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欅坂46、3rdアニラなぜ“笑顔”溢れる公演に? 長濱ねるを写し出す「100年待てば」を軸に考える

リアルサウンド

19/4/11(木) 7:00

 欅坂46が、デビュー3周年を記念して、4月4日から6日までの3日間にわたり、『欅坂46 3rd YEAR ANNIVERSARY LIVE』を開催した。アニバーサリーライブ(以下、アニラ)初の大阪での公演に加え、初のライブビューイングも行われた本公演。全国のファンに向けて新しい欅坂の景色を見せるライブとなった。

(関連:欅坂46には“主人公 平手友梨奈”のほかにもう一つのドラマがあるーー長濱ねるの卒業がもたらす変化

 3年間のたくさんの思いが詰まった今回のライブでは、卒業を発表している長濱ねるの残りわずかなステージということもあり、多くの欅坂ファンが注目していた印象だ。蓋を開けてみると、リリースしたばかりの新曲「黒い羊」のパフォーマンスはなく、アンコールでは乃木坂46の「シンクロニシティ」を披露するなど、いつもの欅坂のライブとは違った趣になっていた。尾関梨香はブログで「今回のセットリストはとにかくずっと笑っていられる楽曲が多かった!」と綴り、キャプテン菅井友香もまた『オテンキのり&欅坂46菅井友香のレコメン!』(文化放送)で「今回お祝いというのもテーマで。来て下さった皆さんに楽しんでもらえてたら、それだけでもありがたいなって思ってます」「純粋に今回は表現することを楽しんでほしいって制作の方も言ってくださって」とコメント。観客が笑顔になれるセットリストや演出は意図的だったことが伺える。実際にライブビューイングで観ていたが、今までのライブの中でグループ全体が最もリラックスしていたように感じた。

 今回のアニラも欅坂の歴史と今を知ることができる様々な演出が施されていたため、すべてが見せ場だったことは間違いない。だが、長濱を軸に考えるなら、ライブでお馴染みの彼女のソロ曲「100年待てば」が特に印象的だった。長濱の欅坂での境遇を表現した曲が「乗り遅れたバス」なら、「100年待てば」は彼女自身を写し出したような代名詞とも言える楽曲だ。欅坂の中では珍しく、ポップでキュートな曲調で、グループの張り詰めた世界観を和らげるような長濱の存在とリンクする。長濱がけやき坂46(以下、ひらがなけやき/現・日向坂46)との兼任から欅坂に専任となった後、ひらがなけやきが初の武道館単独ライブを行った際には、メンバー全員で同曲を披露。長濱がいなくても、彼女の存在感はひらがなけやきにとって大きく、「100年待てば」を通して多幸感溢れる空間を作り出していた。

 2ndアニラの後、『別冊カドカワ 総力特集 欅坂46』のインタビューで、長濱は「100年待てば」について、「ライブにいらっしゃるお客さんは、漢字欅のクールな雰囲気が大好きな方がほぼほぼだと思うので、自分がソロやユニットでああいうポップな世界観を表現することで、そういう全体の雰囲気を壊してしまわないかと不安だったんです。本当にガラッと変わるので」と語っている。確かに、ウサギの着ぐるみダンサーや風船の演出など、長濱の振り切れたパフォーマンスは欅坂の中で異質だったが、2ndアニラは平手が不在という不安定な状況だったため、彼女の世界観が一種の救いのようなアクセントとなり、結果的に大正解だったように思う。また2ndアニラは明るいユニット曲も多数披露したことから、長濱は「今までクールな欅坂の曲しか知らなかった人が、今回のライブで『欅坂って明るい曲もあるんだ』と思ってもらえたと思う」と口にしていた。

 今回の3rdアニラは、その続きのようなライブである。「100年待てば」では、長濱が天使のように宙に浮かび、空から見守る中、メンバー全員が地上で楽しそうに踊るという演出だった。実にシュールな光景だったが、それもどこか長濱の人柄が出ているようで、微笑ましい。平手も素に戻ったような穏やかな表情で踊っていて、気づけば観客もみな笑顔になっていた。平手がバックダンサーを務めるというレアな光景は、欅坂のデビューカウントダウンライブでの「乗り遅れたバス」をはじめ、長濱センターの時にしかほぼ見られない。そのため、「100年待てば」のパフォーマンスを観て、3年間のいろんな感情がこみ上げてきた。

 そしてアンコールのMCで、最初はニコニコしていた長濱が、次第に涙を堪えながら、みんなに感謝の気持ちを伝える。その後の「危なっかしい計画」で、泣きながらパフォーマンスをする長濱の姿が一瞬スクリーンに映ると、観客たちも一斉に号泣していた。そして最終日だけ披露した「W-KEYAKIZAKAの詩」。ひらがなけやきが日向坂となり独立したいま歌うのは、長濱の存在が大きく影響しているように思う。

 長濱が坂道AKBの「国境のない時代」でセンターに抜擢された際、他のメンバーと比べて自分の目力が弱く、表情で上手く伝えきれないと悩んでいた。そんなときに振付師のTAKAHIROから「歌詞を読んでみて。“国境のない時代”なんだから、みんな仲良く、争わなければいいのにと思っている、それってすごく長濱にぴったりじゃないかな」「だから、みんな強い目をしている中で、お前だけ笑顔でもいいんじゃないの?」と言われ、長濱は自分なりのパフォーマンスにしたらいいと思うようになったという。その言葉こそがまさに、欅坂においての長濱の存在意義であり、欅坂のアイドルらしさを守っていたのが彼女だったのだろう。

 今回のアニラは長濱の卒業を全面に出したライブではなかったが、全体を見ると、メンバーの愛らしさを引き出しつつ、二期生を見守るスタンスに、長濱の意思をさり気なく汲み取った粋な演出なのでは? と感じた。「100年待てば」で、欅坂を空から見守り笑顔の光を与えた長濱は、日向坂同様に欅坂にとっても暖かく見守る存在として残り続けることだろう。それを思うと「シンクロニシティ」の歌詞がさらに深みを増す。

 とは言え、長濱は7月まで欅坂で活動し、3rdアニラも5月に日本武道館での東京公演を控えている。長濱が参加するかはまだ不明だが、彼女たちが紆余曲折の末やっと辿り着いた初の武道館公演では、欅坂の本来のクールな姿を押し出したライブになるのか、はたまた大阪公演のように笑顔のセットリストとなるのか、気になるところだ。(文=本 手)

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