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アリアナ・グランデ、ソランジュ、ケラーニ……高橋芳朗が選ぶ、女性R&Bシンガーの新譜4選

リアルサウンド

19/4/7(日) 8:00

 今回は女性R&Bシンガーの注目タイトルを4作ほど。

(関連:高橋芳朗が選ぶ、注目の女性SSW作品7タイトル

・アリアナ・グランデ『thank u, next』
 まずは「thank u, next」のヒットによって完全にポップクイーンの座を手中に収めたアリアナ・グランデの『thank u, next』。ビートルズが1964年に達成して以来となる全米シングルチャート上位3位独占など派手な話題に事欠かないが、この新作自体はかつての交際相手で昨年9月に他界したラッパー、マック・ミラーの面影が随所でちらつく内省的な内容。自らの精神世界に正面から向き合った結果ゆえなのか、彼女にとってゲストアーティストがいない初めてのアルバムになった。「現実を受け入れた『thank u, next』に対してこれは現実を受け入れられないことを歌った曲」と説明していた冒頭の「imagine」(タイトルはマックの右腕のタトゥーにちなんだものと思われる)以下、自身の不安定な精神状態を赤裸々に打ち明ける「needy」、自暴自棄になって後腐れのない恋愛に興じる「bloodline」、新しい恋人がいながらも亡くなったマックの幻影に悩まされる「ghostin」など、悲痛な歌詞も少なくないが、クライマックスに配置された2曲のエンパワーメントソングーー「7 rings」と「thank u, next」ーーのメッセージは単体で聴くよりもぐっと強く響く。挑発的な「break up with yourgirlfriend, I’m bored」で締めくくる、不敵なクロージングがまた意味深。

・ソランジュ『When I Get Home』
 続いて、すでに各方面で高い評価を獲得しているソランジュの『When I Get Home』。スティーヴィー・ワンダー『The Secret Life of Plants』をはじめ、スティーヴ・ライヒ、アリス・コルトレーン、サン・ラなどにインスピレーションを得たという実験的/前衛的なサウンドデザイン、そしてインタールード6曲を含む全19曲がシームレスにつながったパッチワーク的構成もあって核心を捉えにくいところがあるが、かといってとっつきにくさはまったくなく、凛とした気品と美しさ、柔和で官能的なメロウネス、それらが一体となった圧倒的な陶酔感に惹かれて、ついつい繰り返し再生してしまう不思議な魅力がある。ソランジュはアルバムのリリースの前日と当日、自身のInstagramでデヴィン・ザ・デュードとマイク・ジョーンズへのリスペクトを表明していたが、この壮大な音のコラージュは故郷ヒューストンのシグネチャーサウンド=チョップド&スクリュードの美意識に則った彼女流の新しいブラックエクセレンスの結晶と受け止めたい。Apple Musicで見ることのできる33分のショートフィルムと併せての体験をおすすめする。

・ケラーニ『While We Wait』
 昨年5月の来日公演も好評、去る3月25日には無事第一子となる女の子を出産したケラーニのミックステープ『While We Wait』。「待っているあいだ」というタイトルはこのプロジェクトが出産を目前に控えたなかで進められたこと、そしてこれが『SweetSexySavage』に続く新しいアルバムのプロローグであることを意味している。全9曲31分とコンパクトながら、ヒット・ボーイやボーイ・ワンダーのプロダクションを含む内容はなかなかに濃密。白眉はワーレン・フェルダー制作の「Morning Glory」で、これはもともとTLC「Waterfalls」をサンプリング使用していたもののクリアランスが間に合わずやむなくトラックを差し替えたとのこと。それでも、定番ブレイクビーツ「Impeach the President」を用いたケラーニの面目躍如といえる見事なTLC/90年代R&Bのオマージュに仕上がっている。オマリオン「Ice Box」の引用に加え、敬愛するミュージック・ソウルチャイルド(2015年のミックステープ『You Should Be Here』収録の「Down for You」で彼の「Just Friends (Sunny)」をサンプリングした過去がある)とのコラボが実現したオープニングの「Footsteps」も熱心なR&Bリスナーにはぐっとくるものがあるだろう。出産に臨む彼女の精神状態が反映されたのか、全編を包むいつになく穏やかなトーンが心地よい。

・Lion Babe『Cosmic Wind』
 最後はモデルとしても活躍する女性シンガーのジリアン・ハーヴィとプロデューサーのアストロ・ロウからなるLion Babeの2ndアルバム『Cosmic Wind』。今回はインタースコープから離れてインディペンデントでのリリース。ファレル・ウィリアムスの関与はないが、引き続きアストロ・ロウがメインで制作を担っている。そのため、チャカ・カーンやベティ・デイヴィスも引き合いに出されたデビューアルバム『Begin』の艶やかなブラックネスはまったく損なわれていない。ジリアンの持ち味が存分に発揮されたグラマラスなブギーファンク「The Wave」を筆頭に、グラウンドビート調の「Hit the Ceiling」、Lion Babe流トラップ「Reminisce」、Disclosureとのコラボ「Hourglass」の続編的内容のトライバルなハウス「Sexy Please」、60’sソウルへの真摯なオマージュ「So Long」など、実に多彩な内容。サビでPet Shop Boys「West End Girls」を引用したうえレイクォンのラップをフィーチャーするという「Western World」の雑多さも良いアクセントになっている。ジリアンが標榜する「Futuristic Nostalgia」を地で行く全15曲だ。(高橋芳朗)

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