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細野晴臣、『HOCHONO HOUSE』制作体験とルーツを体現した音楽世界 中野サンプラザ公演レポ

リアルサウンド

19/3/9(土) 12:00

 『細野晴臣 コンサートツアー』、中野サンプラザ公演。昨年11月から今年2月にかけて、京都、名古屋、神戸、東京、福岡を回り、ファイナルは台湾・Lagacy台北で行われた今回のツアーは、ブギウギ、ラテンなどを20世紀中盤の楽曲のカバー、そして、細野のソロデビュー作『HOSONO HOUSE』の楽曲を中心に構成され、まさに時空を超えた音楽世界を堪能できる内容となった。

 チケットはもちろんソールドアウト。客席にはテイ・トウワ、砂原良徳、岡村靖幸、原田郁子(クラムボン)、安部勇磨(never young beach)といったミュージシャン、さらに清水ミチコ、東京03、塙宣之(ナイツ)、水原希子・佑果姉妹らの姿も。今年デビュー50周年を迎えた細野晴臣の最新ツアーに対する期待が膨らむなか、開演予定時間の19時ちょうどにライブはスタートした。

 おなじみのバンドメンバー高田漣(Gt)、伊賀航(Ba)、伊藤大地(Dr)、野村卓史(Pf)に続き、細野がステージに登場すると、会場からは大きな拍手が。小さく咳ばらいをし、メンバーを見てから演奏された最初の曲は、エルヴィス・プレスリーの歌唱で知られるバラード「Love Me」。高田のスティールギター、野村のアコーディオンとともに、オールディーズ特有のノスタルジックな雰囲気が広がる。さらに「Angel On My Shoulder」「I’m A Fool To Care」とミッドセンチュリーのスタンダードナンバー(細野いわく“チークタイム”)が続く。

 「中野サンプラザは久しぶりなのかな。もうね、記憶がないんです。走馬灯のようになってて」という挨拶から始まった最初のMCでは、3月6日にリリースが予定されているニューアルバム『HOCHONO HOUSE』について言及。

「この数カ月間、制作をしてまして。1973年に出したデビューアルバム『HOSONO HOUSE』をリメイクするって、つい周りに言っちゃってね」「一人で打ち込みでやってたんですよ。新しい感じでやろうと思ったんですけど、古いんですよ。僕も古いけど、機材も古くて」

「いろいろあって、やっとできて。いまチェックしてるところなんですが、タイトルは『HOCHONO HOUSE』。あまりにもシリアスに作り過ぎて、没頭しちゃって。自分自身の嘲笑いたいという気持ちで、このタイトルにしたんですけどね」

 「じゃあ、音楽やろうかな」とフランク・シナトラやエラ・フィッツジェラルドも歌った「The Song Is England」(細野自身が日本語詞を付けたカバー)の後は、「El Negro Zumbon(Anna)」「La Conga Blicoti」とラテンナンバーに移行。原曲のムードを色濃く残し、たっぷりと郷愁感を漂わせつつも、演奏自体はきわめてタイト。現在のメンバーとともにライブ活動をスタートさせて約10年が経過したが、“20世紀半ばの音楽を再発見し、現在に蘇らせる”という細野のコンセプトを深く理解し、高い技術と表現力によって、それを体現するこのバンドの質は、いまもなお向上し続けているようだ。

 「いまの曲(「La Conga Blicoti」)のリズムはバイヨンと言って、昔、ずいぶん流行ったんですよね。僕は20代の頃からバイヨンが好きで、これもそのリズムを使ってるんですよ」と紹介されたのは、アルバム『トロピカル・ダンディー』収録の「北京ダック」。エキゾチズムに溢れた音像、粋とユーモアに貫かれた歌の世界はやはり絶品である。

 ここからは、今回のツアーの目玉というべき、アルバム『HOSONO HOUSE』の収録曲を続けて披露するセクションへ。しなやかなで濃密なバンドグルーブが印象的だった「住所不定無職低収入」、そして、ファンクミュージックのテイストを反映させた「冬越え」と「薔薇と野獣」。“原曲の骨子をきちんと残したまま、このバンドで培ってきた豊かなアンサンブルを活かし、新鮮な手触りの楽曲へと導く”というスタンスは、ここでもしっかりと貫かれていた。MCのなかで細野は「『HOSONO HOUSE』は一発録りだったんですよ。狭山のハウススタジオで録ったから、音が回っちゃって、何をやってるかわからなくて」と言っていたが、リリースから45年が過ぎた現在、このアルバムの楽曲をライブで演奏するための適切なスタイルに、ようやくたどり着いたのかもしれない。また、リメイクアルバム『HOCHONO HOUSE』の制作過程において、ひとつひとつの楽曲に改めて向き合ったことも、このツアーの演奏に良い影響を与えていたと思う。

 グッドラックヘイワ(伊藤大地+野村卓史)による「The Typewriter」(ルロイ・アンダーソン)のカバー、高田漣の「ハロー・フジヤマ」(3月6日リリースの新作『FRESH』収録)を挟み、ライブは後半の“ブギウギ”セクションに。『HOSONO HOUSE』収録曲「CHOO−CHOO ガタゴト」、『泰安洋行』収録曲「PomPom蒸気」からはじまり、「こういう感じの曲はやりやすいですね。次は……あ、もっとやりやすい(笑)」というMCから、いまやおなじみになった「Ain’t Nobody Here But Us Chickens」「Tutti Frutti」へ。演奏のテンションもさらに上がり、心地よい高揚感がゆったりと広がる。「ブギウギは楽しいので、みなさんもやってみたらいいですよ」という細野も、いつも以上にご機嫌だ。

 本編ラストは「Body Snatchers」(アルバム『S・F・X』)、「The House Of Blue Lights」(アルバム『Heavenly Music』)。アンコールでは「香港ブルース」(アルバム『泰安洋行』)、「相合傘」(『HONOSO HOUSE』)、そして、「東京だから、特別にもう1曲」と、やはり『HOSONO HOUSE』の収録曲「ろっか・ばい・まい・べいびい」を披露、大きな拍手と歓声のなか、ライブは幕を閉じた。

 “自身のルーツである20世紀中盤を再発見する”というこれまでのテーマを踏襲しつつ、『HOSONO HOUSE』の奥深い魅力を改めて体現した今回のツアー。待望の新作『HOCHONO HOUSE』をはじめとする50周年の活動への期待がさらに高まるステージだった。

(文=森朋之)

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