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いま、最高の一本に出会える

Linked Horizon Revoの音楽家としての力量ーーこだわりが詰まった『進撃の軌跡』映像作品を見て

リアルサウンド

18/12/28(金) 17:00

 とどまることを知らない『進撃の巨人』の人気を確かに支えているのはその音楽だ。『NHK紅白歌合戦』に出場するほどの大ヒットとなった「紅蓮の弓矢」(TVアニメ『進撃の巨人』Season1 前期オープニング主題歌)をはじめとし、『進撃の巨人』を創刊号から追い続けているLinked HorizonのRevoが作品に寄り添って制作した楽曲群は、物語の壮大なスケールを描くに欠かせない存在になっている。

(関連:Revo、Linked Horizonが“心臓を捧げた”ライブを熱く語る「一人一人をしっかり見てほしい」

 今回リリースされたBlu-ray『Linked Horizon Live Tour『進撃の軌跡』総員集結 凱旋公演』は、アニメ『進撃の巨人』と、“物語音楽”としての『進撃の巨人』との世界線を結びつけた作品である。Linked Horizonの、もとい「鎖地平団」団長・Revoが創り出す音楽を、超絶技巧を持った音楽隊が高らかに奏で、登場人物が乗り移ったかのような歌姫たちが麗しく歌い、多ジャンルで活躍するダンサーたちが華麗に彩っていく光景は、“アニメ主題歌を演奏するコンサート”という言葉では片付けることが出来ないものだ。

 本作は2018年1月13日、14日に行われた横浜アリーナ公演の模様を収めたものであるが、パッケージ化に際しさまざまな仕掛けが施され、新たな映像作品として生まれ変わっている。フレアを用いた画面分割や、火粉、光線などの映像エフェクト、そして7.1chにも対応した迫力のサウンドは公演会場の臨場感とはまた違う感覚を覚えるに違いない。

 目の前に立ちはだかる<第一壁>が開くと、荘厳なステージの全貌が現れる。夕焼けの海に向かい両手を広げたRevoとバンドメンバー。ストリングス、木管、ブラス、クワイア、ダンサー……総勢80名以上による「二ヶ月後の君へ」。Revo自身が『進撃の巨人』という作品を、いや、Revo団長からエレン・イェーガーに向けた曲だ。幽玄に響く朝川朋之のハープ、不穏さを掻き立てるサッシャのドイツ語ナレーション、猛り狂う内藤貴司ホルンセクション、折り重なっていく弦一徹ストリングス、……騒擾を惹起していくように迫る音楽をバックに、なだらかなメロディを静謐ながらも勇ましく歌うRevoの声が、スクリーンに大きく展開する映像“高い壁に護られた世界”に響き渡る。

 映像とともにアニメのオープニングと同じ合成演出を見せた「紅蓮の弓矢」。Revoを支えるバンドメンバーのボルテージの上げ方が凄まじい。千手観音のような華麗なドラミングの淳士(Dr)と、ボトムを支えながらも攻めの姿勢を見せる長谷川淳(Ba)。そこに鮮やかなYUKI(Gt)とあでやかな西山毅(Gt)のギターソロが花道の最前部で炸裂する。

 堂々たるRevoとは対照的に、悲しくも雄々しい華を添えていくのは歌姫たちだ。五十嵐宏治の柔らかなオルガンに乗せて、柳麻美が歌う「もしこの壁の中が一軒の家だとしたら」。「紅蓮の弓矢」では〈家畜の安寧〉〈虚偽の繁栄〉とまで表現されている壁内世界を、愛する家族と過ごす「一軒の家」に見立てる。映し出される幼きエレンとミカサ・アッカーマン、そして家族——それを捉えているのはアルミン・アルレルト。しかし、穏やかな生活は長くは続かない。松本英子の歌う「14文字の伝言」。エレンの母親、カルラ・イェーガーは平穏な日常から、母としての幸せを感じながら力強く生きていく。しかし、それは突如、絶望へと変貌する。カルラは何を思いながら、その最期のときを迎えるのか。そんなことを考えていると、松本がしとやかに“14文字”を……次の瞬間、画面がカルラの血で染まった。

 これは涙なのか。血を洗い流すかのような雨が降り出した。フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴットの木管四重奏が物悲しく小品を奏でる。すると、それをかき消すかのように軍楽隊の行軍を思わせるリズムが打ち鳴らされた。華々しく鳴らされるファンファーレ。「紅蓮の座標」(劇場版『進撃の巨人』前編~紅蓮の弓矢~主題歌)である。「紅蓮の弓矢」の旋律を踏襲しつつ、明るい未来を感じさせる曲だ。「14文字の伝言」からこの曲への流れは見事なまでに凄惨でありながら、この上なく美しい。

 死を以って、生きることの無常さを容赦無く突きつけてくるのも『進撃の巨人』の大きな魅力のひとつ。調査兵団、イルゼ・ラングナーの残した“手帳”を月香が歌う「最期の戦果」。調査兵団特別作戦班、通称:リヴァイ班、ペトラ・ラルの想いをMANAMIが体現した「双翼のヒカリ」。勇敢に散って行った女性兵士たちを描いたこの2曲は本作のハイライトであるように思えた。

 死と隣り合わせの緊張感、そして巨人と対話するという奇跡の中からの安堵、やがてそれは“怒り”へと……。そんなイルゼの不安定な気持ちの変化を、見事なまでに音楽で描き出す「最期の戦果」。歌劇やミュージカルという従来の手法とは違ったRevoの作家性に驚く。対して「双翼のヒカリ」は、作品の中で最も悲惨というべき最期を遂げたペトラの、リヴァイへの慈愛をストレートに切なく表現した美麗な曲。両曲のラストに映し出されるリヴァイの2人に対する描写が、まったく違うものでありながら同じように胸をえぐってくる。

 そうした悲壮感に包まれた女性兵士の歌の中で、異彩を放つ曲がある。“女型の巨人”となり、“兵士”として“戦士”として、責務を果たそうとしたアニ・レオンハートが、自らを封印した結晶体の中で何を想うのか……福永実咲が歌う「彼女は冷たい棺の中で」はそんな曲だ。〈人が人を殺すのに 例えばどんな大義が必要だろうか〉と自分に問いただしながら強く歌う福永は、感情的でありながらもそれを表に出すのを諦めていた感のあったアニの心の声そのままのようで、凛として突き抜ける鈴木正則のトランペットと激情的に揺らめく弦一徹のバイオリンが、そんな彼女の思いをさらに強調させる。福永はしっかりと思いを噛み締めながら、アニとなり、ゆっくりと“壁”を登っていくが、それを阻むスクリーンのミカサが煌めく刃で指を切り落とすと、〈何ひとつ掴めぬまま… 奈落へと墜ちてゆく…〉ダンサー4人に担ぎ上げながら堕ちていった。

 調査兵団の「第57回壁外調査」を見事なまでに音楽で体現した「自由の代償」は本作の大きな見せ場。兵団の士気を鼓舞していくような三沢またろうのダラブッカ、吹き抜ける嵐のような旋律が羅列する高桑英世のフルート、馬の嘶きのような西山のギター、無数の馬の蹄が大地を蹴り上げ荷車が軋むかのごとく打ち鳴らされる淳士のバスドラム……各楽器セクションが複雑で緻密な「長距離索敵陣形」を音で形成し、その壮絶さを表していく。そして後半、ダンサー・OBAが扮する“奇行種”巨人と、それをブレードポイで光舞しながら迎え撃つ調査兵団のシーンに息を呑み、「勝利の歓び」というべき最後の凱歌パートにいざなわれ、ここに昂揚は最高潮に達するのだ。

 ラストは、ステージと観客はもちろん、そしてこの映像を見ている者、全てが右手を左胸に当て斉唱するであろう「心臓を捧げよ!」(TVアニメ『進撃の巨人』Season2オープニング主題歌)。ここまで積み重ねてきた数多くの要素とさまざまな想いが一気に解き放たれる。痛み、苦しみ、怒り、死……すべての負の感情をも内包し、そこから生まれる決意、新たな出立を表現する。

 Revoは、アコースティックギターで“聞き覚えのある”旋律を爪弾くと、静かに夕焼けの海に向かって両手を広げ、パラレルな世界線へと旅立っていった。

 そして、再び現れた巨大な壁によって視界は閉ざされた。

 壮大なスケールで魅せた『Linked Horizon Live Tour『進撃の軌跡』総員集結 凱旋公演』<第一壁>はこれで終わる。ライブ映像であるものの、MCなどはカットされており映像作品としての意味合いが強い。Linked Horizon 2nd アルバム『進撃の軌跡』の世界を映像化したもの、という見方もできるのだが、比べると興味深いのは「もしこの壁の中が一軒の家だとしたら」が「紅蓮の弓矢」より先に披露されているところだ。ここにもアルバムとはまた違った感情を覚えるはずだ。この曲順も実に秀逸さを見せており、“チャプター分け”されていないことも、強い制作意図を感じる部分である。

 そして、凝りに凝った装丁を今回も見せている。初回盤は<第一壁>に加え、さらなるLinked HorizonとSound Horizonの深部を見せた<第二壁>の2枚組であるが、公演オープニング同様、“壁”を模したパッケージになっている。<第一壁>を開かなければ、<第二壁>にたどり着くことが出来ない仕様だ。

 音と映像のスケールに圧倒されてしまったが、あらためて音楽家としてのRevoの力量に驚愕させられた作品である。オーケストラとバンドサウンドの融合、ハードロックとクラシック音楽の親和性は今に始まったことではないのだが、そのどちらかが主になる訳でもなく、双方が干渉せずに違和感なく両立している音楽などそうないはずだ。そして、その音楽性といえば、バロック音楽から現代音楽、ヘヴィメタルからプログレッシブロックまでも覆いながら、それでいて耳馴染みの良い歌モノのポップスという着地点を見失っていない。このような音楽家、他にはいないだろう。連載中の原作はもちろん、2019年4月にはTVアニメ第3期の後半となるPart.2も決定している『進撃の巨人』。この先、Revoは作品とともに一体どんな“物語音楽”を創り出していくのだろうか。(冬将軍)

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