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いま、最高の一本に出会える

上田慎一郎監督

『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督。新作はVR映画に挑戦!

ぴあ

18/7/13(金) 17:16

これまで発表した監督作品が、国内外の映画祭で40以上の受賞を果たしている上田慎一郎監督。現在、『カメラを止めるな!』も大きな話題を呼ぶ彼だが、早くも到着した新作ではVR(仮想現実)映画に取り組んでいる。

今回発表したVR映画『ブルーサーマルVR-はじまりの空-』は、ティーンを中心に人気の漫画『ブルーサーマル-青凪大学体育会航空部-』が原作。埼玉県VR映像開発推進事業の一環であるこの企画に参加することになった。これまでオリジナル脚本でずっとやってきましたけど、原作ものという点もチャンスがあったらと思ってましたし、VRに興味がなかったわけではない。まず、自分にとって初物尽くし。これはやりがいがあるなと。また、それをふだんやっている映画にもフィードバックできるんじゃないかなと思ったんです」

ただ、それまでVRはまったく見たことがなかった。「お話しをいただいて、すぐにVRの見られるネット・カフェを探し出して、まずはどんなものなのか体験しにいきました。そこで体験して、漠然とですけど一般的な映画と違うところもあれば、同じところもありました。その後、VR作品をいくつも手掛けられている制作会社の方からもいろいろとお話しをお聞きしたんですけど、そこでいつもとは少しばかり勝手が違うことに気づきました」

自分のしでかしたミスから大学の航空部で雑用係をすることになった“私”がエンジンもプロペラもなく、風と翼のみで飛ぶ“グライダー”で初フライトを体験するまでが描かれる本作だが、具体的にはまず脚本を大きく変えたという。「映画と同じのりでまず脚本を書き上げたんですけど、これは違うなと(笑)。当初は主人公のたまきが、作品を観る側の人間の目線になってくれる気がしたんです。でも、それだとVRのひとつの醍醐味である作品への没入感が出てこない。ですから、登場するたまきと、航空部の潤と大介と同じように、見てくれている方もキャストのひとりになってもらう。そういう設定が必要だなと。見ている方もその場に居合わせているような感覚になってもらう。見る側もキャストのひとりになるような、たとえば潤が話しかけてきたりとかいったりする形にする方がおもしろくなると思いました」

確かに監督の言葉通り、作品を観ていると一方通行ではない感覚になる。「もちろん通常の映画でも、主人公の気持ちに入って、あたかも自分もスクリーンの中に入ってしまうような感覚になるときがあると思います。でも、VRの場合、それがより顕著になるというか。前提として自分も登場人物のひとりになれる。自分も作品を構成するひとつになれるのはVRならではかもしれません」

VRの大きな特徴として視点を動かせば360度、まわりの光景が見えることもある。ただ、これはさほど気にしなかったという。「基本的には目の前で起きている事象に目がいくと思うので、さほど気にしませんでした。目の前で起きていることをあえてみないでわざわざたとえば真後ろを見るのは、それこそVRのマニアックなファンかなと(笑)。だからといって、目の前以外の映像をないがしろにしたわけではないです。裏を返せば、通常の映画よりもカメラを大きく振れるわけですから、見てくださる方に能動的に目を動かしてもらうような左右へふるシーンを使うことで自分もそこにほんとうに立っているような感覚になればなと。あと大事にしたのはライブ感。これはいつもの映画と同じだけれど、その場限りの瞬間になってほしくて、わりと段取りとかに縛られないで自由にアドリブとかいれてやってもらいました。基本的にフレームアウトもしないので、逃げるシーンとかも通常ならこの範囲でとなるんですけど、好きなようにやってみてと(笑)」

一方で、難しかった点をこう明かす。「VRは基本的にワンシーンワンカット。カット割りができないのにはちょっと悩みました。あくまで僕の考え方ですけど、VRにおいては見ている側の視点の切り替わりがカット割りになる。だから、その視点をどう誘導していくかが重要。たとえば、向こう側で何かが起きているところから、手前の人物の話していることに視点を移したいと作り手として考えたとします。でも、VRの場合、しかるべき演出をしないと向こう側に見ている人の視点が釘付けになったままになってしまう。通常の映画だと人物にフォーカスが当たると、背景はぼやけますけど、VRはすべてにピンが常にあってしまうので余計にそうなるリスクがある。その点はかなり配慮しましたね」

作品は、今年のカンヌ国際映画祭の併設マーケット「Marche du Flim」にも出展。反応は悪くなかったそうだ。「僕の作品とほかの日本の2作品と合わせての上映だったんですけど、満席になりました。実は、前の外国の組では観客が2〜3人しかいない界とかもあって、内心、「誰も見に来ないのでは?」と心配していたんですよ(苦笑)。日本のVRに興味をもってくださっている方がことのほか多かったですね。反応も上々で、たまたまですけど、近くのカフェにいったら、見てくださった方に声をかけられて、一杯お茶をごちそうになってしまいました(笑)」

最後に今回の公開についてこう言葉を寄せる。「VRってどんなものかを言葉にするのはすごく難しいんですけど。僕の中では、疑似体験というのが1番しっくりくる。仮想の世界を疑似体験できる。この作品の最大の疑似体験はやはり“グライダー”。風と翼のみで空を飛ぶ“グライダー”のフライトを体感していただければと思います」

なお、公開に先駆け、7月14、15日に“SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2018”での上映も決定。いち早く体験したい人はこちらをチェックだ。

『ブルーサーマルVR-はじまりの空-』
公開中
※全国のVR THEATERでも視聴可能

取材・文・写真:水上賢治

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