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5年ぶりの珍事「実写日本映画トップ4独占」と、優先されるテレビ局映画の都合

リアルサウンド

19/2/7(木) 13:30

 先週末の映画動員ランキングは、池井戸潤原作、野村萬斎、香川照之、及川光博らが出演した『七つの会議』が初登場1位に。2位は公開3週目で首位を明け渡した『マスカレード・ホテル』。3位に初登場したのは登坂広臣と中条あやみが出演したラブストーリー『雪の華』。4位は前週の2位から2ランクダウンした『十二人の死にたい子どもたち』。実に、上位4作品がすべて日本映画、しかも実写の作品という非常に稀な結果となった。

参考:ランキングはこちら

 トップ4がすべて実写日本映画で占められるというのがどれだけ珍しいことなのか調べてみたところ、最後に同様のランキングだったのは5年前の2014年10月の第2週。この興行分析コラムの連載が始まったのはリアルサウンド映画部が開設された2015年8月のことだから、それ以降は一度もなかったということになる。ちなみにその2014年10月第2週のトップ4は1位『ふしぎな岬の物語』、2位『近キョリ恋愛』、3位『るろうに剣心 伝説の最期編』、4位『蜩ノ記』というラインナップ。その時点で公開5週目だった『るろうに剣心 伝説の最期編』こそ累計で40億円を超える大ヒット作ではあったが、夏休み興行と正月興行のはざまだったその週の興収の水準は4作品とも低調だった。

 一方、先週末の「実写日本映画トップ4独占」は、首位の『七つの会議』(土日2日間で動員26万人、興収3億3400万円)が好成績を記録しただけでなく、4位の『十二人の死にたい子どもたち』(土日2日間で動員14万4000人、興収1億8500万円)まで4作品いずれも高い水準での上位争いであった。「正月明けの興行の閑散期にたまたま実写日本映画が上位を占めた」というわけではないのだ。このことが意味するものとは何か?

 一つはっきりと言えるのは、少なくとも先週末1、2フィニッシュを飾った『七つの会議』と『マスカレード・ホテル』に関しては、十分に正月映画としてのヒット・ポテンシャルもあったということだ。前者は2月1日公開、後者は1月18日公開と、本来なら書き入れ時の正月興行の時期が終わってからの公開に。いずれも昨年のうちからマスコミ試写が回っていたので、製作に遅れなどがあったわけではない。『七つの会議』と『マスカレード・ホテル』はいずれも東宝配給作品。今年の正月興行において明らかに「玉不足」の状況となっていた東宝としては、少なくともどちらか1本は正月に公開したかったのではないだろうか。

 そこで注目したいのは、『七つの会議』の製作にはTBSが、『マスカレード・ホテル』の製作にはフジテレビがそれぞれ名を連ねているだけでなく、いずれの作品も監督、原作者、出演者の顔ぶれからその宣伝方法にいたるまで、非常に「テレビ局映画」色の強い作品だということだ。

 『七つの会議』の池井戸潤原作、福澤克雄監督という同じ組み合わせの作品としては、昨年12月までTBSの連続ドラマとして『下町ロケット2』が放送されていた。同作は2015年放送の『下町ロケット』ファーストシリーズほどの高視聴率を記録することはなかったが、年末の集中的な再放送に続けて2019年1月2日には特別編(こちらの演出も福澤克雄だった)を放送するなど、TBSが社運を賭けた作品であったことは明白。『七つの会議』の公開時期は、その話題性を引き継ぐことを想定して、2月1日に設定されたのではないかと推測できる。

 『マスカレード・ホテル』のプロモーションも、フジテレビが年末から年明けにかけて『HERO』をはじめとする木村拓哉主演ドラマを連続で再放送してバックアップ。さらに、11月中旬から12月中旬にかけては翌年1月放送分も含めてテレビのバラエティ番組の収録がまとめておこなわれるため、番宣のために木村拓哉を集中的に稼働させやすかったという事情も見え隠れしている。万全の体制で局が作品をプロモーションする上では、特番の放送が多い12月に公開するよりも、1月に公開する方が効果的だったはずだ。

 いずれの作品もこうして結果を残したわけで、公開時期の設定は間違いではなかった。『ボヘミアン・ラプソディ』の異例のメガヒットがようやく落ち着いてからの公開になったという点では、そこに幸運も重なったと言える。しかし、一方で、映画会社とテレビ局の力関係が浮き彫りになったのではないか。90年代以降、実写日本映画の興行を支えてきたのはテレビ局製作による「連続ドラマの映画版」だった。「連続ドラマの映画版」から「テレビ局主導のオリジナル企画」へとかたちは変われど、キャスティングから演出の方向性や作品の質も含めて、その構造自体は現在も大して変わりはない。(宇野維正)

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