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andropが明かす、アルバム『daily』でリスナーに伝えたいこと「自分たちの“日常”が届いてほしい」

リアルサウンド

18/12/19(水) 13:00

 3年ぶりのアルバム『cocoon』のリリースとそれに伴う全国ホールツアー、そしてドラマ『グッド・ドクター』主題歌として、多くの人の心を掴み現在もセールスを伸ばしているシングル『Hikari』のリリース。また秋からは全18公演のライブハウスツアー『androp one-man live tour 2018 “angstrom 0.9pm”』も行ない、2018年はデビュー9年の中でも充実した1年を送ったandrop。この1年を締めくくるように、12月19日には6曲入りのニューアルバムをリリースする。andropの肝と言える、心に訴えかける歌心のある曲を中心としつつ、ツアーで感じた思い、そこから描いたバンドのビジョンや可能性を新たなサウンドとして提示し、4人の姿勢や目線を込めて『daily』と名付けられた今作。來るデビュー10周年に向け、これまでとこれからをつなぐ作品にもなる『daily』について、メンバー4人に話を聞いた。(吉羽さおり)

(関連:andropインタビュー写真

■「今回はよりパッションで作っている部分が多い」(内澤崇仁)
ーーライブハウスツアー『androp one-man live tour 2018 “angstrom 0.9pm”』代官山UNITでのファイナル公演のMCで、リリースは1週間延期したけれど、納得のいくものを出したかったと話していたニューアルバム『daily』ですが。その言葉通りの作品であり、また新しいことにチャレンジした作品だなとも感じます。今回の作品は、長いツアーがあったなかでどう進めていったものだったんですか。

内澤崇仁(Vo/Gt):もともとは、今年の3月にアルバム『cocoon』をリリースした後、次の作品をどうするかという話し合いを、なんとなくしていたんです。それで、こんな感じの曲かなという10数曲を持ち寄って、こんなアルバムかなという話をしていたときに、ドラマ『グッド・ドクター』の主題歌の話をいただいて。じゃあ、先にそっちに取りかかろうと。その後にまた次の作品の話をしようという状態だったんです。それで先に『グッド・ドクター』の曲に取りかかっていたんですけども。その曲の制作が結果4カ月かかってしまって。制作が押した分、一旦次の作品の話は立ち消えになったんですよね。

ーー『グッド・ドクター』主題歌「Hikari」のインタビュー時に、別の制作を中断したとは、たしかに話していましたね。

内澤:そうなんです。それで9月に入った頃、「Hikari」が思っていた以上に反響が高いので、このまま年内にアルバムを出そうと言われてーー。

ーーずいぶんと最近の話ですね。

内澤:僕ら9月から、3カ月にわたるライブハウスツアーをやる予定だったから、流石にアルバム制作は無理ですっていう話をしたんです。基本的には、アルバムとなると、遅くともリリースの2カ月前にはできているものなので。そうしたら、5曲でもいいと。その話をしたのが9月2日だったんですけど、そこからのスタートでした。

ーーツアー初日が9月4日ですから、本当に直前だったんですね。「Hikari」以前に作ろうとしていた曲も、今回は収録されているんですか。

内澤:それが、「Blue Nude」、「Saturday Night Apollo」。あとは、「Canvas」。まだ断片でしたけど、その時にはありました。

ーー今あがった曲の感じだと、これまでとは違った雰囲気の曲を作ろうというのが最初からあったようですね。

内澤:「Blue Nude」と「Saturday Night Apollo」に関しては、アルバム『cocoon』を出したあたりに、1コーラス分できていて。去年はBillboard Tokyoでライブ(2017年12月11日『androp Live at Billboard Live』)をしたり、『cocoon』はホールでのツアーをイメージして作った曲も多かったので。音数の少ないなかでも、ホールのような大きな会場でもしっかり届くイメージを兼ね備えつつ、今までやったことのない雰囲気のものにトライしてみようと作っていたのがその2曲でした。

ーー「Blue Nude」は、R&Bの香りが新鮮です。これはまず内澤さんが1コーラスを作って、アレンジをメンバーで作り上げていった感じですか。

内澤:この曲は、ループ感であったりとか、隙間が多い曲で。その隙間を音で遊ぶ感じや、言葉遊び、語感を楽しむものというのがやりたいなと思って作った曲だったんですけど。

佐藤拓也(Gt/Key):アレンジに関してもわりと内澤君が作ったデモを再現するというのが大きかったですね。3月の時点で、次の作品に向けて最初に上がってきたのがこの「Blue Nude」で。メンバーとしても、この方向性がいい、この曲でいきたいというのでまとまって。「Hikari」の制作で一旦止まったんですけど、いざ新しいアルバムをとなったときに、「Blue Nude」を入れたいという思いが強かったですね。

前田:めっちゃかっこいい曲だなと思いましたね。きたわ、っていう。Billboard Liveやホールツアーをやってという流れのなかで、僕らの色々な好みとか、好きな感じを抽出して、内澤君のフィルターで出してくれた曲という印象があったので。素直にかっこいいし、これは自分たちの曲にしたいなとは思いました。

伊藤彬彦(Dr):僕も、まったく同じなんですよ。かっこいいわ、きたわって思いまして。

ーー内澤さんとしても、これは手応えがあった曲なんですね。

内澤:バンドとしてかっこいいもの、音像的にかっこいいものというのを表現したいなというのがあったんですよね。メンバーのスキルもすごく高くなってきて、その中でこういう音像だったら、今表現できるかなっていうのを提示したんですけど。レコーディングは実際はそれを上回るものを、みんなが返してきてくれて。デモよりも良いものになりました。

ーーリスナーとしても、こういったタッチのサウンドをよく聴いていたんですか。

内澤:聴いていたのはなんだったかなあ。ちょっとマニアックな話になっちゃうんですけど、リバーブの姿がきれいなものというか。エリー・ゴールディングのリバーブ感って今っぽいなとか、ポスト・マローンのリバーブ感ーー音数は少ないけど、リバーブで色々なものが構成されている感じとか、きれいだなっていうのがあって。そういうのは何となくイメージしていたんですよね。

ーーまた「Saturday Night Apollo」は、andropのなかでも新しいタイプのダンスミュージックですね。

内澤:4つ打ちではあるんですけど、BPMは速くないんですよね。98なので、100を切ってる。4つ打ちの主流では、130以上145くらいまでだと縦ノリで気持ちいいみたいのがあるんですけど。そういう縦ノリの気持ちよさじゃなくて、横ノリの気持ちよさっていうのをやりたいなと思っていて。

ーー逆にそのテンポを落としたところでグルーヴを生む難しさは、リズム隊としてはあるんですか。

前田:でも、もうこれは好きな感じなんですよ(笑)。

伊藤:それ言おうと思ってた。

佐藤:(笑)。結構前から、例えばフェスとかで、縦ノリの曲をやるいろんなアーティストがいるなかで、横ノリのかっこいい曲をそこで出せたらいいんじゃないかとは話していたんですよね。そんなのも、たくさん入ったアルバムになったんじゃないかなと思うし、ようやくそれができたのかなっていうのはありますね。

内澤:この曲はメンバーで演奏してもらって、より変わった部分もたくさんあって。グルーヴがすごく出たなと思っています。ベースのフレージングや動きも、グルーヴの要となっているし。ドラムのリズムも、この曲はすべてを通してシンバルが一個も鳴っていないんです。金物はハイハットだけで、そういうアプローチも、今だからできたんじゃないかなって。

伊藤:でもこっち的には、内澤くんのデモのクオリティがどんどん上がっているのを感じるんですよね。我々のフレージングだったりとか、“こいつはこういうのがきそうだな”っていうのを見込める経験が、内澤くんにも溜まっているし。なんか春先くらいに、機材を一新したらしいんですよ。

内澤:そうそう。

伊藤:それで、今っぽい音とか、打ち込みと生との良い塩梅がデモ段階からよりわかるようになっているし。プレイヤーがレコーディングするにあたって、想像しやすいデモで。デモの精度が高まってくれたので、むしろ、そんなに大変じゃないというか。天才だと思います。

ーー機材を一新したのは、自分のやりたいことをより明解にしようと。

内澤:前作『cocoon』の解放感からです(笑)。ただ基のエンジン的な部分(PC)を変えることって、結構勇気がいることで、時間もかかるし、もし何かトラブルがあったときに次の作業ができなくなる可能性があるので、なかなかそこを変えられずに数年経っていたんです。

佐藤:いつも買うだけ買って、置いたまま開けないらしいです。

前田:で、最新のが出るとまた買うんですよ(笑)。

内澤:なかなか変える時間がなくて。でも変えてみたら、最新の機材はこれだけ音がいいのか! って。“この音だったらどうだろう”というところから曲ができていくのがあるんですよね。今回は特に、今までよりもデモの段階の音をそのまま使っているのも多いです。

ーーいい効果があったようですね。そしてその後に作られていった曲が「Blanco」や「Home」ですね。この辺りは、シンプルでとてもいい曲。

内澤:「Blanco」はもともと今回のリードトラックを作っていこうとスタートした曲でしたね。

ーーこの曲は、最後にシンガロングが入っていて。今までだったら、高揚感のある、拳を突き上げるようなシンガロングだったのが、また違ったタイプの大合唱が起こりそうな感じの曲ですね。

内澤:シンガロングというよりは、僕のイメージでは教会とかで歌うクワイアのような、聖歌隊のようなイメージがあって。それも、「Hikari」で描いた希望や死生観を、もう少し深く掘り下げたものを曲にしたいなと思っていたんです。「Hikari」を作るに当たって、小児病棟の取材をさせてもらったんですけど。その取材先での霊安室の光景が、僕の中ではクワイアに繋がっていて。僕が見た霊安室は、暗いところではなくて、いちばん天国に近いところで子供たちを見送ってあげたいという想いでの設計でステンドグラスがあって、光が差し込んでいて、温かい雰囲気が心に残っていて。そういった想いを、曲にしたいなというのがあったんです。なので、今までのシンガロングの感じとは、また意味合いとか、表現の仕方が違いました。

ーーこうした淡々としたポエトリーな曲はこれまであまりなかったですよね。

内澤:この曲は、何かのタイアップでもなかったので。サビまでの時間も、やろうと思えばいくらでもできるし、サビなんてなくてもいいかもしれない、くらいの状況でもあったので。死生観や、普遍的な愛、そういったものを強く表現できればいいという、それだけだったんですよね。基本的に、今回の作品は長い曲が多いし。よりパッションで作っている部分が多いような気がしていますね。

■「僕にとっての“帰る場所”はバンド」(内澤)
ーー最後の曲で、リードトラックとなった「Home」も、そういった感情の流れに従っているなと思います。作品全体としても自由な発想で作られているし、モード的にもそれができたんですかね。

内澤:10周年を迎えるという想いだったりとか、ライブハウスツアーを回っていたので、ライブに来てくれている人の顔をすぐに思い浮かべることができたのは大きかったですね。自分たちの音楽を聴いてくれる人に対して届けるもの、というか。自分たちの日常的なものが届いてほしいなというのはありました。「Home」という曲は、アルバムの曲がある程度で揃ったところで、何が一番強く伝えられるものなのかというのを考えていたときに、デビュー10周年というのがあって。ここまで続けてこられたのも、曲を聴いてくれる人や、この間のライブハウスツアーでも、チケットを買って来てくれる人がいなければ、自分たちはここまでできなかったと痛感しながらやっていたので。自分たちの曲が、聴いてくれる人にとっての帰る場所、よりどころになってほしいという想いがあったんですよね。

ーー「Home」はMVを内澤さんの故郷の青森県八戸で撮っているんですよね。

内澤:そうです。11月4日に曲ができて。5日にはバンドメンバーで撮って、6日に僕と監督とで八戸に行って撮ったんです。その6日の時に、ほぼ全部の歌詞を作っているので、全部ができたのは地元だったんです。監督が色々なシーンを撮ってる間に歌詞を作っていたのもあって。思うことはいろいろありましたね。八戸で自分の生まれた故郷の空気を吸って、今までの10年のことを考えたり。僕にとっての帰る場所はバンドなので、バンドのことを思ったりもして。色々な想いを歌詞に入れることができました。

ーー10年という時をバンドで迎えて、そこで見る故郷の景色はまた違いそうですね。

内澤:自分にとっての当たり前が、他人にとっては当たり前じゃないんだなというのを、改めて知る感覚もありましたね。八戸では、夕方になるとイカ釣り漁船が海に出ていくんです。僕にとっての海はそういうイメージだったし、当たり前の光景だったんですけど。MVの監督が、“これはなかなか見たことがない”ってカメラを回したりしていて。そういうのって、僕だけじゃなくてきっとメンバーそれぞれにもあるし、曲を聴いてくれる人それぞれにも自分だけの大切なものっていうのが多分あって。そういうことにリンクする曲が作りたいなと思っていました。

ーー歌詞にある〈僕らは混ざりあえないから きっと分かり合えるんだ〉というフレーズがものすごく刺さるなと思っていたんです。よく、人は分かり合える、みたいなことって前提になりがちですが、違うからこそわかり合えるものがあるというのは、なるほどという思いでしたね。

内澤:他人同士だったり、家族ですらも、1つにはなれないというか。だからこそ、わかり合うことができるんだろうなと思っているんですよね。分かり合えるというか、許しあえるというのかな。とくに昔なんて、僕は誰のことも信じてなかったし、1人で生きているみたいな雰囲気だったけど。よくよく考えると、1人で生きることなんて無理で。色々な人間との絡み合い、助け合いのようなもので生きているので。

ーーこの『daily』をリリースして、いよいよデビュー10周年イヤーに突入します。この10年での心境的な変化、節目と感じるようなことはありますか。

佐藤:心境はずっと変化していますよね。昔のことを思い返すと、あの時考えていたことは違ったなって思うこともたくさんありますし。今が完璧だってことではまったくなくて、毎年ここが分岐点だとか、アップデートされていく感覚があるので。この間終わったライブハウスツアーも、本当に大きなものになるなというのはあったし、すごく色々な気づきがあったいいツアーで。

内澤:今年になって、ホールツアーとライブハウスツアーという両極端なものをできたのも、バンドにとって大きかったと思います。イメージしていたバンド像のひとつでもあるので。今後もそういうのは続けていきたいなと思います。

伊藤:僕は、内澤君がよく頑張って、たくさん曲を作ったなと改めて思いますよね。これだけ歌詞をたくさん書き、曲をたくさん書き、アレンジをやり、なぜやめないんだろうなと。

ーー(笑)。

伊藤:10年間変わらず、演奏面でチャレンジさせてもらっているし、更新する思いを味わわせてもらっているバンドなので。10年もやっていると、僕が思うに、“またこんな感じのことをやっているのか”とかもあるというか。それが飽きずに、10年間できているのは、本当にありがたいなと思うし。自分自身を更新させることで、バンドを良くしたいと思えるので。

前田:10年というのは1つのお祭りじゃないですけど、きっかけみたいなところなので。今まで応援してくれた人に感謝の気持ちを伝えられるような年になればいいなと思うんです。振り返るというよりは、そういうことをしていきたいですね。

佐藤:まだこれから色々な企画が発表になっていくと思うんですけど、せっかく10周年なので、こういう機会でないとできないことを、臆せずにやってみようというところです。

(取材・文=吉羽さおり/写真=三橋優美子)

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