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SCANDALはどんな新しい姿を発信していく? レーベル設立や海外活動から読むバンドの可能性

リアルサウンド

19/3/27(水) 20:00

 昨年メジャーデビュー10周年を迎えたSCANDALが、ビクター内にプライベートレーベル<her>を設立し、3月27日に第1弾シングル『マスターピース / まばたき』をリリースした。端正なルックスと確かなバンドサウンドを武器に、デビュー間もない頃から“ガールズバンド史上○○”と名の付く数多くの記録を打ち立て、4年前から本格的に海外へ活動の場を広げる彼女たち。3月16日に幕張メッセ国際展示場で開催された『ビクターロック祭り』では、レーベル発足後初となるライブステージを踏み、堂々たる存在感で多くのロックファンを魅了した。

世界標準のロックを奏でる 

 『ビクターロック祭り』でも披露された新曲の1つ「マスターピース」は、ギターのMAMIが作曲。往年のハードロックバンドを彷彿とさせる、イントロの豪快なギターリフが耳を惹く。アッパーなビートはタイトだがグルーブがみなぎり、一転して壮快なサビメロが聴く者の気持ちをアゲてくれる。新レーベル<her>からの第一弾という通り、扉を蹴破って前のめりで新しい世界へとなだれ込むような勢いと、SCANDALらしいポジティブ思考が感じられる楽曲だ。作詞はドラムのRINAが手がけた。音楽の楽しさ、ライブ、ファンの存在などさまざまなことを連想させながら、春らしい清々しさと共に、新しい日々の始まりのドキドキを高らかに歌っている。〈無限の想像力〉や〈自分だけの地図〉といった歌詞のワードからも、新レーベル設立にかける思いが感じられると同時に、聴く者の背中を押してくれる。歌詞の最後のほうに〈世界中に飛んでゆけ、あなたに歌ってるよ〉というフレーズが出てくるが、ここには、実際に世界中でライブツアーを行っているSCANDALだからこその説得力がある。

 初の単独ワールドツアーは、2015年の『SCANDAL WORLD TOUR 2015「HELLO WORLD」』だ。国内31公演に加え、フランス、イギリス、シンガポール、台湾、アメリカなどを周る8カ国10都市で開催し、計8万人の動員を記録した。2016年には初のヨーロッパ単独ツアー『SCANDAL TOUR 2016 “YELLOW” IN EUROPE』を開催し、バスに寝泊まりしながら15日間で10公演を行った。また昨年は、『SCANDAL TOUR 2018 “HONEY”』と『SCANDAL from JAPAN TOUR 2018 ”Special thanks”』という2つのツアーで、アジア6公演と全米6公演を開催している。

 海外進出の足がかりとなったのは、3rdシングル「少女S」(2009年)や5thシングル「瞬間センチメンタル」(2010年)など、多くのアニメソングを担当したことだ。海外のアニメファンに名前を知られ、『ANIME FESTIVAL ASIA 2010』など世界的に有名なアニメフェスに次々と招聘され、2011年に初のアジアツアーを開催して以降は、順調に世界各地へと足を伸ばしていった。

 日本より厳しい目を持った海外で活躍できているのは、単にアニメソングを歌っていることや、日本のガールズバンドという物珍しさだけではない。確かな演奏技術とアグレッシブなステージパフォーマンスがあればこそで、年間数十本というライブを重ねてきた結果だ。実はメジャーデビューの半年前にも、アメリカの『Sakura-Con 2008』に出演したその足で、全米6都市のツアーを開催していたことがある。その時は決して満足のいく内容ではなかったようだが、そこでの経験をバネに研鑽を積み重ね、10年を経て今に繋がっていることを考えると感慨深いものがある。

“ガールズバンド”を逆手に取って 

 今回のシングルに収録されているもう1曲の新曲「まばたき」は、RINAが作詞作曲を手がけた、ガーリーな雰囲気のミドルチューンだ。愛しさから溢れる涙、会えない寂しさから滲む涙、出会えたよろこびからこぼれ落ちる涙。さまざまな涙があるが、あと一回のまばたきでその涙が溢れてしまうという、その瞬間を切り取ったような歌詞は、カメラが趣味のRINAらしいものだ。歌い出しのTOMOMIのキュートなボーカルが、そんな女の子らしい視点をさらに瑞々しく聴かせ、HARUNAもニュアンスたっぷりの女性らしいやわらかいボーカルを聴かせている。間奏の重ね合わされたコーラスや、打ち込みを使うなどのアレンジはMAMIが担当した。「マスターピース」とはひと味違った作りで、女の子が春の装いに衣替えをするようなオシャレ感がたっぷり感じられる。まさしく彼女たちが立ち上げた、プライベートレーベルの<her>という名称を象徴した1曲になっている。

 SCANDALが立ち上げたプライベートレーベル<her>は、キャリアを重ねても、新鮮な気持ちやドキドキする気持ちを感じていたいと、自分たちだけのアトリエや遊び場を作るような気持ちで作られたという。かつて忌野清志郎が「ロックンロール研究所」というプライベートスタジオを作り、奥田民生のインディーズレーベルが<ラーメンカレーミュージックレコード>という名称であるように、<her>というレーベル名からは、彼女たちの遊び心やオシャレ心、等身大で音楽活動を楽しみたいとする意志が感じられる。

 「her」=彼女。女性であることは、SCANDALにとって10年以上に渡る命題だ。メジャーデビューした翌年にリリースした1stアルバム『BEST★SCANDAL』(2009年)が、オリコン初登場5位を記録した時は、ガールズバンドの1stアルバムがオリコン初登場5位以内にランクインするのは、ZONE以来約7年半ぶりと言われた。また2012年に初の日本武道館公演を開催した時は、バンド結成から5年7カ月というガールズバンド史上最速記録を達成したと言われた。常にガールズバンドという言葉がついてまわり、それはいつしか彼女たちを縛る言葉にもなり、そんなさまざまな雑音から身を守るための鎧をまとうように、よりオリジナリティのあるサウンドを指向していった。そうして生まれた数々の楽曲が、結果として今のSCANDALというバンドの存在を際立たせている。

 近年は、自分たち自身が女性であることをむしろ武器にして、まるで憑き物が落ちたかのように、女性視点の楽曲やラブソングが増えている。例えば「Sisters」(アルバム『YELLOW』に収録)という曲がある。〈Hey!sister その足で立ち上がれ〉と歌い、応援してくれる女性ファン、世の中すべての女性たちの背中を押した。また、結成10周年を記念したベストアルバム『SCANDAL』(2017年)に収録の「FREEDOM FIGHTERS」では、〈私たちの行進で街を揺らそう〉、〈変えたいのは時代じゃなく明日〉と歌った。プライベートレーベル<her>の設立は、親愛なる同志たちの先頭を切って道を指し示すための、果たすべき約束であったと言える。

 こうしたプライベートレーベルの設立は、単に自分たちの思い通りの制作が可能になるだけではなく、さまざまな可能性を秘めている。これまでも、MAMIは夢みるアドレセンスの「Exceeeed!!」を作詞作曲し、RINAは東京パフォーマンスドールの「Glitter」の作詞を手がけるなどしていたが、今後は楽曲提供もよりやりやすくなるだろう。またリリースとライブだけでなく、さまざまなものを連動させた企画が容易になっていく。『マスターピース / まばたき』は、ジャケットをコラージュアーティストのQ-TAが手がけた他、初回限定盤Aには特典として「her Magazine」が付くというのも、彼女たちの遊び心であり新たな挑戦の第一手だろう。今後この<her>からは、どんなSCANDALの4人が発信されていくのか楽しみだ。

■榑林史章
「THE BEST☆HIT」の編集を経て音楽ライターに。オールジャンルに対応し、これまでにインタビューした本数は、延べ4,000本以上。日本工学院専門学校ミュージックカレッジで講師も務めている。

■リリース情報
『マスターピース / まばたき』
発売:2019年3月27日(水)
(初回限定盤A)
CD+雑誌 ¥1,800(税抜)
(初回限定盤B)
CD+GOODS(Tシャツ/Lサイズ)¥3,500(税抜)
(通常盤)
CD¥1,000(税抜)

■ツアー情報
『SCANDAL TOUR 2019 “Fuzzy Summer Mood”』
6月1日(土) 愛知県・Zepp Nagoya
6月2日(日) 大阪府・Zepp Osaka Bayside
6月6日(木) 愛媛県・松山WstudioRED
6月8日(土) 香川県・高松festhalle
6月9日(日) 広島県・BLUE LIVE HIROSHIMA
6月14日(金) 愛知県・Zepp Nagoya
6月15日(土) 神奈川県・横浜BAY HALL
6月22日(土) 福岡県・Zepp Fukuoka
6月23日(日) 大阪府・Zepp Osaka Bayside
6月29日(土) 北海道・Zepp Sapporo
6月30日(日) 北海道・帯広MEGA STONE
7月4日(木) 新潟県・新潟LOTS
7月6日(土) 宮城県・仙台PIT
7月10日(水) 東京都・Zepp Tokyo
7月11日(木) 東京都・Zepp Tokyo

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