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『なつぞら』が教えてくれる“家族”の形 朝ドラ恒例の美味しい食べ物にも注目

リアルサウンド

19/5/3(金) 6:00

 もともと柴田家の人々となつ(広瀬すず)の間には、いわゆる血のつながりがあるわけではない。とはいえ、今ではすっかり柴田家の1人として生きているなつ。朝ドラではヒロインと、その家族の間に生まれるエピソードというのは、しばしば見どころのひとつとなるわけだが、『なつぞら』(NHK総合)で描かれる「家族」の物語もなかなか興味深い。

参考:『なつぞら』第29話では、浅草の劇場になつ(広瀬すず)の兄・咲太郎(岡田将生)が現れる

 学校から帰ってきて、一日の出来事を話して盛り上がる。心の中に抱える悩みや不安を打ち明けて、お互いに寄り添いあう。あるいは、意見が対立したときに自分の言いたいことを言い合う。こうした日常のワンシーンは、ドラマや映画といった物語の世界に限った話ではなく、私たちが生きる現実の家族の中でのやり取りでも見られることだ。私たちは普段、当たり前のように家族と笑いあい、慰めあい、喧嘩をする。逆に言えば、一緒に楽しみや悲しみを共有できたり、夢を応援したいと思えたりする関係にあるのならば、「家族」になれる余地は十分にある。

 第22話の妙子(仙道敦子)との会話の中で、富士子(松嶋菜々子)は「母さんやみんなに親切にされている」となつから言われたことを明かしていた。未だになつとの間には――富士子の言葉を借りれば――「壁」を感じているという。だが、そのシーンで印象的だったのは、富士子が次のように口にしていたことである。「でもいいの、それが私たち親子だから。何年一緒にいたって、“本当の母親”にはなれっこないもの」。自分たちが特別な関係にあるということを、彼女は分かっているのだ。同時に、富士子はその特別な間柄で自分は何ができるか、どうあるべきかについても理解しているのだ。先の台詞のあと、富士子はさらにこう続ける。「だから、私はあの子を応援するだけでいいの。“精一杯あの子を応援する人”でいたいのよ」。

 確かに富士子の言うように、そこには今でも「壁」があり、富士子は“本当の母親”にはなれないのかもしれない。そうだとしても、柴田家は今のなつにとっての大切な「家族」としての一面を持ち合わせているはずだ。そこに何とも言えない「壁」があれど(いや、むしろ「壁」という曖昧さがあるからこそ上手くバランスがとれているのかもしれない)、自分のことのように楽しむことができ、“頑張ろう!”と思え、ワクワクできる何かがある間柄。たとえ括弧つきであったとしても、それもまたひとつの「家族」であることを、『なつぞら』は教えてくれている気がする。

 ところで話は変わるが、『なつぞら』では舞台が十勝という土地柄、牛乳やアイスクリームやバターが随所で出てくる。例えばアイスクリームと言えば、泰樹(草刈正雄)が幼い頃のなつを「雪月」に連れて行ったときに食べさせた甘味である。「そのアイスクリームはお前の力で得たものだ」「堂々とここで生きろ」といった泰樹の言葉とともに送られたアイスクリームは、当時のなつが久々に心から堪能した“味”のひとつであった。あるいは、家出をしたなつが泰樹たちと再会し、柴田家の人々と「雪月」で食べたのもまた、アイスクリームであった。剛男(藤木直人)はそのアイスクリームの味を「平和の味がする」と舌鼓を打ち、牛乳嫌いの幼い夕見子(荒川梨杏)でさえも口にしたのだった。

 このほかにも、なつの演劇の発表日に提供される形で登場したアイスクリームであるが、この食べ物は実は『なつぞら』でちょっとした役割を担っている存在だったりして……。というのも、これまでの朝ドラでも、ある食べ物がヒロインとその家族や周りの人々を繋ぎ合わせていることがあるからだ。『半分、青い。』では、五平餅が作品の中で描かれ続け、その味を通して、ヒロインの鈴愛(永野芽郁)と祖父の仙吉(中村雅俊)、さらには師匠の秋風羽織(豊川悦司)との間にゆるやかな繋がりを生み出していた。あるいは、『まんぷく』では福子(安藤サクラ)と萬平(長谷川博己)が出会って間もない頃にラーメンを一緒に食べるが、以降ラーメンは作中の随所に登場し続ける。そしてそのラーメンの存在はやがて、萬平の一大発明のきっかけとなるのだった。

 口に運べばたちまち笑顔が零れると同時に、みんなと一緒に食べることでたちまち多幸感をもたらす食べ物。それは単に美味しさが詰まっているわけではなく、ある時にはヒロインとその家族にとっての思い出の“味”になるときもあれば、その後の人生で陰に陽にヒロインを支え続ける“味”になることもある。『なつぞら』ではバターを乗っけたホットケーキやじゃがいもも登場しており、何が本作の象徴的な“味”になるのかどうかはわからない。ただ、今後の『なつぞら』を見ていく上で、ヒロインと家族や友人を結び付ける存在としての食べ物に注目してみるのも面白いかもしれない。(國重駿平)

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