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A.B.C-Z 橋本良亮の演技力に目を奪われる 音楽劇『コインロッカー・ベイビーズ』で見せた可能性

リアルサウンド

18/8/2(木) 10:00

 「音が聴こえた/鼓動が聴こえた」。観劇し終わった後、しばらくこの歌のフレーズが離れない。A.B.C-Z・橋本良亮、河合郁人主演の音楽劇『コインロッカー・ベイビーズ』である。7月11日から上演スタートとなった同作品も、7月29日東京公演の千秋楽を迎えた。

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 『コインロッカー・ベイビーズ』は、村上龍の小説が原作となっている音楽劇だ。駅のコインロッカーに捨てられた子供、ハシとキク。2人は暴力性を制御できない問題児であったが、心臓の鼓動をもとにした音を使った治療によって改善。社会に適応しながら生きることができるようになる。しかし、その音の記憶が蘇ってしまった2人はバラバラになり、苦しみながらも世界を生き抜こうとしていく。

 音楽劇『コインロッカー・ベイビーズ』は昨年も橋本と河合によって上演され、大好評を得た。昨年は橋本が「ハシ」、河合が「キク」を演じたが、今年は公演日程の前半と後半でハシ役、キク役を入れ替えて演じるという試みが行なわれている。ハシはナイーブで繊細、気持ちが自分の内側に向いてしまうタイプ。一方ハシは破壊的な性格で、感情を外に爆発させるタイプ。二役を交換して演じるという試みを聞いた時は、正反対の役を演じ分けるのは非常に難しいのではないかと感じた。そこで、「橋本=キク、河合=ハシ」「橋本=ハシ、河合=キク」の両方を観劇してみたが、どちらもそれぞれの色が出ており、想像以上に面白い。特に、橋本の演技力の高さには驚きを隠せなかった。

 しかし、A.B.C-Zで最年少のメンバーであり一番最後に加入した橋本は、決して演技の経験が豊富とは言えない人物なのである。代表作と言えるのはドラマ『BAD BOYS J』(日本テレビ系)や『魔法☆男子チェリーズ』(テレビ東京ほか)、舞台『音楽劇「ルードウィヒ・B」 ~ベートーヴェン歓喜のうた~』、『DEATH TRAP / デストラップ』、『「蜜蜂と遠雷」リーディング・オーケストラコンサート ~コトダマの音楽会~』程度ではないだろうか。しかし、『コインロッカー・ベイビーズ』では、真逆のキャラクターであるハシとキクを見事に演じ分けており、目を奪われざるを得なかったのだ。

 キク役の時は、斜に構えたクールなキャラを再現。例えば、アネモネ(山下リオ)に拳銃をどこに隠したか問い詰めるシーンでは、一瞬にして凶暴性を顕にし、爆発的な怒りを見せた。また、ハシを思って刑務所の中で苦しむシーンは、キクの中に生じた「悲しみ」という感情を表現するために非常に切ない言い方でセリフを述べ、持ち前の歌唱力で絶望という感情を歌に乗せていた。観る人にキクの感情を投げつけているような印象である。

 一方、ハシ役。これは去年から変わらず素晴らしかったのだが、なんと言っても後半に向けて徐々に狂っていく様が秀逸だ。目の焦点もどこか合っておらず、力なくぽつりぽつりと話すセリフの奥には狂気が見える。中でも印象的なのは、キクに面会に行くシーン。「手首を外せるようになった。ほら、ほら、ほら」と訳の分からないことを言って客席をうろついたかと思えば、「キクはお母さんを殺したからあの音が聞けたんだよね。なら僕はニヴァ(ハシの妻)を殺さなきゃいけない」と無邪気な子供のようにはしゃぎ出す。観客はハシの感情の渦に巻き込まれていくようなイメージだ。

 キク役にせよ、ハシ役にせよ、橋本は感情の出し方が上手い。メインボーカルとしてグループを引っ張っている橋本だからこそ、歌だけでなく演技の表現力も磨かれてきたのだろう。A.B.C-Zといえば、ジャニーズきっての肉体派。どうしてもアクロバットに目が行きがちだ。だが、橋本の演技を目の当たりにした今、ぜひドラマや映画でも積極的に演技を披露してほしいと思う。「橋本良亮」という人物は、まだ世の中に気付かれていない次世代のジャニーズ俳優となる可能性を持っているのではないだろうか。(高橋梓)

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