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『まんぷく』内田有紀の「ありがとう」に込められたもの 朝ドラヒロインは“別れ”からどう立ち直る?

リアルサウンド

18/10/14(日) 6:00

 福子(安藤サクラ)が萬平(長谷川博己)に頼んだ幻灯機の演出もあり、咲(内田有紀)の結婚式は実に華々しかった。自分のことのように結婚を祝福してくれる福子に対して、咲は「ありがとう」と口を動かす。第1週から姉妹のそんな心温まるシーンを見ることができ、まさしく“まんぷく”に感じたものだった。

参考:『まんぷく』第13話では、萬平(長谷川博己)が軍からの物資を横流ししたと疑いをかけられ……

 ところが、翌週の『まんぷく』(NHK総合)で咲の口から出てきた「ありがとう」はあまりにも切なく、胸を締め付けられた。結核はあっという間に咲の体をむしばんでいったのだ。「福子、お母さん、ありがとう……」。病床でこう呟いたのち、咲の人生は幕を閉じた。

 朝ドラのヒロインはいつだって七転び八起きの連続である。この上ない幸せが訪れたかと思えば、壮絶な苦難が降りかかる。そして、しばしばその“苦難”の一つに、“近しい者の死”がある。

 たとえば、昨年放送の『わろてんか』でも同様に放送間もなくその“死”が描かれた。ヒロインの藤岡てん(葵わかな)の兄・新一(千葉雄大)は、自身のぜんそくのこともあり、同じように苦しむ人を救いたいという思いから薬学の道を志す。ところが皮肉なことに、第2週には持病のぜんそくが悪化し、てんは新一という存在を早々に失う。

 しかし、新一はある言葉を残してこの世を去っていった。「虫も動物も笑わへん。人間だけが笑える」「つらいときこそ笑うんや、みんなで笑うんや」。この“笑い”にまつわる新一の渾身のメッセージは、その後のてんの人生に少なからず影響を及ぼしていたのかもしれない。実際、てんはまさしく“笑い”の世界を人々に伝えていくことになる。

 死はヒロインにショックをもたらす。『まんぷく』では、咲の死後、普段通りにホテルの仕事に精を出そうとする福子であったが、同僚の恵(橋本マナミ)もどこかいつもとは違う彼女の姿を感じ取る。父親がいなくなった分まで家族をフォローしてくれた咲。だからこそ、咲には真一(大谷亮平)との幸せを存分に享受し続けてほしかった。それだけに、福子の悲しみはひとしおだ。

 そんなこともあってか、福子は萬平との関わり方についても悩みの種を抱えてしまう。咲が亡くなってすぐに自分の交際のことなど考えられないし、萬平との仲に猛反発する母・鈴(松坂慶子)のこともある。自分の思うように意志を固めることができなくなってしまう。そんな福子に、咲の夫・真一(大谷亮平)はある助言をほどこす。「自分の気持ちに正直になるべきだ。(中略)大事な人がいるなら、生きてそこにいるなら、簡単に手放してはいけない。いけないよ」と。

 真一は愛する妻を早くに失っただけに、“本当に大切な存在”と可能な限り一緒にいることの意義を実感している。それだけに真一は、萬平という大切な存在にまだ手を伸ばせる距離にいる福子には、そのことを何としてでも知ってほしいと思っている。人生は一度きりだから。咲の死は福子に大きなショックを残した。ただ、それと同時に、咲という大きな存在に思いをはせつつも、今の自分が向き合わなくてはならない存在を、(真一の言葉を通すことでより克明に)理解したのかもしれない。真一の言う通り、「簡単に手放してはいけない」のだと。第12話の終盤では、福子は再度萬平のもとを訪れたのだった。

 “別れ”を積極的に肯定することはできない。ただ、いざ実際にその“別れ”が訪れてしまったときに、ヒロインは去っていった者たちが残したものから、どう立ち直り、何を感じ、何を学び取るのかを描くこと。たとえ和やかな世界観の朝ドラであっても、死という誰の身の回りでも起こりうる出来事を映す意味は多分にあるのだろう。(國重駿平)

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