので、楽しんでもらえるのではないかと思います。

小野:全体的な雰囲気は変わってないかもしれないですが、アレンジ、サウンドの作り方で劇的に変化した部分もあって。ドラマーの目線でいうと、前作よりもさらに歌を意識して組み上げていきました。EP全体を通して、“歌モノ”感が強くなっていると思います。

古閑:メンバー全員の共通認識ですね、それは。

田中:うん。特に言葉にしなくても、「黒川の歌がいちばんの武器」というのは最も大事にしているところなので。『Shift』の前半はバンドサウンドで引っ張る曲、後半には歌を押し出した曲が入っていて、それがいい緩急につながっていると思います。

ーーでは、収録曲について聞かせてください。『Shift』の1曲目に収録されている「変化に気づかない」は、音楽ではなく、久しぶりに会った男女の会話で構成されています。

古閑:「凩」を1曲目にしたかったんですが、その前にポエトリーリーディングを置こうと思って。前作も女の子のセリフから始まるし、一貫性を持たせるという意味もありますね。

■「バンドを続けられるかは人間関係にかかっている」
ーー「凩」の作詞は古閑さん、黒川さんの共作です。

黒川:作詞・作曲は基本的に古閑がやっていて、ほとんど完成した状態で渡されるんです。僕がやるのは歌いやすいように語尾を変えたり、少しだけ言葉を入れ替えるくらいですね。歌詞の内容というよりも、ボーカリスト目線でちょっと手を入れるというか。

古閑:それはすごく大事なことだと思っていて。自分で考えたメロディと歌詞、そのつなぎ方によっては歌いづらいこともあるし、ブレスが上手く入れられないこともあるんですよ。それは黒川に直してもらったほうがいいし、彼の声質を最大限に活かすことがいちばん大事なので。

黒川:「凩」は以前からライブで歌っていて、そのなかで変わってきた部分もありますね。バンドを結成したばかりの頃に作った曲なんですよ。

古閑:その前は変拍子の曲ばかり作ってましたからね(笑)。学生時代(音楽の専門学校)はどうやって曲を作っていいかわかってなかったんです。みんな楽器コースで、演奏できる範囲が広かったから、とりあえずやれることを組み合わせていくうちに、どんどん曲が複雑になって。

黒川:その頃の曲も、パーツに分けるとカッコいいフレーズがたくさんあったんですけどね。

田中:いろんな楽曲のダイジェストみたいになってたよね。

古閑:変拍子や複雑な構成を取り入れたマスロックが好きだったから、その影響もあったんだと思います。でも、卒業するタイミングで「自分たちなりにストレートな曲を作ってみよう」と思って、そのときに出来た曲のひとつが「凩」なんですよ。方向性を変えたのではなくて、表現したいこと、伝えたいことが明確になったんだと思います。

黒川:実際、ライブで歌っていてもお客さんに伝わっている感覚がすごくあって。ずっと大事にしていた曲だし、「音源にしないんですか?」という声もいちばんもらっていたので、今回収録できてよかったです。

ーー現在のユアネスの原点とも言えるかもしれないですね。「少年少女をやめてから」は個性的なアンサンブルが印象的でした。

黒川:前作をリリースした直後くらいに作りはじめた曲です。

古閑:比較的新しい曲なんですが、なぜか初期の自分たちの感じがグワッと出ていて。

田中:そうだね。

黒川:テクニックを持っているメンバーばかりなので、以前から「それを出さないのはもったいない」と思っていて。この曲では楽器隊の良さがすごく出ていると思います。ぜんぜんガマンしてないというか。

古閑:ストレス発散?(笑)。 

田中:“ここは発散していい”というポイントがわかってきたのかも。

小野:ドラムも信じられないような動き方をしてますからね(笑)。

古閑:「動き方」っていうと、踊ってるみたいだけど(笑)。

ーー確かにかなり攻めたアレンジですが、まったく難解に聴こえないところがおもしろいなと。

黒川:そこが成長できた部分なんでしょうね、当時の自分たちと比べて。

田中:うん。技術的なことは駆使しつつ、歌はちゃんと真ん中にあるっていう。だから自然に聴いてもらえるんだと思いますね。

ーー「少年少女をやめてから」というタイトルにはどんな意味があるんですか?

古閑:『Shift』も過去を振り返るような曲、ノスタルジックな雰囲気の曲が中心になっているんですが、制作のなかで「自分たちはいつ少年をやめたのか?」と思って。よく考えたら、いつ少年じゃなくなったなんてわからないなって……。あと、「少年少女をやめてから」は自分たちの自主企画イベントのタイトルでもあるんです。

ーーユアネスの精神性を示すフレーズなのかも。

古閑:そうですね。ただ、いまも少年みたいな部分がかなり残っているんですよ。バンドも遊びみたいな感覚でやってるところがあります。遊びっていうと語弊があるかもしれないけど、学校の友達と遊びにいくような感覚で音楽をやれているのはいいことだと思うので。スタジオに入った後、4人でゲームセンターに言って遊んだりしますからね(笑)。

小野:誰も何も言ってないのに、自然とゲームセンターに行くっていう(笑)。

古閑:パンチングマシーンとかクレーンゲームとかやってます。

ーーそれは高校生っぽいかも。

黒川:そうですよね(笑)。ホントにずっと一緒にいるんですよ。

古閑:専門学校のときから、一緒にいるグループだったんです。そういうことが大事だと思うんですよね、僕は。バンドを楽しく続けられるかどうかは人間関係にかかっているし、一緒にいて楽しくないとムリなので。曲を作ってるから一人で背負ってる部分もあるんですが、メンバーがイヤな人たちだったら絶対続けられないじゃないですか。自分たちが楽しんでないと、聴いてくれる人も楽しくないだろうし。

■「伝えたいこと、やりたいことはずっと同じ」
ーー続いてはインタールードの「T0YUE9」(ルビ:かわんないよ)。

古閑:「少年少女をやめてから」から、いきなり「夜中に」にいくと違和感があると思って。これもEP全体の仕掛けのひとつなんですが、日が落ちて、夜になっていく設定になっているんです。なので、この2曲の間に日が暮れていく風景を思い描けるような曲を入れたいなと思い、作りました。

ーーなるほど。「夜中に」はピアノと歌ではじまる叙情的なバラードナンバー。まさに歌を聴かせる曲ですね。

古閑:そうですね。前作に入ってる「Bathroom」が自分にとってかなり強い曲で。その楽曲とどう戦って、どうやって超えていくか? と考えたときに「引き算してみよう」と思ったんです。ボーカル、歌詞をしっかり真ん中に置いて、伝えたいことをさらに明確にすることで、「Bathroom」とは違う色が出せるんじゃないかなと。

黒川:もともとバラードが得意なので、「夜中に」みたいな曲が歌えるのはすごく嬉しかったです。でも、レコーディングではかなり苦労しました。表情の出し方、感情の伝え方についていろいろと考えて……。この歌詞には男性と女性が出てくるんですが、「ふたりのことをすぐそばで見ていたとしたら、どんな気持ちになるだろう?」という意識で歌ったんですよ。それが(歌詞の世界を)自分に当てはめることになると思ったし、そういう意識で歌うと、声色もぜんぜん違ってくるので。ライブではお客さんの顔を見て歌いたいんですが、しっかり伝えようとすればするほど、目を閉じちゃうんですよね(笑)。

ーーフィクション的な語り部ではなく、黒川さん自身の感情も投影しているんですね。こういうバラードを表現できるところも、ユアネスの武器だと思います。

黒川:それは僕だけではなくて、楽器隊の力ですね。さっき古閑が言ったように、引き算が出来る人たちなんですよ。フレーズを入れようと思えばいくらでもやれるんだけど、あえて弾かないという選択もできるというか。

小野:特に「夜中に」と「日々、月を見る」では、引き算をすごく意識していました。ただ音を減らすだけではなくて、一つひとつの音の響かせ方にもこだわっています。

田中:「夜中に」のベースに関しては、自分の味を出すのではなく、バンドの一部、音圧になれればいいという感じでした。それは消極的な意味ではなくて、歌とまわりの音を引き立たせることに全力を注ぐっていう。

ーー楽曲に対する理解力も向上しているんでしょうね。各楽器のアレンジは、メンバーそれぞれが考えているんですか?

黒川:そうですね。そこは個人で。

古閑:曲を作っている立場として、アレンジの方向性というか。「こうしてほしい」というものはあるんですが、伝えないことが多いです。それぞれが自分で考える力を付けてほしいし、僕が言わなくても気付いてほしいので。フレーズを探す力、察する能力というのかな。それがあれば、あとは細かいニュアンスをすり合わせるだけになります。今回の制作では、それがかなりできたと思います。

ーー最後の曲「日々、月を見る」については?

古閑:いちばん新しい曲です。全体の流れとして、「夜中に」で終わってしまうと、過去に対して未練がありすぎる気がして。もうちょっと清々しい気持ちを表現しつつ、おもしろい仕掛けができたらなと思って、「日々、月を見る」を入れることにしました。少しだけ前を見ている感じを歌詞とサウンドで表現した曲ですね。

黒川:セリフ調の歌詞が多いため、正確にピッチを当てるだけでなく、言葉の意味をどこまで出せるかを考えて歌いました。まだ歌詞の内容を完全に理解できてないと思うんですよ。これからライブでたくさん歌っていくなかで、自分なりにしっかり意味を作っていけたらなと。

小野:“日々月”は歌の感情を押し上げることを意識していて。ハイハットの開き具合、刻み方を含めて、言い尽くせないほどこだわりました。

田中:メロディがないドラム(小野)がそこまで考えているんだから、それを受け止めつつ、歌を伝えるためには何が必要かを考えながら制作していました。どこまでやれたかは、自分ではまだわからないですけど……。

ーー来年1月のツアー『Shift Tour 2019』のなかで、その答えが少しずつ見えてくるのかも。

黒川:ライブでやるとまったく変わってきますからね。「音源よりも熱量を感じた」と言われることも多いです。

ーー理想のライブのあり方も見えてきました?

黒川:どうだろう……?

田中:リラックスして観てほしいとは思いますけどね。

黒川:あ、そうだね。アーティスト写真とか音源のイメージで「クールな人たち」と思われることもあるんですが、ぜんぜんそうじゃないので。ライブに来てくれる人たちには、肩に力を入れず、自由な気持ちで観てほしいんですよ。僕らも好きなようにやってるので。

古閑:ユアネスのライブを観るときは、オフラインになれる時間にしてほしいんです。ふだんは仕事や勉強、考え事に追われている人が多いと思いますが、自分たちのライブのときだけはすべてをシャットダウンして、楽曲だけを聴いてほしいなと。

ーー全員でガッツリと盛り上がるというより、1対1で向き合うようなライブなのかも。フェスに出演することも増えてますが、おそらくかなり異色ですよね。

黒川:そうかもしれないですね。

小野:まわりに合わせるというよりも、フェスのなかでひとつの色になれたらいいなと思ってます。

ーーフェス用に盛り上がりやすい曲を作ったりはしない、と。

黒川:そこで焦る必要はないと思っているので。アガれる曲をやりたくなったらやるだろうし。ムリにやるのは違うかなと思っています。

古閑:そういうことをやると、ボーカルのテンションが落ちちゃうので。

黒川:すみません(笑)。ライブでミスしたときもそうなんですけど、あまり余計なことを考えると“沼”になってしまうので。

ーーバンドが表現したいことを真っ直ぐにやるということですね。

古閑:そうですね。

黒川:そこは曲げたくないですね。「方向性を変えた」と思われることもあるだろうし、外からは変化しているように見えるかもしれないけど、自分たちはまったく変わってなくて。わかりやすく表現できる技術は身に付いてきたけど、伝えたいこと、やりたいことはずっと同じなんですよね。

(取材・文=森朋之)

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