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いま、最高の一本に出会える

年末企画:小野寺系の「2018年 年間ベスト映画TOP10」 アメリカ映画が刺激的なものに

リアルサウンド

18/12/21(金) 12:00

 リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2018年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、アニメの4つのカテゴリーに加え、今年輝いた俳優・女優たちも紹介。映画の場合は2018年に日本で劇場公開された(Netflixオリジナル映画含む)洋邦の作品から、執筆者が独自の観点で10本をセレクト。第4回の選者は、映画評論家の小野寺系。

参考:ブラッド・バード監督が見せつけた“格の違い” 『インクレディブル・ファミリー』のすごさを解説

1. 『インクレディブル・ファミリー』
2. 『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』
3. 『オンリー・ザ・ブレイブ』
4. 『バスターのバラード』
5. 『スリー・ビルボード』
6. 『アンダー・ザ・シルバーレイク』
7. 『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』
8. 『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』
9. 『君の名前で僕を呼んで』
10. 『レディ・プレイヤー1』

 2018年に日本で公開された『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』、『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』、『ヘレディタリー/継承』、『アンダー・ザ・シルバーレイク』など、前年に続きアメリカの制作会社「A24」作品が好調だ。もちろんここで選出した作品のなかにも顔を出している。その多くが監督の持ち味が発揮された、通常なら通りにくいような企画ばかりである。アメリカの大手による大作傾向への反動もあり、作家性の強い作品がどんどん出てきている。

 それは、ここでランクインさせた『レディ・プレイヤー1』が象徴するように、近年よく映画のなかで引用されたり類似傾向を見せていた1980年代の状況を思い起こさせるような構図から、最近は、より作家主義的な90年代型へ移行してきていることを示していると感じ、個人的には歓迎したい流れだ。

 「A24」作品のなかでも突出していたのが『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』だった。貧富の格差がもたらした現在のアメリカの窮状、そして日本を含めた世界共通の悲劇を、カンヌ最高賞を受賞した『万引き家族』同様に描きつつ、それを「夢の国」と隣接させることで、より鮮烈で印象深いものとしている。

 同時に、2018年には大作にも個性的な作品が散見された。まず、天才監督ブラッド・バードによる久しぶりのアニメーション 『インクレディブル・ファミリー』は、かつてのハリウッド映画が持っていたスター俳優による優雅な雰囲気が再現されるとともに、ブラッド・バード監督個人のアニメーションに対する深い理解と演出の力によって、ともすれば安易になりがちな続編を黄金の映画へと変貌させた。そして同時に、娯楽作として観客を大いに沸かせたことも素晴らしい。2018年劇場公開作のなかでは、文句なくトップといえる内容である。

 『オンリー・ザ・ブレイブ』は、アメリカのマッチョな社会と、炎に包まれた地獄の世界を、ジョン・フォード監督の西部劇のように詩情豊かに表現し、『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』は、ヒッチコック映画などへのあらゆるオマージュを、移動撮影のなかで行う離れ技を披露し驚かせるなど、これら変わり種の目論見が、大作のなかでひそかに行われていることが頼もしい。

 Netflix映画からも、コーエン兄弟監督のシュールな作風が活かされた、おそろしい西部劇『バスターのバラード』や、アルフォンソ・キュアロン監督による極端な長回し技術にフェリーニ映画の要素を組み合わせたような『ROMA/ローマ』など、質の高い作品が生まれている。映画以外でも『アトランタ』、『ボージャック・ホースマン』、『FはFamilyのF』などの新シーズンも先進的で見逃せない。このように、見るべき作品が劇場以外からも供給されているというのが、最近の傾向だろう。おかげで、消化しきれない事態に陥っている映画ファンや評論家が多いのではないだろうか。

 巧みな脚本術で観客を翻弄する『スリー・ビルボード』、必要な材料のみで現在の社会問題をつまびらかにする職人技に感心させられる『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』、普遍的な表現による恋愛描写によって新しい時代の到来を告げる『君の名前で僕を呼んで』も選んだ。

 選外作品にも、あまりの衝撃で思わず席に荷物を忘れて帰ってしまった『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』、 「フィギュアスケートの『グッドフェローズ』(マフィア映画)」 と呼ばれた『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』、エイミー・シューマーのコメディ技術が活かされた、既存の価値観をぶち破る『アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニング』など、印象深い作品がある。

 このようにアメリカで多様性をテーマにした作品が作られるのは、政治や社会の保守化傾向の反動だと考えられる。そしてそれが、現在のアメリカ映画に先進性を与えていることは確かなのだ。映像配信時代の到来と、社会の重圧という二重の嵐によって、アメリカ映画が、いま世界でいちばん刺激的なものになっている。

 日本映画でも、閉塞的な社会を題材にした『万引き家族』、『ハード・コア』、『ギャングース』などの作品が出てきているものの、その数は圧倒的に少なく、比較的大人しい印象がある。日本はいま、面白い映画が撮れる題材が無尽蔵に転がっているはずなのだ。(小野寺系)

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