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Mr.Childrenは変わらないために変わり続けるーー感動と興奮が積み重なった東京ドーム公演

リアルサウンド

19/6/5(水) 17:00

 全国ドームツアー『Mr.Children Dome Tour 2019 “Against All GRAVITY”』、東京ドーム5月20日公演。最新アルバム『重力と呼吸』を携えた全国ツアー『Mr.Children Tour 2018-2019 重力と呼吸』を引き継ぐ形で開催された今回のツアーは、(タイトル通り)“すべてのGRAVITY(重力、引力、容易ではないこと)に抗う”という意思を通奏低音にしながら、Mr.Childrenの普遍性と最新モードを同時に体感できる内容となった。

(関連:Mr.Childrenは渇望こそが推進力に ロックバンドとしてさらなる覚醒果たした『重力と呼吸』ツアー

 繊細で奥深いシンセのフレーズを中心にしたSEとともにライブがスタート。田原健一(Gt)、中川敬輔(Ba)、鈴木英哉(Dr)が登場し、演奏が始まる。オープニングナンバーは、アルバム『重力と呼吸』のリードトラック「Your Song」。イントロで桜井和寿(Vo)がアリーナ中央の花道に姿を見せ、ドーム全体が大きな歓声で包み込まれる。〈そう君じゃなきゃ/君じゃなきゃ〉というサビのフレーズが響き渡り、早くもすさまじい感動が生み出された。さらに「Starting Over」「himawari」を披露。メンバー4人とSUNNY(Key/Cho/Gt)、世武裕子(Key/Cho)を交えたアンサンブルはきわめてシンプルで、ひとつひとつの音の輪郭がダイレクトに伝わってくる。“まるでライブハウスのような雰囲気”と言えば少し大げさかもしれないが、東京ドームとは思えないほど“近い”のだ。巨大なステージを端から端までダッシュし、観客のそばで音楽を伝えようとする桜井の姿も心に残った。

 「everybody goes -秩序のない現代にドロップキック-」で心地よい一体感を演出した後、最初のMC。「東京ドームはデカくて広いです。でも、大丈夫です! 僕ら、イチロー選手のレーザービーム以上のスピードで、威力で、遠くまで届けるから。受け取ったら、何バウンドしてもいいよ。こっちまで返して」と音楽を介したコミュニケーションに対する思いを率直に表明した後は、「平成のヒット曲を、もう1回、もう1回」と「HANABI」へ。「ちょうだい!」という桜井の声に導かれた大合唱が生まれる。さらにイントロが始まった瞬間に「おおぉぉ!」という声が沸き上がった「Sign」も。ここでも4人は原曲にきわめて近いアレンジとともに言葉とメロディを奏でていた。ステージ奥に置かれた可動式のLEDをはじめ、最新の機材を駆使した演出も施されているが、ライブの中心はあくまでも桜井、田原、中川、鈴木が放つ生身の音と声だ。特に桜井のボーカルは、過去最高レベルにエモーショナルだった。

 ここで桜井は、改めてツアータイトルについて説明。「僕らが対峙すべき“GRAVITY”は、時間です。楽しい時間が永遠に続けばいいなと思うけど、そういうわけにはいかない。でも、心のなかに永遠に刻まれるんじゃないかという一瞬を、1つでも2つでも、10個でも100個でも、みなさんと一緒に作っていけたらいいなと思っています」。

 さらに「令和になって時代は変わったけど、変わったほうがいいもの、変わらないほうがいいものがあると思います。そんな自問自答をしながら、この曲を送ります」と、センターステージで「名もなき詩」を披露。アコギの弾き語りではじまり、途中でメンバーが参加。4人の音がひとつひとつ重なり、Mr.Childrenの音楽になるという演出は、今回のツアーの本質に直結していたと思う。

 そのままセンターステージで数曲演奏した後、「addiction」からライブのムードは一変。エレクトロ的なテイストを押し出した「Dance Dance Dance」、ダークな雰囲気を醸し出した「Monster」、夜明けを想起させる照明が印象的だった「SUNRISE」。レーザー、映像、舞台装置を駆使したスペクタクルなステージングもまた、今回のツアーの大きなポイントだった。エンターテインメント性から逃げることなく、“すべてのオーディエンスを楽しませる”というシンプルな思いを貫き、実行し続けていることも、30年近くに渡ってこのバンドが支持されている理由なのだと思う。

 ピアノのイントロが始まると同時に華やかなムードが広がった「Tomorrow never knows」から、ライブは終盤へ。歌詞を丁寧に届けるような演奏とボーカルによって、後半では大合唱が生まれる。さらに「Prelude」を挟み、「innocent world」へ。ここでも最初から最後までシンガロングが発生。“ヒット曲を持っているバンドは強い”という当たり前のことを改めて実感させられる、とんでもないアンセムである。

 アルバム『重力と呼吸』のなかでも最もシンプルなギターロックチューン「海にて、心は裸になりたがる」で本編は終了(笑顔で演奏を続けるメンバーの姿も印象的だった)。そして「SINGLES」から始まったアンコールでも彼らは、どこまでも生々しい音と歌を響かせた。すべての音、すべての言葉に強い思いを込め、真っすぐに届ける――あまりにも真っ当な姿勢に支えられたステージによって、感動と興奮が積み重なっていく。

 最後の曲の前に桜井は、「少しだけ話をさせてください」と観客に語りかけた。

 ニュースを見ていて目に飛び込んでくるのは、有名人や著名人で亡くなられた方や、大きな病気と戦っている方、スポーツ選手の引退のこと。「自分たちはあとどれくらい続けられるんだろう?」と考えてしまうけど、「もし明日歌えなくなっても、バンドを続けられなくなっても後悔しないだろうな」という結論に至ること。

「デビューして27年も経つバンドが、いまだにこうやってライブをやって、大勢の人が聴きに来て、歌ってくれて、こんなに幸せなことはほんとにないと思います。日本一幸せなバンドだと思います」「でも、せめてあと1曲――いや、それは謙虚すぎるかな。あと10曲は、5万人がひとつになれるような曲を作りたいと思ってます」

 そんな言葉に続けて披露されたのは、アルバム『重力と呼吸』に収められた「皮膚呼吸」。〈僕にしか出せない特別な音がある きっと きっと〉というフレーズからは、Mr.Childrenの未来、この先も自分たちの音楽を追求し続ける意思がしっかりと伝わってきた。

 常に時代に対峙し、1990年代、2000年代、2010年代を通じてヒット曲を生み出し、ロックバンドの概念と表現の幅を広げ続けているMr.Children。リスナーの心を揺さぶり、負の感情をポジティブに転化するような彼らの音楽は、今回のツアーによってさらなる高みに達していた。過去のキャリアに頼らず、否定もせず、すべてを受け入れたうえで、斬新にして普遍的な音楽を届けるステージはまさに圧巻。変わらないために変わり続けるという言葉は、このバンドのためにあるのだと思う。(森朋之)

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