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黒木華、なぜ監督たちから再起用される? 2018年出演作から考えるラブコールが絶えない理由

リアルサウンド

18/12/20(木) 6:00

 2018年下半期、もっとも強い輝きを放った女優といえば、黒木華ではないだろうか。劇場アニメ『未来のミライ』にはじまり、主役やヒロインを務めた作品が怒涛の勢いで公開されてきた。待望の中島哲也監督最新作『来る』が封切られ、話題のドラマ『獣になれない私たち』(日本テレビ系)が惜しまれつつ終了したばかりのこのタイミングで、彼女の活躍を振り返りたい。

 声優を務めた『未来のミライ』だが、監督である細田守作品への参加は、『おおかみこどもの雨と雪』(2012)、『バケモノの子』(2015)に続きこれで3度目だ。舞台出身者である黒木とあって、自在な表現力の高さはもちろんのこと、穏やかで透明感のある彼女の声の魅力は今作でも十分に発揮されていた。ところで、立て続けに細田作品に起用されている黒木だが、ほかの監督たちの多くも、これまで黒木を再起用してきた。

【写真】“あれ”に怯える黒木華

 『小さいおうち』(2014)、『母と暮せば』(2015)では山田洋次監督が、『ソロモンの偽証』(2015)、『ちょっと今から仕事やめてくる』(2017)では成島出監督が黒木を二度に渡ってキャスティング。さらに、劇場アニメ『花とアリス殺人事件』(2015)、『リップヴァンウィンクルの花嫁』(2016)では岩井俊二監督が、『繕い裁つ人』(2015)、今年公開の『ビブリア古書堂の事件手帖』では三島有紀子監督が、また同じように黒木をキャスティングしているのだ。

 ドラマ『獣になれない私たち』(日本テレビ系)では、強烈なニート姿、そしてそこから一歩を踏み出そうとする姿を多くの反感と共感を得ながら演じ、地上波作品でもその存在感の大きさを示した黒木だが、このところドラマへの出演は年に一本ペース。映画への出演の方が多いこともあってか、やはり“映画女優”としての印象が強い。なぜ、彼女は立て続けに映画に起用されるのか。ラブコールが絶えないその理由は、今年の公開作を並べてみれば見えてくるかもしれない。

 日本映画界の重鎮である木村大作と小泉堯史がタッグを組んだ時代劇『散り椿』では、黒木の儚い表情がスクリーンに映え、『日日是好日』では故・樹木希林とともに心温まる掛け合いで魅せた。『億男』ではヒロインを務め、作品の根幹を成す、“お金”に関する問題を問いかけ、さらに、野村周平とのダブル主演を務めた『ビブリア古書堂の事件手帖』では、ミステリー、サスペンス、ラブストーリーといったジャンルを、品のある佇まいで越境し観客を導いた。そして、問題作の『来る』である。黒木が演じるのは、表向きは慎ましく穏やかな妻にして母親だが、徐々にその像が崩れていくという役どころだ。本作は三章立ての構造を持った作品で、彼女が中心に立つのは第二章にあたる部分。人間の心の“美醜”を掘り下げていく、大胆さと繊細さの同居した黒木の演技は、彼女の真骨頂だといえそうだ。

 キャスティングは監督の一存ではなく、そこに関わる多くの人間の意向が反映されるのだろうが、この幅広いラインナップへの彼女の適応力の高さからは、再起用される所以や、作り手たちからの信頼度の高さがうかがえる。

 そしてもちろん、今年の活躍で忘れてはいけないのはが『西郷どん』(NHK)での西郷糸役だ。歴史ある大河ドラマでの大役を務めたことは、『真田丸』(2016)に続き、映画や民放ドラマだけでなく、より幅広い層からの認知度や支持を得ることにつながったのではないだろうか。気鋭の監督から巨匠まで、大女優とのやりとりから子役との掛け合いまで、多種多様な作品でまったく違う顔を見せる黒木華。2011年の映画デビューからまだ7年のキャリアにしてベテランの風格さえ漂う彼女こそ、現代トップ女優の一人とみて、誰も異論はないのではないだろうか。

(折田侑駿)

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