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『BLEACH』は弱腰の実写界隈に一石を投じる作品に 『GANTZ』に共通する佐藤信介監督の演出

リアルサウンド

18/7/28(土) 10:00

 一時はハリウッドで実写化されるという話も進んでいた久保帯人の『BLEACH』が、日本で実写映画化され、しかもそのVFX処理には実に1年半もの時間が費やされた。昨年の年末に、同じようにVFXに1年近くの時間をかけた『鋼の錬金術師』がかのような出来栄えとなってしまったことや、近年の人気少年漫画の実写映画化全体の流れを踏まえると、そのハードルは下がるどころか「実写映画化」という大きなイベント自体が落胆の声で迎え入れられてしまうのは致し方あるまい。

 しかし思い返してみれば、大ヒット漫画の実写映画化でも数少ない成功例と言える『るろうに剣心』シリーズもワーナー資本であり、俳優が生身でアクションに挑むという点も共通している。さらに『GANTZ』2部作と『いぬやしき』で演出力と映像技術の精度の高さが保証済みの佐藤信介監督のメガホンに、福士蒼汰や早乙女太一といった身体能力の高い俳優たち。それだけでも、近年の少年漫画の実写化とは似て非なる作品となることが確約されたと言ってもいいのではないだろうか。

 本作で描かれるのは、主人公の黒崎一護が朽木ルキアと出会い、死神の力を譲り受け、<虚>と呼ばれる敵を倒すためにトレーニングを重ねる「死神代行篇」。いくつものエピソードを抱える原作の、導入にもあたるこのエピソードを実写化する上で、最も大きな鍵となるのは、作品の根幹でもある<虚>の描き方ではないだろうか。死んだ人間の魂を喰らい、悪霊となって襲い来るこの<虚>の描き方こそが、本作におけるVFX的見せ場のひとつと言ってもいい。

 もっとも、日本映画のVFX技術は年々進歩を遂げているとはいえ、やはりハリウッド大作のそれと比べると多少の見劣りしてしまうことは否めない。それは、前述した『鋼の錬金術師』であったり、同じく昨年公開された『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』のように、作品の世界観に近いという雰囲気で選ばれたロケーションの中で、設定に合理性を与えるために施されるVFXが多用されてきたからに他ならない。

 しかし例えば2005年に大ヒットを記録した『ALWAYS 三丁目の夕日』のように作品の世界をまるっとVFXで作ってしまったり、はたまた『シン・ゴジラ』のようにリアルな実景とリアルな人間たちの中に混入してくる“異質”なものを作り出し、あくまでも“異質”なものとして画面に映し続けるときには、それが“作り物”だという先入観を飛び越え娯楽性を生み出すだけの、映画としてのパワーが生じる。

 決して画面になじませようとせず、“何か変なもの”が画面の大部分を占める恐怖。何の変哲も無い夜の住宅街で突如として現れたり、巨大なオープンセットで築き上げられたこじんまりとした駅前のバスロータリーの中央で暴れまわり、さらには住宅街の公園でのストレンジな出で立ち、林道や河川敷で少女の背後からぐわんと現れていく様。まさに佐藤監督が『GANTZ』で行ったのと同じ方法論だ。マンションの一室に鎮座した黒い球体であったり、夜の街に突如として現れる“星人”たちのように、物語の設定上説明はされておきながらも、現実では容易に受け入れることのできない“異質”なものを、ヴィジュアルの強さでねじ伏せる。

 原作が「漫画」であるという強みを活かしながら、観客に媚びることなく作り手の見せたいものを見せたいように見せる。その堂々とした姿勢もまた、作られるたびにどんどん弱腰になっていく日本の漫画実写映画化界隈に、一石を投じる作品となったことを証明していると感じずにはいられない。ところで、最後の最後でタイトルに「死神代行篇」の文字が重なるということは、興行次第では「尸魂界篇」も視野に入れられているのだろうか。もしそうならば、とんでもない作品が観られるかもしれない。

■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■公開情報
『BLEACH』
全国公開中
出演:福士蒼汰、杉咲花、吉沢亮、真野恵里菜、小柳友、田辺誠一、早乙女太一、MIYAVI、長澤まさみ、江口洋介
監督:佐藤信介
脚本:羽原大介、佐藤信介
音楽:やまだ豊 
原作:『BLEACH』久保帯人(集英社ジャンプ コミックス刊 )
主題歌:[ALEXANDROS] 「Mosquito Bite」(UNIVERSAL J / RX-RECORDS)
製作:映画「BLEACH」製作委員会
制作プロダクション:シネバザール 
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)久保帯人/集英社 (c)2018 映画「BLEACH」製作委員会
公式サイト: bleach-movie.jp

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