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PAELLAS『sequential souls』インタビュー 自由度が増すことで洗練されていく音作り

リアルサウンド

19/6/5(水) 18:30

 インディーR&B、アーバンソウル、ジャパニーズ80’sAORやハウスなど、現行の海外のシーンともリンクする音楽性で確かなファンベースを築いてきたPAELLASがニューアルバム『sequential souls』を6月5日にリリースする。洗練されたバンドサウンドは日本国内のみならず、アジア各地のインディーシーンでも認知されライブも重ねてきた。加えて、今作からはEMI Recordsからのリリースとなる。

 音数をそぎ落とし、洗練された音像とセンシュアルな魅力を持ったボーカルMATTONの表現が醸す独特な世界観。その持ち味は残しつつ、11曲入りのアルバムというスケールならではの自由度が耳を引く。インタビュー初登場の今回は、このバンドの曲作りのメカニズムや、世界で同時進行する音楽との関係などを聞いた。(石角友香)

ライブのことは考えずにPAELLASとして作りたかった作品

ーー『D.R.E.A.M.』辺りから今回の『sequential souls』への変遷やシーンとの関わりなどをお伺いできればと思っています。まずはそれぞれの作品について振り返っていただきたいのですが。

Anan:作り方で言うと『D.R.E.A.M.』の時は僕が家で全部骨組みを作り上げて、そこからみんなに渡して、各々変えたいフレーズとかあれば変えてもらって。メロディも僕が全部作ってたんで、それをMATTONに渡してそれに合わせて歌詞を書いてもらって。そういうやり方でやってましたね。そして『Yours』でbisshiと僕のコンポージングの割合が半々ぐらいになって。

Ryosuke:『Yours』からセッションで作るようになったというのもある。

ーー『Yours』って意外とバンドの3リズムを突き詰めた側面があったんですね。

MATTON:そうですね。『D.R.E.A.M.』で本格的に自分たちが演奏しないシンセサイザーなどの音をたくさん入れるという流れを経て、ライブがあり、ちょっとバンドっぽいものをやった方がいいなと感じたというか。その時々、毎回今自分たちにないものを新しく作っていこうというのがあると思うので、『Yours』の時はそういうマインドだったのかな。

Ryosuke:セッションで作ったことがなかったんだよ、『Yours』の時まで。僕が入ってからはずっとDTMで作ってたから。

MATTON:曲を作る上での突破口というか他の選択肢も作りたいっていう模索の変遷があって。それもひと段落というか、一つまぁ大体こういう感じで落ち着いたんじゃないかな? って思うのが今回のアルバムですね。

ーー作曲やデモ作りの手法の変化とともにMATTONさんの歌詞が英語から日本語に変化してきた部分もポイントですね。

MATTON:それはすごく自然なことだったんです。SPACE SHOWER MUSICに入って、『D.R.E.A.M.』を作るってなった時に、「いいタイミングかな」と思って。最初はレーベルが変わって急に日本語になるのはともすればネガティブなことというか、「ポリシーを捨てた」「日本語に走ったか」って言われるかもなってちょっと悩んだんですが、そういうのを差っ引いてもプラスの方が大きいと思ったので、日本語にしたっていうところがあって。そのあとは自然に英語やカタカナのフレーズもなくなっていき、「Orange」から完全に日本語でーー今回も完全に日本語なんですけど、そこは自分の中で、もう特に意識はしてないですね。

ーーPAELLASは日本のバンドの中でもユニークな変化をしてきたと思うんですが、『Yours』のタイミングでのライブでオーディエンスの集中力に、このバンドへ求められているものを見た気がしたんです。

bisshi:東京でツアーのワンマンになるとそういう感じなりますね。

Ryosuke:僕らの集中力よりお客さんの集中力がすごかった。結構そのツアーから機材とかも固まり始めて。

bisshi:色々変遷はあるけど、その頃が一番切り替わった頃かな。ステージングとか、花や照明の演出も面白かったし。

ーーほとんどメンバーが見えない照明で、いわゆるバンドのライブというのとは違う演出だったと思います。

MATTON:いろんな正解があると思うんですけど、PAELLASでライブをやる一つの正解はこれなんかな? っていうのはなんとなく見えたのはその日じゃないかなと。

Ryosuke:今、僕らが日本でやっていくライブではあれが正解だったんで。無理やり盛り上げる必要もないと思ってますし。あの感じでいいのかなと思ってます。

ーーそれ以降、デジタルシングル『Orange』と『Weight』が出た後にもライブがあって、そこでの手応えが今回のアルバムに繋がっていった部分はありますか? それとももっとバンドの内側から来たものですか?

Ryosuke:内側からですね。

MATTON:多分、『Yours』、『Orange』、『Weight』の頃はライブのこともなんとなくイメージして「こういう曲、ライブであったらいいね」とか考えて作ってたのが、今回の作品に関してはライブでやることは、ほぼ考えずにみんな作ったんじゃない?

Anan:今回はそうですね。ギターが結構多いので。

Ryosuke:ライブのことは考えないで、ギターをどんどん重ねていったんで。そこは一旦ライブは切り離したんじゃないですかね。もちろん、どうにかしてやり方を考えるっていうのはありますけど。だからライブで何か影響を受けたというより、作りたいものが増えてきたっていう方が正解じゃないですかね。

ーー平たく言うとより体験的な音像になったし、自由度が高い。

Ryosuke:そうですね。すごい気持ちが上がる曲なんて1曲もないんですけど(笑)。まぁ、めちゃめちゃ平熱だなと思いますけど、これがやりたかったことなのでよかったですけどね。

「Horizon」から感じられるPAELLAS節

ーー2016年頃のPAELLASなら東京インディーと海外の音楽の符号が目を引くイシューでしたが、今作の1曲目の「in your eyes」は特に何の影響がかけ合わさったものなのかがわからない域にある印象です。

bisshi:一応、リファレンスはありますけど。なんでこういう曲を作ろうと思ったかというと、メンバーから感じるものでしかなくて。リファレンスはもちろん海外の音楽とかですけど、そういうのを意識せずに別に普通に日本の音楽も聴くし。なぜそういう曲を作るかっていうのは、俺はもうメンバーから感じるものでしかないと思ってるんで、ほんとそれだけですね。

ーージャズ的なコード感ではありますが。

bisshi:そうですね。コード選びはAnanぽいのを選んだつもりなので。だから100%、自分の曲だと思ってないんですね。『Yours』の時はほんとに自分がやりたい感じで作ってたんですけど、「こういうのが好きだろうな」とか、「こういうのAnanに弾かせてみたいな」と思って曲としてギターを作ったみたいな。そしたらそういう曲になったというか。

ーーそしてもう一つbisshiさん作曲の「searchlight」は速いBPMで、本作の中では異色ですね。

MATTON:速い曲は作りたいねって話はしたんですけど、ま、異色ですよね。ちょっとこう、今とは全然違いますけど、僕とbisshiが二人でやってた頃のニューウェーブ/ポストパンクの雰囲気もあるような曲があってもいいよね、みたいな話はして。で、bisshiがある曲をリファレンスして作ってきたのがその曲です。

bisshi:個人的にはBPMが持ってる曲のキャラクターみたいなものの幅が広い方がいいかなと思ってて。で、どうせやるんなら突き抜けちゃえと思ってめちゃくちゃ速くしたんですよ。それはほんとにMATTONと二人でやってた頃の曲っぽい。なんだけどモード的にはモダンな感じ、今にマッチした感じで作ろうと。

ーーそんな中、リードトラックの「Horizon」はさすがにPAELLAS節に聴こえるんです。“らしさ”が目立つというか。

PAELLAS – Horizon Music Video

bisshi:だから「Horizon」を聴いたとき、僕は安心しましたよ、“節”が一個あったら素晴らしい。

Ryosuke:でもさ、その“節”もその前に遡ると「Shooting Star」(『D.R.E.A.M.』収録)しかないし。

MATTON:でも客観的に見て、みんながあれをPAELLAS節と思ってるから、その節が一個あったことには安心しました。「Shooting Star」と比べて「Horizon」、何がアップデートされた部分だと思う?

Anan:アップデートというか、変わったところでいうと「Shooting Star」を作ってた時は、メロディに起伏を持たせるようにすごく頑張ってて。それまでPAELLASって、歌のメロディがリフやフレーズだったことが結構多くて、そこを一度打破したいなって気持ちがあったんです。だからあの曲に関しては1曲通してコード進行はずっと一緒なんですけど、その中でセクションごとにメロディを変化させていくことを試みていて。で、「Horizon」今回は逆にリフレインに立ち返って、サビで盛りは上げるんじゃなくて、フレーズをくりかえすことによってサビのキャラクターをつけてみました。

Ryosuke:多分、僕とAnanで作ってる曲はBが一番メロディ的には上がってるところですね。で、サビで下げるってやり方を今回作ったので。

音像から生まれる歌詞ーー特定の時代感を出したくない(MATTON) 

ーーMATTONさんは賑やかな場所より自分一人の時に染み込んでくるような音楽が好きだと以前おっしゃっていて。歌詞の内容もそのニュアンスを保ちつつ、変化してきていると思います。

MATTON:より口語的な、会話的な言葉の使い方、全部ひらがなでもいいんじゃない? っていう感じは意識してますね。『D.R.E.A.M.』の頃は英語もまだあったし、『Yours』の頃とか、その当時も東京って都市に住んでますけど、もともと大阪の地方都市とすら言えないぐらいの田舎に暮らしてたんで、完全にお上りさんなんで。そういうお上りさんとして東京に暮らすーー別に悪い意味ではないですけど、疎外感とか。東京ってそういう人たちが集まってる場所だと思うのでっていうのがイメージにあったんです。だけど今回は音の質感からイメージが湧いて、影響を受けてっていうのもあるんですけど、もっと山小屋の中で暖炉の火がパチパチいってる中で会話してる、みたいな感じです。

ーー曲の音像がそういう歌詞を生んだと?

MATTON:そうですね。よりいい意味で、1対1なのか一人なのか、閉鎖的な親密さのある空間での話、言葉、みたいなイメージですね。だから「スマホ」とか絶対使わないですね、言葉としては。あんまり特定の時代感を出したくない。衣食住とあとは普通に生きることに関しては30年、40年前の親の世代から今の世代の人まで変わっていないことだと思うので、なるべくその範囲の中でーーまぁ若い人たちの言葉はどんどん変わっていくと思いますけど、そういう範囲に入らないような、すごくオーセンティックな言葉、口語で書きたいなとは思ってますね。

ーーそれはなぜなんでしょう?

MATTON:PAELLASの音楽って現行の世界の音楽の流れとのリンクで語られがちなんです。日本の中だとシティポップだとか。実際シティポップってくくりに入れられる人たちは基本的には誰もシティポップだと思ってないんですけどね。そういうくくりがある中で、自分たち的にはオーセンティックなものというか。もちろん、今生きてるので今なんですけど、一番ナチュラルな言葉の選び方をしてるつもりというか。

ーーなるほど。

MATTON:PAELLASは極端なコンセプトを掲げてやってないバンドだと思うので。別にビジュアルの見え方だったり、ライブのやり方だったり、こう、特定の思想だったりとかコンセプトを設けないんで。なるべく普段着のままというか、あんまりそこをフォーカスしてもらえなくて、なんかオシャレぶってやってるみたいに言われちゃうのも仕方ないかなと思いつつ、「違うんだよ」って思いながらやってますけどね。

ーー「Orange」の歌詞の〈君の指に宿る無垢が 貝殻を集める仕草〉という部分がすごく新鮮に感じたのですが、ここで使われている言葉にもオーセンティックな印象があります。

MATTON:「Orange」の歌詞が今までで一番書き進められなくて。松本隆さんの小説を読んで、かっこよくいうとインスピレーションですけど、それで書けた歌詞ですね。季節が特定されちゃうので季語も入れないようにしてたんですけど、「Orange」から季語も入れるようになった。ま、日本だからっていうのもあるかもしれませんね。季節がある国なので、そこは別にどんどん触れていってもいいかと。

 出尽くしてるからこそできる“ストリーミング時代の新しい音楽”

ーー現行の海外の音楽とリンクしてるのは当たり前だということではあるんですが、最近逆に世界で明確なトレンドがなくなってる感じもするので、その辺をどういう風に感じていますか?

Ryosuke:でもいまだにフランク・オーシャンは土台にはある。

「Thinkin Bout You」

Anan:うん。そこはもちろんあるけど、もっといろんな要素を入れたい、雑多に入れたいと思ってるかもしれない。

bisshi:具体的にいうと自分たちの音楽性を共有するっていうことでも、Spotifyを使っているんですけど、今、好きな曲が多すぎて全くプレイリストを管理できなくなってきて(笑)。流れてくる音自体に自分で文脈を感じて自分の曲を作るっていう風になったのかなって感じはしますけどね。

ーー面白い現象ですね。

bisshi:うん。ストリーミングが完全に普及して、自分の中でカオスになった感じ。

MATTON:その中でちゃんと自分たちの色、自分たちの素材の色がわかってる人たちだけが残るんじゃないですかね。PAELLASの話でいうと、昔を辿ると「こういうのがやりたい」という思いが先行していた時期も多分あると思うんですけど、今はPAELLASのムードやカラー、バランス、テンションがわかった上で曲作りも始まってるので。

bisshi:だからこそ出てくるものしか出てこなくなったんだね(笑)。

ーー追いかけたり並走していたものの中に入ってるということなんでしょうね。世界中の音楽を作ってる人が。

Anan:なんでも聴けることによって出尽くしてるっていうのが体感的にありつつ、出尽くしたから絶望、ではなくて、出尽くしてるからなんでもできる。

MATTON:ゼロからのスタート?

Anan:そう。出尽くしてるからこそなんでもできるし、どこからアーカイブをとっても、それは新しいものの感覚なので、それはストリーミング時代の新しい音楽なんだと思いますね。

Ryosuke:そうなるとより一層それぞれのプレイヤビリティが大事になってくる。僕らはプレイヤーとしての気持ちもめちゃめちゃ強いんで。そういうのが一つ一つのフレーズに変わっていくんじゃないかと思いますね。

(取材・文=石角友香/写真=林直幸)

■リリース情報
『sequential souls』
発売:6月5日(水)
価格:¥2,800(税別)
<収録曲>
01.in your eyes
02.Horizon
03.Ride
04.mellow yellow
05.searchlight
06.[wayhome]
07.just like
08.Crystal
09.airplane
10.Weight
11.Orange (new mix)

PAELLAS – sequential souls Teaser

■ツアー情報
『PAELLAS “sequential souls RELEASE TOUR”』
6月15日(土)札幌SPiCE
6月16日(日)仙台MACANA
6月28日(金)金沢AZ
6月29日(土)名古屋JAMMIN’
6月30日(日)大阪Music Club JANUS
7月6日(土)東京LIQUIDROOM 
7月12日(金)福岡INSA

■関連リンク
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