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町田啓太は“2.5枚目”キャラがハマる? 『中学聖日記』有村架純と吉田羊に向ける絶妙な困り笑顔

リアルサウンド

18/11/27(火) 16:00

 町田啓太の躍進が止まらない。今年に入ってNHK大河ドラマ『西郷どん』を筆頭に数々のドラマに出演。中でも現在放送中の『中学聖日記』(TBS系)は回を重ねるごとに視聴者の熱も急上昇。物語の行方を担うキーマンとして、町田の存在にも期待が高まっている。

参考:町田啓太が語る『西郷どん』小松帯刀役への挑戦 「二度とできない経験をさせてもらいました」

 町田が演じる川合勝太郎は、主人公・末永聖(有村架純)の元婚約者。エリート商社マンだが、傲慢なところは一切なく、自ら婚約破棄を切り出した聖と3年ぶりに再会を果たしても、責めるどころか自分の幼さを詫びる、非の打ちどころがないような“いいヤツ”だ。こうしたパーフェクトキャラは、ともすると隙がなさすぎて面白みに欠けたり嫌味になりがち。そこにちゃんと愛嬌をプラスして、人間味あるキャラクターに仕上げているところが、町田啓太の巧さだと思う。

■愛嬌と人間味、そして大人の理性も表現する絶妙な困り笑顔

 ポイントは、絶妙な“困り感”だ。遠距離恋愛という物理的な障害に加え、黒岩晶(岡田健史)の出現により、聖と勝太郎の間には微妙な距離が。たとえば、第2話のテニスシーンで、「もしかしたら、彼女、距離感じてるのかもしれないよ」と原口に指摘されたときの、口元は笑っているんだけど、思わず目線を外すところ。あるいは、第4話の花火大会で、原口に「ほしくなった、川合が」と迫られたときの、表情がゆっくりと消えて、一瞬硬直した後に真面目な顔で原口を見るところ。どれも小さなリアクションだが、その小さな困惑のリアクションを積み重ねていくことで、ただの万能人間ではない川合勝太郎らしさが出ている。

 中でも、あの目尻の皺たっぷりの笑顔が印象深い。特に第4話の出張シーンで、聖との関係を怪しむ原口に「問題ありならノック2回ね。壁叩いて」と命じられたときの「おやすみなさーい」という張りついたような笑顔は最たるもの。見るからに人の良さそうな町田の笑顔は、困ったことは作り笑いでスルーしようとする勝太郎の事なかれ主義な性格をうまく表している。

 それでいて、第3話で、失恋して落ち込んでいる原口の手を取り「最強に肉食べたいです」と誘ったときの笑顔は、いつもの作り笑いとは違って、甘え上手な年下男子らしさと、原口の性格をよくわかっている聡明さがあり、氷の女である原口が心かき乱されてしまうのも無理はないと思わせてくれた。

 また、さり気ない台詞回しにも役者としての技術が窺える。秀逸だったのは第5話。この回だけで勝太郎は「相手、中学生ですよ」という台詞を二度吐く。一度目はジョギングを終えてのお風呂上がり。タオルで顔を隠した勝太郎は「相手、中学生ですよ」と今まで聞いたことのないような揺らぎと湿り気を孕んだ声で呟く。そして二度目は聖を連れて大阪に帰ろうとする直前。食い下がる原口を、勝太郎は「相手、中学生ですよ」と努めて冷静に、かすかに口元に笑みを添えていなす。台詞は同じ、きっと根底にある不安も同じだが、言い回しの違いで、懸命に理性的であろうとする勝太郎の本音と建前を見せた。

 こうした障害のある恋愛モノは、間に入るキャラクターが強烈であればあるほどドラマが盛り上がる。だからつい勝太郎のようなキャラクターは過剰に演出してしまいたくなるのだけど、その欲を抑えて、ごく普通の善良な人間として勝太郎を描けているところがいい。だから、『中学聖日記』は悪趣味でスキャンダラスな大衆路線に走らずに、静謐で繊細な純愛ドラマとしての質感を保てているのだと思う。

■“2.5枚目”キャラで独自のポジションを築く

 『中学聖日記』に見る町田啓太の善良さは、他作品でも光っている。今年の冬にオンエアされた『女子的生活』(NHK)で演じた後藤忠臣役も良かった。元カノがつくった借金のために身ぐるみ剥がされ無一文になった後藤。窮地の彼が頼ったのは、高校時代の男友達・小川(志尊淳)だった。しかし、数年ぶりに再会した級友は見違えるような美女に変身しており、彼がトランスジェンダーであることを知る、という役どころだ。

 この後藤は、『中学聖日記』の勝太郎に輪をかけたお人好し。単純でおバカなところがチャームポイントで、町田の人なつっこい笑顔が、このキャラクターに説得力をもたらしていた。首をかきながら、てへっと困ったように笑う仕草は、一歩間違えるとあざとくなるのだが、町田がやると不思議としっくり来る。

 家族との間にしこりを抱える小川が仕事の都合でひとり帰郷したことを知るや一目散に駆けつけるところも、実に町田らしい演技だ。決してヒーロー然としたカッコ良さはない。「何で来たの?」と問われても「俺も正直よくわかんない」とヘラヘラ笑って首を傾げるだけ。しかも、その後、小川と兄(鈴木裕樹)が喧嘩をするシーンでは空気も読まず大号泣。全然カッコよくない、むしろちょっとズレている後藤だが、そこがたまらなく愛おしいと評判をとった。

 町田啓太自身は、「イケメン」よりも「ハンサム」という言葉の方がしっくり来る正統派の2枚目顔。だが、役者としてはそんな端麗な容姿を活かした役どころより、ややズレた“2.5枚目”的な立ち位置の方が光っているように見える。

 そんな町田の善良さとちょっとズレた抜け感が見事にハマっているのが、12月1日から公開の映画『jam』だ。演じるのは、瀕死の重傷を負った恋人の意識回復を望むタケル役。神のお告げを聞いたタケルは、恋人が目覚めるための願掛けとして、1日に3つ善いことを実践している。そんな迷信を愚直に信じる善良さも嘘臭くならないのが、町田啓太の個性だ。

 しかも、とてもいい人なのにどこかズレている部分が見え隠れして、そこに人間のおかしみとそこはかとない狂気が感じられる。混じりけのない町田の善良さは、一服の清涼剤のようでもあり、ある意味一番歪んでしまっている人間にも見えるのだ。『中学聖日記』を観ながら、このアクのなさが魅力である一方、役者としての弱さにもなるのかなと懸念していたが、同作で早速その危惧は覆された。十八番の善良なお人好しを軸にしながら、今後ますます役柄の幅は広がっていくだろう。

 そうした期待も含めて、まずはこの先の『中学聖日記』に注目だ。原口との恋に振り切ったように見え、まだどこか聖への想いを残しているようにも映る勝太郎。このまま善良な役どころで終わるのか。それとも、『jam』で見せたような善良さの中に孕んだズレや狂気を発していくのか。町田が演じる勝太郎に、物語の行方がかかっている。(文=横川良明)

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