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松山ケンイチが語る、岡田准一と共に作り上げた『白い巨塔』の裏側 「今の時代にも通ずる」

リアルサウンド

19/5/26(日) 12:00

 5月22日から26日まで、テレビ朝日開局60周年記念として5夜連続ドラマスペシャル 山崎豊子『白い巨塔』が放送される。本作で、岡田准一扮する財前五郎の親友兼ライバル・里見脩二を演じるのが松山ケンイチだ。

 里見は財前と同期の内科医で、出世には関心がなく、患者を診ることと自身の研究だけに心血を注ぐ。“腹腔鏡のスペシャリスト”として医学界に名を馳せ、野心に溢れた財前とは対極の人物だ。

 これまで幾度となく映像化されている作家・山崎豊子のベストセラー小説をドラマ化した本作で、松山はどう里見脩二という医師を演じたのだろうか。『白い巨塔』や里見脩二という人物の魅力、そして岡田准一との共演について語ってもらった。

■「ぶれることなく自分の芯を貫いている」

ーー『白い巨塔』で里見脩二を演じると決まった時の感想を教えてください。

松山ケンイチ(以下、松山):以前、テレビ朝日の開局55周年の際に『オリンピックの身代金』で声をかけていただいて、また呼んでいただけたことはすごく嬉しかったです。岡田(准一)さんと鶴橋(康夫)さんと一緒にできるということで、どんな役でもやりたいという感じで(笑)。里見は好きになった役でしたね。やれてよかったです。

ーー何度も映像化されている『白い巨塔』ですが、松山さんはどんなイメージを持っていますか?

松山:僕の中で『白い巨塔』は、唐沢寿明さんが髪をオールバックにして、大名行列で歩いてくる、というイメージ。膵臓癌になって最期にベッドの中で髪がオールバックじゃなくて全部おりて、子どもみたいになっているのが印象的でした。物語というよりは、唐沢さんの演技の幅がとにかくすごいなと。この2019年にもう一度『白い巨塔』をやるというのは、今の時代にも通ずる普遍的なところがあるんだろうなと思います。

 最初に台本を呼んだ時に、これが社会の縮図なのかなと思ったんですよね。病院という限られた小さな世界の話でもありますが、いろんな人が、善悪が織り混ざった世界の中で生きている。医療指導の先生たちと話す中で、僕の中でも疑問に思うところがあって。当たり前だと思っていることも、立場が変わるとまったくそうではなく、医者と患者の間には、常に価値観の違いみたいなものが存在している。『白い巨塔』は医者目線の話ではありますが、患者側ももう少し自身で考えなきゃいけない部分もあるんじゃないかと。今、どういう医者がいればいいのか、というところを考えながら演じました。

ーー松山さんから見て、里見はどんな医者ですか?

松山:岡田さん演じる財前が、パワーに溢れた、みんながひれ伏しちゃうんじゃないかというほどカリスマ性のある役で、里見とは医者としてのスタンスが正反対です。だから演技も正反対でいいんじゃないかと思いました。里見は影が薄くて、みんなを引っ張ることができない(笑)。でも、それを悲しんでいるわけではないのが里見です。へんなところで怒ったり、医者としてのこだわりは強くあって、どこまでも変人になれそうな役ではありますが、鶴橋さんとはあまりそういうのも違うよね、と事前に話しました。

ーー自分がこれだと決めた一つを突き詰めているのが、里見の魅力なのかと思います。

松山:里見は、「人の命を救う」というような大きなことを言わずに、「病気自体をすぐ発見できることで、患者自身が選択をすることができるための研究をしている人」だと思います。出世や名誉、お金に対して、自分の中ですでに十分足りているということを知っている。そこが、財前や他の医者とは違うところかなと。

 里見は、学生時代からその1点だけを突き詰めていて、最初から変わらず、その場から動いていない。ある意味では向上していないのですが、自分が導き出した目的に対してずっと取り組んでいる人です。どこかのタイミングで、これをやったほうが褒められるとかお金になるとか、大学のためになるとか判断して方向転換をしていく人もいますが、その雑音に耳を貸さなかったというのが、すごいですよね。やっぱり、同じところにずっと継続していることはすごく難しいことだと思います。単純に飽きるし、時代が変わってどんどん新しいものも出てきて、もしかしたら自分が研究しているものより、いいものが生まれてくるかもしれない。でも、周りに流されることなく、ぶれることなく自分の芯を貫いている。そんな里見を認めてくれる人もきっといると思いますし、そこが財前との一番の違いかなと。

■「どこかでサンドバックにならなきゃいけない」

ーーそんな里見は、死に向かっていく財前をどう見ていたんでしょうか。

松山:まず物語の背景としては、財前は大学病院にいいように使われていて、里見はそれをわかっているから、悲しいし止めたいと思っている。同期で同じスタート地点から始まった2人だからこそ、同じところを見ていると思うんです。なので、里見は財前になんとしてでも生き残ってほしいと感じていたんじゃないでしょうか。やっぱり財前の魅力はその絶対的な自信で、そこに里見も引きつけられたのかなと。

ーー岡田さんは、財前が追い詰められるほど役に同化していったと話していましたが、そんな岡田さんを、松山さんはどう見ていましたか?

松山:特に後半は、日によって岡田さんの表情が違いました。順撮りではないから、単純に日を追うにつれて憔悴していっているわけではないのですが、今日はやけにげっそりしているなとか、今日は元気だなとか、いろんな状態がありましたね。でも岡田さんの芝居はぶれないし、コミュニケーションをとっていても変わらない。そういう部分が、財前っぽいというか、迫り来る死すらも自分の力で乗り越えようとしているのはすごく感じました。自分は岡田さんの表面しか見ていないからわからないですが、中ではすごい戦いがあるんだろうなと今になって思います。

ーー2人は対照的な役柄ですが、岡田さんの芝居から影響を受けた部分は?

松山:里見は財前を止めたくても論破できないんですよね。「休めよ」とか「そこまでいって何が面白いんだ?」とまでは言えるけど、「なんでいけないのか」とは説明できない。だから財前を前にして、どこか一歩さがった立場にしかなれなくて。その点においては、僕の演技も岡田さんに対して拮抗するのではなく、どこかでサンドバックにならなきゃいけないなと。邪魔したくないという気持ちはあったんですよね。里見もどこかで、財前をかっこいいなと思っている部分もあったと思いますし。

ーー岡田さんとは映画『関ヶ原』でも共演していますが、どんな印象でしたか?

松山:すごいパワーがある役者さんだと思っています。だけど、繊細な部分もあって細かくて、そこが好きですね。岡田さんの芝居を見ていると、同じ役者として面白くて仕方がない。ストーリーより面白いんですよ(笑)。自分にしかわからないだろって思いながらやっていそうなほど細かくて、そこを発見できた時の喜びがありますね。『関ヶ原』の時はワンシーンだけでしたが、今回はがっつり一緒にやらせていただいて、思ったより大胆なこともするんだなと思いました。裁判のシーンでも傍聴席側から部下たちを見たりするんですが、「勝ってるぞ!」とか「よくやったな!」とか、映ってないのにやっていて、それに八嶋(智人)さんとかもリアクションをとっているんですよ。

ーーそんなアドリブもあったんですね。

松山:岡田さんって、無茶振りでもやってくれそうな感じがするんです(笑)。今回も鶴橋監督と2人で話している時に、「岡田さんには最後の屋上のシーン、(左目をさして)こっちだけで涙を流してほしいんだよ」って言ってたんですよ。すごいこと言うなと思ってたんだけど、岡田さんだったら本当にやっちゃうんじゃないかと。結局その案はなくなったのですが、それくらいの技量と受け皿がある方だと思います。(取材・文=若田悠希)

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