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森崎ウィン、『海獣の子供』での声優初挑戦で学んだ役との向き合い方 「毎回新しい発見がある」

リアルサウンド

19/6/9(日) 10:00

 映画『海獣の子供』が6月7日より公開されている。

参考:『海獣の子供』『きみと、波にのれたら』『天気の子』 今夏アニメ映画の注目ポイントを一挙解説!

 本作は、五十嵐大介の同名コミックを、『鉄コン筋クリート』で第31回日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞を受賞したSTUDIO4℃が映像化。“海を舞台とした生命の秘密”をテーマに、ヒトと自然世界の繋がりを描く。

 今回リアルサウンド映画部では、謎多き海洋学者アングラードを演じた森崎ウィンにインタビューを行った。初めてのアニメーション声優挑戦への思い、アフレコでのエピソードなどじっくり語ってもらった。

ーー今回アニメーションの声優に初挑戦ということですが、オファーを受けた際はどんな気持ちでしたか?

森崎ウィン(以下、森崎):声優の経験がなかったので、最初はびっくりしましたし、作品名を聞き、映画『海獣の子供』は知っていたので、こんな大きな映画に参加するんだとすごく不安でした。原作は知らなかったのですが、アニメは好きで、ただ自分が関わることはないと思っていたので、声をやるということに対してすごくハードルが高かったです。

ーー脚本を読んだ時はどうアプローチしようと思ったんでしょう?

森崎:最初に脚本を読んだとき、この映画がどういう映画なのか、簡単にはわからなかったんです。そのわからないということを、自分が演じることで、お客さんに押し付けないようにしようと思いました。僕が演じるアングラードは謎の天才海洋学者というキャラクターで、セリフの内容や、言葉の1つ1つに疑問を含ませるという点でも難しかったです。でも“正解がわからない”ことを感じながら演じるとすごく面白みがあったんです。

ーー声だけで演技するというところに挑戦はありましたか?

森崎:アングラードという役だからというわけではなく、僕ひとりの演技で完結させずに誰かとリンクさせなきゃいけない中で、キャラクターがどう呼吸しているのか最初はわからなくて。台本をもらって練習している中での最初の壁でした。

ーー公式のコメントでも「呼吸を合わせる」という言葉を強調していましたね。

森崎:アフレコの中でもセリフがどんどん変わっていったんです。口の動いている拍がどうしても多くて、セリフが入りきらない。そこで「彼はここで何を言いたかったんだろう」ということを現場で監督含め皆さんで考えて、アングラードに向き合っていたのがすごく印象深かったんです。「このセリフをこういう尺でこの呼吸の取り方で言っているなら、その意味はなんなんだろう」と、家で1人で考えても答えは出なかったところがありました。それが現場でどんどん変わっていって、でも根本的に伝えたいことをなくさないように調整している作業はすごく新鮮で。勝手なイメージですが、アニメは絵が決まっていてセリフも決まっていて、いわばちょっと固められているものだと思っていました。でも実写のように現場で芝居が変わる瞬間がアニメでも起きているんだというのが、アングラードは生きていると実感した瞬間ですね。

ーー渡辺歩監督のディレクションで印象に残ったことはありますか?

森崎:最初怖い方なのかなとか勝手に想像してたんですけど、すごく柔らかい方でした。てっきり監督のイメージがすごく強くて、それに沿わないといけないと思っていたんですが、現場でお会いしたら「まずはゆるくやってみよっか」と。僕自身がスロースターターなのを瞬時に感じていただいて、僕をどんどん持ち上げつつ、監督が欲しいアングラード像にしっかり導いてくださりましたね。

ーーアングラードはかなりのキーパーソンですね。

森崎:まずはこんなにおいしい役をありがとうございます! と(笑)。彼は、自由奔放に生きている人で、思い立ったらすぐ行動するようなタイプだと感じられたんです。そういうところが自分とリンクできるなと発見がありつつ、でもやはり僕にはない感覚を持っているからどうアプローチしようかすごく考えました。1つのセリフでもいろんな言い方ができるんですよね。もちろん一発録りではないので、やりながらもどんどん見えてきて、毎回新しい発見があるような役だったなと。

ーーアフレコはすごく楽しんでやられていたんですね。

森崎:楽しかったですけど、とても神経を使いました。僕自身はずっと固まっているんです(笑)。アングラードの自由さを声で表現したいけど、僕がアングラードと違って自由じゃなかったので。だからあえてアングラードと同じ動きをしてみたこともありました。

ーー身体と連動させてみるとまた違うのでしょうか?

森崎:そうですね。一度アングラードがやっている動きをやってみて、この状態だとこういう声が出るんだと認識しながら、実際に絵に自分から出たものをオンしていくという。

ーーアフレコは他の役者さんと別々に行ったんですか?

森崎:みなさん別々で、僕は田中泯さんとたまたま一緒で、ジムとの絡みのシーンは2人で録りました。

ーーでは、海(石橋陽彩)や琉花(芦田愛菜)たちとの掛け合いはバラバラにやっていたんですね。

森崎:既に上がっているものに対して、アンサーをしていくという形でした。海や琉花たちがこういうテンションで来るんだという驚きがありましたが、そこにどう返していくか。自分から発信するものもあるし、2人の声がすでにわかっている状態だからあえてとらわれ過ぎないというのもアニメだからできることじゃないかなと。実写って目の前の役者を見て、どんどん変わっていくじゃないですか。でもアニメだからこそ実際に隣にいなくても伝わるものがあるんです。というのはアニメの絵の世界観がすごく完成されていてそこに説得力があるからだと思います。

ーー声優は、今後も挑戦していきたいですか?

森崎:簡単にやります! というのはやめようかなと(笑)。実写の芝居でもままならないのに、声だけなんて難しいです。もう少し役者として成長した上でもう一回やってみたいです。

ーー『海獣の子供』という作品には、どんな感想を抱きましたか?

森崎:一回答えを探すのをやめようと思いました。でも、「あのシーンはどういう意味なんだろ?」と知らない間に考えていたりするし、「生命の誕生が宇宙と海とリンクするってどういうことなんだろう」とすごく考えるんですよね。でもその考えていること自体がこの作品が与えたかったことなんじゃないかなと思えましたし、「答えはこうなんですよ、泣いてください、笑ってください、楽しんでください」という押し付けをしない作品だから、それに対して自分の想像力が働く作品だと感じました。

ーー作中では「いのち」というテーマが重要になっていますが、森崎さん自身はこの作品に関わって「いのち」をどう感じましたか?

森崎:それこそ僕が9歳の時に弟が生まれたんですよ。生まれたての赤ちゃんを見るのも初めてだったし、その子がどんどん成長して今や僕より身長が高くなっていくのも目にしてきたんです。例えば2歳差なら物心つく前に弟がいるという感覚だと思うんですけど、9歳差なので見え方が全然違っていて、そういう意味では「いのち」を間近で感じたなと。もちろん母親の立場ではないから、自分の体の一部を与えながらという感覚ではないんですけど、それを一番近くで見れたからこそ、「生」というものに対して簡単に言葉にできないですけど、感じるものはありましたね。

ーー「自然」というテーマに対してはいかがですか?

森崎:僕はミャンマー生まれで10歳の時に日本にきました。ミャンマーも意外と都会的ですが、仏教の国なのでちょっと離れただけで寺院がたくさんあるんです。それで中学2年生の夏休みにお寺で修行をやった時に自然の中で暮らしたんです。裸足で山道を歩き、自然を肌で感じた時に、「こんなにも痛いんだ」という感覚がありました。それをこの作品で思い出しましたね。こんなに自然に近いのに人間が拒まれている部分もあるのかなと。

ーー自然の中で確かに感じるものがあったんですね。

森崎:子どもなりに辛かったですけどね(笑)。「あれを経て俺は変わった」みたいな歳でもなかったですし、日本の学校の夏休みだったので、単純に遊びたかったなと(笑)。でも今もう一回やれと言われたらまた感じ方が変わるだろうし、もう一回やりたいなと思っています。坊主にして一度無にして自然の中に自分を投影させると、今だと感じるものはあるんじゃないかと。

ーーアングラードというキャラクターを経て、先ほどお話していたハードルをクリアできたという感覚はありますか?

森崎:いつも作品が終わると、すぐに反省点を挙げて書き出したりするんですけど、「何かをクリアできたな」というのは案外すぐ感じないものなんです。その時はとにかく必死で、終わってみると反省点ばかり見えちゃうんです。でも次の作品に入った時にその時に乗り越えたものが、自然とできているというか、そこで成長を感じられるのかなと思います。でも、作品ごとにゼロに戻っちゃうところもあって、「あの作品でああいう風にできたから次はこうできるかな」と思ってやってみると、全然ダメで毎回振り出しに戻るような感覚もあるので、まだ自分のものになっていないのかもしれません。

ーー反省点ばかり見えるというのは、今も変わらず?

森崎:自分を見るとどうしてもそうなるんですよね。そこがあまり良くないなと思っていて、自分の良いところを知った上で認めることも必要なのですが。ただ完成した作品を観た時に唯一、「アングラード、声めっちゃいいな」と思いました(笑)。最初の一言を発したシーンで「ピッタリだ」と。もちろん声の好みは人それぞれですが、自分でもそれを感じられたので本当に良かったです。

(取材・文・撮影=安田周平)

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