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左から望月衣塑子、大黒岳彦。

「新聞記者」望月衣塑子が新旧メディアの共存語る、学生には「不正義に敏感でいて」

ナタリー

19/6/12(水) 14:29

「新聞記者」のティーチインが6月11日に東京・明治大学のリバティタワーにて行われ、原案となった同名書籍の著者・望月衣塑子が登壇した。

シム・ウンギョンと松坂桃李がダブル主演を務める本作。国家権力の闇に迫ろうとする新聞記者・吉岡と、現政権に不都合なニュースをコントロールする任務を与えられたエリート官僚・杉原の運命が交錯するさまが描かれる。シム・ウンギョンが吉岡、松坂が杉原を演じ、「デイアンドナイト」の藤井道人が監督を務めた。

ティーチインでは、明治大学情報コミュニケーション学部の学部長・大黒岳彦が司会を担当した。記者として働く中で、政府からの圧力を感じたことがあるかという質問に望月は「映画では杉原さんが勤務している内閣情報調査室(内調)という組織があるんですね。内調の人から直接『あなたを調べてます』と電話をもらったことはないですけど、そことパイプのある記者や政治家から『内調が今度はあなたをターゲットにしてるよ』と言われたことはあります」と吐露。「私はびっくりしたんですけど、内調の動きをよく知っている記者さんからすると、すごくオーソドックスな脅しらしいんですね。どういう権限があって調査してるんだと私は反論できるんですけど、内調のどこの誰が言ってたのかまでは教えてくれない。間接的に内調が私に伝えることは、政権として『あなたの動きを見てますよ』ということのようなんです」と続けた。自身が社会部の記者として所属している東京新聞の上層部に対し、政権側があからさまに記事を出さないよう圧力をかけてきたことはないと言い、「ただし国家安全保障会議などを批判するような記事を書くと、政治部の記者を経由してちょっとした嫌味を言われることはあります」と経験を明かす。

また望月は記者として働き続ける活力に言及。抗議文が届いたり、バッシングを受けることもあると述べつつ「会社の上層部と官邸に大きなつながりがないんです。だから闘えるというのはあります」と理由の1つを挙げる。しかし、それ以上に大きなモチベーションがあるそうで、「読者が会社に応援のメッセージを送ってくれるんですね。会社に対して『彼女を守ってください。購読しますから』と。そのうえで会社の編集局長が政治部長や社会部長を呼んだ場で言ってくれたらしいのが、政治部には相当プレッシャーもかかるし、記者会から『東京新聞だけは外せ』ということになる可能性もあるけど、多くの読者がもっと権力に対する疑問をぶつけるべきだと。いくら官邸が政治部経由で圧力をかけてきても、自分たちを支えてくれる読者の声を軸に考えるべき。望月が(記者会見に)行きたいという限りは、あいつを行かせ続けたいと。……私が強いのではなく、多くの方がいろんな声を届けてくれたのが大きいです」と語った。

続いて望月は、インターネットについてどう考えているかという大黒からの質問に回答する。まず「若者たちは今ネットニュースで情報を仕入れますし、例えば新聞に別のことが書いてあってもそれを信じるのではなくて、情報として等価になっていますよね」と指摘。欧米での動きとして「国境なき記者団の人たちを中心に80社くらいで、事実をもとに記事が発出されているかを初めて読んだ人がわかるシステムを作ろうとしているようなんです。事実をベースに書いている新聞社、ネット社をまとめたホワイトリストを作るという」と事例を挙げ、「フェイクニュースや、人をバッシングしたりたたいているものがすごく読まれて、まともな記事はあまりシェアされない傾向がありますよね。そういう流れに立ち向かっていく意味でホワイトリスト化はいいと思います」と持論を伝える。さらに「1つのテーマを調査して大きな報道を打ち立てられるかというと、人数などの態勢としてネットメディアには今そこまで余裕がないかもしれない。だんだん変わっていくとは思いますけどね。そういう意味でオールドメディアの存在意義はあると思います」と現状認識を口にし、「一方で若者たちに情報を共有していくには新聞に書かれているような難しい言葉で伝えるのではなく、いくつかのネットメディアがやっているような読み解きやすい記事の見せ方をする必要がある。今後はコラボレーションが重要になってくると思います」と、古くからあるマスメディアとネットメディアの共存を見据えた。

終盤には望月が講義に参加した学生にメッセージを送った。「今後皆さんの前には、差別やゆがみを含んだ社会がドンと突然現れると思います。例えば就職活動で女性は如実に差別されていて、商社や銀行に行ける比率が少なかったりします」と説明する。そのうえで現状を受け入れるのではなく声を上げてほしいと言い、「身近な問題1つひとつに声を上げることによって、社会を変えていける時代になります。記者であってもなくても、社会の不正義やおかしいことに敏感であってほしい。『これって差別じゃないの?』『その発言パワハラじゃない?』と、どんどん伝えていってください」と未来を担う世代に思いを語った。

「新聞記者」は6月28日より東京・新宿ピカデリー、イオンシネマほかにて全国ロードショー。

(c)2019『新聞記者』フィルムパートナーズ

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