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あいみょん「今夜このまま」を音楽的に考察 小沢健二、フリッパーズギターからの影響も?

リアルサウンド

18/11/9(金) 8:00

 10月24日に先行配信が開始したあいみょんの新曲、「今夜このまま」。2016年のメジャーデビュー以来、6枚目のシングルとなる。ドラマ『獣になれない私たち』(日本テレビ系)のエンディングテーマとしても話題の同曲を通じて、躍進を続ける若手シンガーソングライターの作風に注目してみる。

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 まず、「今夜このまま」の構成は、Aメロ(‐A’メロ)‐Bメロ‐サビからなるコーラスを二回繰り返し、Cメロから最後の半音上がった大サビで締めるオーソドックスなもの。このように、あいみょんの楽曲はあまり奇をてらった展開を含まない。コード進行にしても、J-POPの定番と言えるカノン進行やそのバリエーションなど、手堅いものが多い。親しみやすくグッとくる展開を重ねて、堅実に楽曲を紡いでいくスタイルと言えるだろう。

■簡潔かつ想像力をかきたてるフレーズが続く歌詞

 歌詞も、隠喩やちょっとしたレトリックを使って言葉を削ぎ落とし、メロディによりそうようなものになっている。「今夜このまま」でも、具体的な名詞を使わずに、お酒やスマホといった小道具やシチュエーションを彷彿とさせる、簡潔かつ想像力をかきたてるフレーズが続くのが印象的だ。その点、デビューシングルの「生きていたんだよな」での語りはちょっと毛色が違う。しかし、語りから自然に短いBメロに移行して、そのままサビになだれこんでいく手際の良さには、丁寧に展開をつくっていく作家性がにじみ出ている。

 いたずらに予想を裏切らない安定感のある展開に、言葉とメロディがきちんと寄り添ったボーカルは、ポップスとして人々に馴染みやすい。そこにスパイスを加えているのが、少ない言葉数で豊かな情景を浮かび上がらせる、巧みな作詞力だろう。

■小沢健二などの影響を感じさせるR&B的なクールさ

 サウンドの観点から言えば、アコースティックギターの弾き語りを中心としたフォーキーなアレンジながら、ところどころR&Bやダンスミュージックを思わせるビートの太さが感じられるのが面白い。現在のJ-POPシーンでは、バンドであれシンガーソングライターであれ、ロック的なバンドアンサンブルが優勢な傾向があるように思う。その点、あいみょんはむしろR&Bを消化した90年代末のJ-POPに近いかもしれない。

 その結果として浮かび上がってくるのが、サウンドの重心の低さだ。「今夜このまま」で一番耳に残ったのは、ドラムのチューニングの低さ。打ち込みで芯のある低めのキックやスネアによって、楽曲全体にぐっと迫力が出ている。過去の曲に目を向けてみても、楽曲・アレンジ共にR&B的なクールさを強調している「愛を伝えたいだとか」や、打ち込みのドラムやパーカッシブなサウンドがくまなくはりめぐらされた「満月の夜なら」もサウンドの重心の低さが際立っている。アレンジャーとして一貫して関わってきている田中ユウスケ(agehasprings)の采配によるところもあるのかもしれないが、小沢健二やフリッパーズギターに憧れていたというあいみょん本人の資質も大きいはずだ。

 あいみょんは、シンガーソングライターとしての表現力はもちろん、ポップスの書き手としての才覚にも溢れたバランス型のミュージシャンだと言える。しかしそれは単に優等生的というわけではなく、J-POPという大きな看板を堂々と背負えるだけの力量を持つという点で、稀有な才能だ。「今夜このまま」の巧みさに酔いしれつつ、彼女の活躍に期待したい。(imdkm)

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