Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

ぴあ

いま、最高の一本に出会える

NakamuraEmiが歌で表現する“コミュニケーション”の大切さ EX THEATER ROPPONGI公演レポ

リアルサウンド

18/7/20(金) 19:00

 NakamuraEmiが6月27日、EX THEATER ROPPONGIにて全国ツアー『NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.5~Release Tour 2018~』の東京公演を行った。3月にリリースされた最新アルバム『NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.5』を携えて行われた同ツアーは、ギタリスト/プロデューサーのカワムラヒロシと2人編成で全国17カ所、バンド編成で福岡、高松、東京、大阪、名古屋の5カ所でライブを開催。同公演はキャリアの中で最大キャパシティのライブとなった。

 『NIPPONNO ONNAWO UTAU』シリーズは、まだ彼女がインディーズだった2012年からリリースされており、メジャーデビューした2016年に一枚BEST盤を挟み、今作でVol.5。「いつか素敵な日本人らしい女性になれますように」をコンセプトに掲げ、NakamuraEmiの視点で切り取られた日常の風景が描かれていく同シリーズだが、Vol.5は「人と人とのコミュニケーション」もひとつ大きなテーマになっているという。ライブはアルバムの1曲目を飾る「Don’t」から勢いよくスタートした。カワムラヒロシのアコースティックギターが鳴り、続くようにTomo Kanno(Dr)、大塚雄士(Per)、鹿島達也(Ba)が跳ねるようなビートを響かせると観客の体も自然と揺れ出す。NakamuraEmiの巧みなフロウ、それに呼応する観客のクラップ音もあいまって、冒頭から会場は心地良いグルーヴに包まれた。

 NakamuraEmiは社会人として働きながら2007年にアーティスト活動を始め、33歳の2016年に『NIPPONNO ONNAWO UTAU BEST』でメジャーデビュー。遅咲きと言えるかもしれないが、二足の草鞋で豊富な人生経験を積んできた分、彼女にしか見えない風景があり、歌詞に込められたメッセージはズンと響く重みがある。「大人の言うことを聞け」「かかってこいよ」といった挑発的なタイトルのナンバーも、大人や子どもに対する教訓、社会に対する鋭い風刺、彼女の軽快な歌声から飛び出す皮肉めいた言葉は痛快だが、同時に聞き手の胸をチクリと指す。作品を重ねる毎にアップデートを見せてきたNakamuraEmi。「NIPPONNO ONNAWO UTAU」というテーマを飛び越え、彼女の声は今、性別や世代に関わらず訴えかけるものがあると感じずにはいられない。

 「波を待つのさ」の後にはバラードを数曲。彼女は持ち前の力強く伸びやかな歌声で会場を包み込む。「星なんて言わず」では、メランコリックなメロディに乗せ、情感たっぷりに、大切な人との別れと再生を綴った歌詞を丁寧に歌い上げた。ライブ中、次に歌う楽曲のバックストーリーを丁寧に話す姿が印象的だったが、きっとNakamuraEmiは“伝えること”の大切さを良く知っている。それを象徴しているのが「新聞」だろう。携帯電話やSNSといったテクノロジーの発達で得たもの、そして失いつつあるもの。自分の人生経験の中で得た大切なものを、彼女なりの表現で伝える歌。ライブ前半で見せたグサグサと胸に突き刺さるような歌声とはまったく異なる、じわじわと広がる優しい歌声。ボーカリストとしての引き出しの多さ、多彩な表現力で観客を圧倒した。

 

 インディーズ時代から現在まで関わった全てのスタッフに感謝の言葉を伝えた後、デビュー時の覚悟とブレない意思を綴った「メジャーデビュー」を披露。迫真のパフォーマンスに会場からステージに大きな拍手が送られる。「教室」を挟み、ゲストとして辻本美博(Sax/Calmera)が登場。「NakamuraEmiさんを好きな人がこんなにいるなんて、めちゃくちゃうれしいです。この全員でファンミーティングしたい!」と勢い良く挨拶すると、会場からも大きな笑いが。そしてスペシャル編成でアップテンポナンバー「モチベーション」がスタート。辻本が加わったことで、さらにリッチになったサウンドに沸く会場。さらに辻本のサックスとカワムラのギターによる熱いソロの掛け合い中には、NakamuraEmiがふたりにスマホのカメラを向けて撮影を始めるなど、ステージ上も会場も大いに盛り上がった。

 時にエッジの効いた言葉で痛烈なメッセージを放つNakamuraEmi。しかし、そこには否定的な感情や勧善懲悪のような強制は不思議と感じられない。人間が持つ喜怒哀楽の感情も欲望も、時代の移り変わりも肯定した上で、「さぁ、あなたならどうする?」と私たちは問いかけられているのではないだろうか。本編最後に披露された代表曲「YAMABIKO」には、〈“助けて誰か 私の背中を押して”って願うもの/己を信じろ〉と強く鼓舞するフレーズがある。これから先も彼女は己の信念を貫いて険しい山道を登り続けるだろう。様々な成功と失敗を繰り返す中で、その時に抱いた感情、目にした風景を歌にして、より多くの人へと伝えながら。

(文=泉夏音/写真=TAKAO IWASAWA)

Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play