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山田孝之&菅田将暉主演ドラマ『dele』高評価の理由に“秀逸な劇伴”あり 野心的な音楽面に注目

リアルサウンド

18/10/15(月) 8:00

 熱心な音楽ファンと言えども、映画のサウンドトラック……ならまだしも、日本のドラマのサウンドトラックまでチェックしているという人は、それほどいないのではないだろうか。そんな方に是非一度、聴いてみてもらいたいのが、10月17日に発売される『テレビ朝日系金曜ナイトドラマ「dele」オリジナル・サウンドトラック』だ。

(関連:『逃げ恥』『リゼロ』手掛けた音楽作家・末廣健一郎が明かす『少女終末旅行』劇伴に込めた工夫

 今年の7月クールに、テレビ朝日系列で放送されたドラマ『dele(ディーリー)』(全8話)。山田孝之と菅田将暉という人気俳優がダブル主演を務めることはもとより、「デジタル遺品の抹消」という目新しいテーマ性、そしてベストセラー作家・本多孝好の原案をもとに、金城一紀ら複数の脚本家が競作するという異例のスタイルなど、その随所に作り手側の確かな気合いが感じられる秀逸なドラマとして、「前クールで最も面白かったドラマ」に挙げられるほど、多くの人の支持と評価を得た一本だ。

 そして、そんな『dele』を高く評価する人々が口を揃えて言うのは、その“音楽”……いわゆる“劇伴”の秀逸さだった。人気アーティストによる“主題歌”や“エンディングテーマ”を用いず、“クリエイティブファースト”の方針のもと、そのすべてを劇伴担当者の音楽によって彩るという野心的な試みにトライしていた本作。その音楽担当に抜擢されたのが、劇伴作家として近年注目を集めている岩崎太整と、稀代のビートメイカーとして知られるDJ MITSU THE BEATSという異色の2人だった。

 映画『SR サイタマノラッパー』シリーズやドラマ&映画版『モテキ』をはじめ、 ドラマ『スニッファー 嗅覚捜査官』、アニメ『ひそねとまそたん』、そして先頃話題になった渡辺あや脚本のドラマ『ワンダーウォール~京都発地域ドラマ~』など、いまや「名作の影に彼の音楽あり」と、まことしやかに言われている気鋭の劇伴作家、岩崎太整。そして、仙台を拠点とするヒップホップグループ・GAGLEのメンバーであり、現在はソロをはじめ、国内外から一目置かれるビートメイカーとして、数多くのアーティストのリミックスなども手掛けるDJ MITSU THE BEATS。今回が初タッグとなる2人は、『dele』のために、果たしてどんな音楽を生み出したのだろうか。

 黒地に“dele”の文字が浮かび上がり、そこにオプティカルなイメージがオーバーラップする、『dele』の印象的なタイトルバック。その背後で毎回流れていたタイトルテーマ「Lost Memory」は、ある意味今回のタッグの、そして『dele』の音楽世界を象徴する一曲と言えるだろう。DJ MITSU THE BEATSが生み出すクールなビートに乗せて、弦楽四重奏がスリリングにメロディを奏で、そこにさらに岩崎自身の手によるピアノが重ねられるという、実に独特な風合いを持ったこの曲。それは、“デジタル”を扱いながらも、その背後に生々しい“アナログ”な人間模様が交錯する『dele』の世界を、まさしく体現するような一曲だった。

 そんな「Lost Memory」を筆頭に、主に岩崎がピアノやフェンダーローズといった鍵盤類を、DJ MITSU THE BEATSがプログラミングを担当しながら、双方のプロデュースのもと、要所要所に生楽器を交えて奏でられる、クールでジャジーなトラックたち。『dele』は、毎回異なる“依頼人”と、その人物にまつわる一話完結の物語形式を取っていたため、各話で登場するゲストも注目を集めていたけれど、そのゲストのなかには、般若(第1話)、コムアイ(第2話)、野田洋次郎(第4話)、渡辺大知(第5話)、Mummy-D(第7話)など、ミュージシャンも数多く混ざっていた。

 そのなかでも、コムアイが“依頼人”として登場した第2話は、彼女が仲間たちと組んでいた(という設定の)謎のバンド・The Mintsが登場するなど、他の回にも増して音楽の印象が強いエピソードとなっていた。山田孝之演じる主人公・ケイも、実はそのファンだったという劇中バンド・The Mints。「都会的な雰囲気とジャジーなサウンドが持ち味のガールズバンド」である、そんなThe Mintsの代表曲として劇中で流れていた「Pretend」(作曲は岩崎)も、唯一のボーカルトラックとして本作には収録されている。リードボーカル=コムアイ、バッキングコーラス=石橋静河という、ここでしかあり得ない組み合わせの“歌”を堪能することができる同曲。そのクレジットを見ると、実際の音源で彼女たちのバックを務めていたのは、先頃リリースしたソロアルバムも好評なmabanuaが所属するバンド・Ovallの面々だった。

 先ほど「要所要所に生楽器を交えて」と書いたけれど、ストリングスのプレイヤーの他、バンドセットの楽曲にはOvallの面々が参加しているところが、実はこのサウンドトラックの聴きどころのひとつでもあるのだ。それ以外にも、菊地成孔のバンドなどにも参加しているジャズ・トランぺッター類家心平など、各曲のクレジットを眺めるだけでも、その参加ミュージシャンの豪華さに、改めて驚かされる本作。岩崎太整とDJ MITSU THE BEATSという明確なイメージを共にする2人のコンダクターのもとに集まった、名うてのプレイヤーたちーーそう、これはただのサウンドトラックではないのだ。

 いわゆる“探偵もの”のようなハードボイルドの雰囲気と、「デジタル遺品の抹消」という職業柄、“死”と向き合うことも多い静謐な空気感――その2つをあわせ持った『dele』というドラマの世界。もともと大学で脚本を学んでいたという異色のキャリアの持ち主であり、常日頃から「映像と合わさることによって、最大限の効果を生む音楽を作る」と公言している岩崎だけに、今回のサウンドトラックもまた、その基調となっているのは、『dele』というドラマそのもののトーンであり、その音楽は『dele』の世界を織りなす上で欠くことのできない重要なピースとなっている。けれども結果的に、通常のサウンドトラック以上に、聴く者すべてのイメージを大いに喚起させる、実にビジョナリーな一枚になっているようにも思える。ここに収録された23曲が、ドラマ本編の、どのシーンで、どのように流れていたのかを、あれこれ思い出す楽しみも、もちろんあるだろう。けれども、そんな「答え合わせ」だけに終わらない――むしろ、本作を聴くことによって、ドラマを未見の人ですら、そのイメージを大いに膨らませ、その世界に没入できるような音楽。そんな、これまでありそうで無かった実に野心的な音楽が、ここで雄弁に鳴っている。(麦倉正樹)

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