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田村芽実、二十歳を迎えて意識した二面性 “新芽”のような6曲に込めた思いを聞く

リアルサウンド

19/3/20(水) 12:00

 田村芽実が1stミニアルバム『Sprout』を3月20日にリリースする。ハロー!プロジェクト・アンジュルムのメンバーとして活躍し、幼い頃からの目標であるミュージカル女優になるためグループを卒業。その後はミュージカル女優と並行して歌手活動を行い、今回、個性と魅力を開花させる6曲を収めた作品集を完成させた。

 タイトルの「Sprout(スプラウト)」とは「新芽」という意味。その名を象徴するように本作にはシンガーソングライターの遠藤響子、阿久悠の長男・深田太郎、また阿久の未発表楽曲など、才能を芽吹かせるバラエティに富んだ楽曲が収録されている。これらの楽曲を得て、20歳となった田村芽実の「新芽」は今後どう開花していくのか。今回、リアルサウンドではインタビューでその気持ちを問うた。(編集部) 

(関連:ミュージカル女優と歌手の二刀流で魅了する、田村芽実の可能性と実力

■大変だったぶん、アルバムへの愛おしさが深まった

――1stミニアルバム『Sprout』が完成して、率直にどんな気持ちですか?

田村芽実(以下、田村):アルバム1枚1枚に、リボンをかけて丁寧に渡したいなっていう作品ができました。過去の2枚のシングルは、まずメインの曲があってc/wを何曲か添えるというかたちで制作しましたが、今回は6曲すべてが主役の曲です。楽曲探しから始めて、それぞれのテーマや構成、曲順に至るまでひとつひとつ大変だったんですが、そのぶん、このアルバムへの愛おしさが深まりました。

――楽曲選びから関わったということで、そのチョイスの決め手になったのはどんな部分でしたか?

田村:自分はどういう歌を歌いたいのか、本当にやりたいことはなんなのかということを改めてじっくり考えました。あと、いろんな曲を詰め込んで、いろんな私を見せたいという気持ちもあったので、そのへんのバランスも見ながら。すごくシンプルに言っちゃうと、「私の好みを集めました!」という6曲になったと思います。

――具体的な流れとしては、候補曲を集めて、そこから選んでいったということですか?

田村:こういう作詞家さんがいい、あの作曲家さんにお願いしたいという私の希望や、私に合いそうな作家さんにお願いしながら進めていきました。

――アルバムの全体的なコンセプトとしては、最初に掲げていたものはあったんですか?

田村:今回のタイトル「Sprout」が「新芽」という意味なんですが、私の名前に「芽」という漢字が入っている事や、二十歳を迎えて「芽吹き始めた」……というイメージで1枚を作ってきました。ただ、だからといって純粋無垢さを前面に出すわけではなく、新芽にしかない毒っ気だったり、若さゆえの危なっかしさもそれぞれの曲や6曲の構成の中に欲しかった。なので、二面性みたいな部分もすごく意識しました。もともと私自身がそういうものに惹かれる傾向があるんですよ。そんなところから、今回は人間味だったり、女の子ならではの二面性も盛り込んでいきました。

――なるほど。確かにそれは聴いてて感じました。単にピュアでかわいいナンバーというわけではなく、適度な毒や棘もあることで楽曲の立体的な魅力が広がっているなって。

田村:ありがとうございます。明るくて真っ白な気持ちを描いたような曲にもどこか棘があるし、そういうのが歌詞の言葉からではなくイメージとして伝わってくる曲もあるので。ぜひ注目していただきたいです。

――「無形有形」「歌が咲く」の2曲は、田村さんも出演したミュージカル『マリーゴールド』など舞台『TRUMP』シリーズの脚本・演出を手掛ける末満健一さんが作詞、同シリーズの音楽を担う和田俊輔さんが作曲ですね。これはどんな経緯だったんでしょう?

田村:末満さんと和田さんは私が中学生のころからずっとお世話になっていた方。いつか曲を書いていただきたいと思っていて、今回それが叶いました。初めて聴いたときは、さすが私をよく知ってくださってるお二人だなというか、本当に自分を鏡に映したような曲だなって思いました。

――「無形有形」の歌詞って、すごく個性的でインパクトが強いですよね。曲中にはミュージカルのセリフのようなパートもあって。

田村:私も歌詞を見たときにビックリしました。というのも、末満さんに「これ、あなたの曲」ってポンって渡されたとき、私の印象では、非常にわがまま娘の曲だったんです。「私ってこう見られてるんだ!」ってドキッとしたし「見抜かれてる」とも感じました。マネージャーさんも「これって田村芽実じゃん」って言うし(笑)。

――(笑)。私は個人的に強い芯を持ってる女の子って印象を受けましたけどね。セリフパートはいかがでしたか? 田村さんの表現力がここぞとばかりに発揮されて、その一部分だけでもちょっとしたミュージカルを体験した気持ちになりました。

田村:うれしいです! 末満さんもレコーディングのとき、そのセリフにこだわっていらっしゃって、セリフのときはブースの中まで来てくれたんですよ。で、気付いたら演出家と役者としての演技指導みたいな感じになってました(笑)。あと末満さんの歌はわりと苦労が多くて。普段、舞台に役者として出演させていただくときは、末満さんの頭の中にあるイメージをどう体現しようって考えながらいつも稽古しているんですけど、今回は私の作品なので、いただいた歌詞のイメージを受け取りつつ、私がこの歌を通してやりたいことや表現したいことも見失わずにいきたいなって。そのバランスや方向性を決めるのが難しかったです。

――末満さんとも話し合ったりしたんですか?

田村:はい。言い方が合ってるかわからないんですけど……今回、初めて末満さんに歯向かいました(笑)。

――えっ! 「私はこっちがいいです!」みたいな?

田村:そうですね。今までは末満さんの作品の世界に私が入らせていただくということで全部「YES」で来てたんですけど、今回は自分の作品ということもあり、ちょっとそれはやりたくないなって思うことがあって。自分でもビックリしたんですけどね。「あ、言っちゃった!」って(笑)。作詞家とアーティストの立場だから今回は言ってもいいのかなと思って。さっき「歯向かった」って言いましたけど、それはちょっと冗談で、小さいときから見てくださっている方にお芝居だけじゃない1人の表現者としての成長した部分を見せたかったんです。

――そういう想いもあったんですね。

田村:はい。ひとつ恩返しじゃないですけど、末満さんが私に寄せてこだわって書いてくださったのがわかったからこそ、私も自分の歌にこだわりたくて。末満さん、和田さんのお二人とは、今回、いちアーティスト同士の関係でものづくりができたこともうれしかったです。

――それ以外の提供者の方とも、田村さんが直接お話したりして作っていったんですか?

田村:「体温」の作詞をしてくださった松井(五郎)先生とは、最初にゆっくりお話させていただきました。ただ、会話のキャッチボールというよりは松井先生の講演会を聞いてた感じ(笑)。“歌詞”というものの話や、「人間っていうのはね」みたいなところまで内容がどんどん展開して、すごく引き込まれるし、胸に沁みるんですよ。たった1日で先生の大ファンになってしまいました。後日開催されたトークイベントもプライベートで見に行ったし、松井先生の詩集も今、寝る前の楽しみになってるくらいなんです(笑)。

――それにしても「体温」は、とても艶のある大人っぽい歌詞です。

田村:はい。最初は難しいなと感じたし、自分にこの世界が理解できるのかなって思いました。本当に深くて迷路のような歌詞を書かれる方なので。でもその迷路を自分の力で辿って、自力でそこにあるものを見つけにいきたいなって。「体温」はそんな想いで歌いました。曲が完成したとき、松井先生に「素晴らしい」と言っていただけたのは光栄でしたね。

■上手い歌やお芝居ではなく「本質を届ける」ことを大切に

――田村さんはアイドルグループ・アンジュルムを卒業後、ミュージカル女優としても活躍。歌手との二刀流で精力的に活動中ですが、それぞれの意識の違いってありますか?

田村:私の中でまず歌とミュージカルはまったくの別物なんです。歌は3~4分で作品のイメージを伝えるけど、舞台は2時間とかじゃないですか。なので心の忙しさが全然違いますし、もっと言うと、2つは切り離したものとしてやっていきたいなという思いがあって。

――そうなんですね。

田村:歌の発声も表現の組み立て方も全然違う。自分ではそれぞれ分けてやってるつもりなので、歌手のときには、「“田村芽実”としての歌を極めなきゃ!」って思います。ミュージカルのときも「アイドル上がりの歌手がミュージカルに出てる」みたいな目では見られたくなくて。そういう先入観があったとしても、見たら「完全にミュージカルだった!」って思ってもらえたらいいなと思ってるんですけど……。

――後者はすでに成功している気がしますけどね。

田村:いや、どうでしょう。まだまだこれからです。私がミュージカル女優として目指しているのは、来てくれたお客さん一人ひとりをちゃんと作品の世界に連れていってあげること。ミュージカルを見たことがない人って、歌がセリフのようになってたり、普通のセリフから急に歌にいったりする構成に最初ビックリするじゃないですか。「なんでそうなるの?」って。そういう構成に疑問も持たせないくらいナチュラルに舞台へ引き込むようなお芝居ができたらいいなって思ってます。

――では、両方をやっていることで相互に活かされていることは?

田村:活かされるということとは違うんですが、ミュージカル中は自分というものを消さなきゃいけなかったりして、そこが難しさであり、楽しさでもある。ただ自分自身と向き合わなくてもいいのはちょっとラクなんですよ。歌手のときはかなり自分と向き合うことになるので、それが結構しんどい。「もう! 自分は何を表現したいんだ!?」って、ちょっと荒れたりして(笑)。

――そんなモードになるんですね。

田村:大変です(笑)。ただ、しんどい思いをしただけのやりがいや充実感はすごく感じるので。ミュージカルも歌手も、やってて本当に幸せです。

――二刀流だからこそ精神的なバランスがとれているっていうのもあるかもしれないですね。

田村:それもあると思います。舞台を長期間やっていると役が抜けにくいこともあるんですけど、歌手活動という環境の変化があると自然と切り替えられるというか。それに、両方をやることで物事を見る視野や視点も広がった気がしますね。歌手活動では1曲の歌にとことん向き合って、その本質や、歌の歌詞の整合性みたいなことも歌う前にじっくり考えるんです。そういうのがミュージカルにも活きてて、この作品の本質をどう伝えるか、自分だけじゃなく作品全体としてどうか……ということも今は考えるようになったというか。

――なるほど。

田村:一方の歌手活動でも、ミュージカルをやっていることで脚本家や演出家のような視点で1曲の構成を考えたりできるし、表現のアプローチはお芝居から学んだことも多いので。本当にどっちも必要ですね。とても勉強になってます。

――例えば、どちらか一方だけを選ぶということはあり得ないと。両輪があって初めて今の田村芽実が存在してるんですね。

田村:本当にそうだと思います。以前、スタッフさんに相談したことがあるんですよ。どちらも100%でやるのは体力的に精神的にも大変で、そのバランスをどうしたらいいですかって。昼に舞台をやって夜にレコーディングみたいなときって、体力的にはなんとかやれても私は何事も組み立てて考えるタイプなので切り替えが少し難しかったんです。そしたらあっさりと「両方やるんだよ」って言われて。「もう、やるのは私だよー!」ってそのときは思ったんですけど(笑)、今は素直に感謝ですね。やっぱり両方やるからこそ、っていうのはいろんなところで実感するので。発見できることも片方だけの人のきっと倍以上はあると思ってます。

――同時に、田村さんのキャパも自然と広がってるんじゃないですか?

田村:そうかもしれないですね。今は不思議と、悩んだとしても「どうしたらいいかわからない」っていうのがないんですよ。たとえ遠くても、点でもゴールみたいなものがなんとなくわかったり、求められてるものや自分が行くべきところが見えるようになったのは経験なのかなって。どんなときも、ただ上手い歌、ただ上手いお芝居というのではなく「本質を届ける」というのを大切にしていきたいですね。

――最後は6月30日のワンマンライブについても聞かせてください。1月のソロデビュー後初ワンマンに続く、2度目のステージになります。

田村:今回のアルバムを引っさげて、収録曲は全部歌うつもりです。あとは、日本人として生まれた国籍や女性っていう性別は、基本的には変えられないじゃないですか。そういう「変えられないもの」をひとつテーマにライブを構成していこうかなって。私の大好きな昭和歌謡も歌おうと思ってるんですけど、そういうのも今の二十歳の私が発信する歌として、何かアップデートして届けられたらいいです。(川倉由起子)

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