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鳥居咲子が選ぶ、2018年韓国ヒップホップ年間ベスト10 フレッシュな面々が大活躍した一年

リアルサウンド

18/12/28(金) 15:00

 

1.JUSTHIS & Paloalto『4 the Youth』
2.The Quiett『glow forever』
3.Hwaji『WASD』
4.XXX『LANGUAGE』
5Kid Milli『AI, THE PLAYLIST』
6:JaeDal『Period』
7:Samuel Seo『UNITY』
8:Ja Mezz『GOØDevil』
9:Bassagong『Tang-A』
10:Indigo Music『IM』

 韓国のヒップホップは比較的歴史が浅い。いわゆる「第一世代」と呼ばれるラッパーたちは2000年前後に活動を開始した人たちだ。そこからゆっくりと発展を重ねる中、次々に新人が登場しながらも常にシーンの中心に立っていたのは上の世代のラッパーたちだった。しかし2015年頃から世代交代が激化。若くてフレッシュな感性を持つ新人たちが頭角をあらわす一方、ベテラン勢の明暗は大きく分かれていった。

 その傾向は2018年も続いた。まさにそれを体現したのが今回1位に選出した『4 the Youth』だ。若手No.1のスキルを誇るJUSTHIS、そして15年ものキャリアを有するPaloaltoという2人のラッパーによるコラボ作である。新旧の感性が合体したこのアルバムは、ヘヴィーなビートから社会的なリリック、ソフトなチューンまでスタイルも実に多彩。曲ごとのイメージに合わせたフィーチャリング起用のセンスも抜群で、全22曲というボリュームながら最後まで飽きることなく楽しめる。JUSTHISは最近引退の意思を表明したばかりだが、そうやすやすと引き下がる男ではないはず。また何か次のネタを仕掛けてくることに期待したい。

 JUSTHISは10位の『IM』にも参加している。個性豊かな5名の新鋭ラッパーで構成されたレーベル・Indigo Musicのコンピレーションアルバムだ。レーベルの社長を務めるラッパーのSwingsを合わせた計6名によって制作された。スタイリッシュで革新的なサウンドが盛りだくさんで、2018年の韓国ヒップホップシーンの最先端を走り抜けた1枚だ。コンピレーションという性質上ここでは10位に配置したが、人気や勢いからすれば1位に選出しても違和感はない。ちなみに5位のKid Milliも同レーベルの所属。彼の持つ先鋭的なセンスやカリスマ性あってこそのIndigo Musicだとも言える。今後もシーン全体を牽引していく存在となるだろう。

 このように若手の勢いが天井知らずの中、PaloaltoやSwings同様に新人と積極的に絡んだThe Quiettにも注目したい。十指に余る若手をフィーチャリングに迎えた『glow forever』は、ラッパーであると同時にプロデューサーとしても高い能力を持つ彼の力量が100%感じられる作品だ。今でこそIllionaire RecordsのCEOとしてタフなイメージが定着している彼も、2000年代はジャジーなビートで人気を集めていた。本作はそんな彼の源泉とも言えるメロウで甘美なサウンドが満載だ。

 以上のように、2018年はベテランとのコラボレーションを含め、上述のIndigo Music、Jay Park率いるH1GHR MUSIC、アメリカから逆輸入されたMKIT RAINなどフレッシュな面々が大活躍した一年であった。トレンドが明確に形成されており、売れるサウンドは似通っている。ラップスタイルもシンギングラップ一辺倒といったところだ。その一方、独自の音楽性や世界観を追求した作品が多く出た年でもあった。むしろトレンドがはっきりしているからこそ、オリジナリティのある作品が引き立てられたと言える。

 例えば2016年デビューのヒップホップデュオ・XXXは、1stアルバム『LANGUAGE』で鋭い電子音を炸裂させて唯一無二の個性を表した。どう変化していくのか予測のつかない変則的なビートに、キレの良い攻撃的なラップが重なり、聴いているこちらのテンションも高揚してくる。米ビルボードやニューヨーク・タイムズで取り上げられるなど国外からも大きく注目された。

 JaeDalの『Period』とSamuel Seoの『UNITY』もサウンド面で他にはないオリジナリティを発揮。どちらも生楽器による臨場感を見せ、一般的なヒップホップとは距離を置いたアコースティックサウンド、ジャズ、ファンク、オルタナティブロックなどで勝負し、音楽的なクオリティの高さを追求した。キャッチーさには欠けるが芸術性は際立って高く、ひとことで言うと玄人受けする作品だ。

 Hwajiの『WASD』とBassagongの『Tang-A』はサウンドに真新しさこそないものの、トレンドに流されず自分らしいスタイルを貫く姿勢が気持ちいい。特にBessagongは音を聴けば一発で誰か分かるほど明確な個性を持っている。Hwajiはラップスキル、リリック、サウンドのすべてにおいて完成度がずば抜けて高く、総合的な評価として3位に選出した。

 コンセプトや世界観にとことんこだわったJa Mezzの1stアルバム『GOØDevil』も必聴だ。タイトルは「God(神)」と「Devil(悪魔)」そして「Good(善)」と「Evil(悪)」を組み合わせた造語で、相反するテーマを交錯させながらそれらの共存や役割について探っていく。Ja Mezzは先般SALUとのコラボ曲「Pink is the New Black」を発表して日本市場にも進出。今後の活躍に期待がかかる。

■鳥居咲子
韓国ヒップホップ・キュレーター。ライブ主催、記事執筆、メディア出演、楽曲リリースのコーディネートなど韓国ヒップホップにおいて多方面に活躍中。著書に『ヒップホップコリア』。
運営サイト「BLOOMINT MUSIC」/ Twitter

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