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桐谷健太演じる世良、さすがの商魂を発揮! 『まんぷく』ビジネスの本質を描いた第11週

リアルサウンド

18/12/16(日) 6:00

 会社の人間の細かな心情を察するのが、やはり福子(安藤サクラ)は上手い。例えば、従業員の間で不協和音が流れたときにも、萬平(長谷川博己)に助言を施して、みんながまとまるようなマネジメント能力を発揮してきた。研究熱心な萬平に足りないところを補う。まさに福子と萬平の“二人三脚”である。

参考:『まんぷく』第67話では、菅田将暉が登場! 萬平(長谷川博己)は実刑判決を受ける

 ほかにも、鈴(松坂慶子)、真一(大谷亮平)、神部(瀬戸康史)、タカ(岸井ゆきの)等々。それぞれの持ち味を存分に発揮して活躍しているのだが、ことマーケティングに関して才能を発揮するのは世良(桐谷健太)である。とりわけ、『まんぷく』(NHK総合)第11週の怒涛の戦略展開は彼の商才によるものが大きい。

 「立花君には見えてない」と世良は言った。何が見えてないのかと言えば、それは“客”だという。それまでは大阪の病院に卸していたダネイホンを、全国の一般人にも売っていく必要があるのだと。栄養失調の人々は全国にたくさんいるのだ。そこで、彼はダネイホンを届ける領域の拡大を提案する。さすが商事をやっているだけあって、モノを売ることに関して世良は実にアグレッシブだ。世良ならではの役割である。

 萬平はとにかく“人の役に立つ”をモットーに邁進してきたが、一つの会社を動かすときには、こうした世良的なスタンスが必要なこともある。多くの人の役に立ちたい。でも、そのためにはまずみんなに買ってもらわなくてはならない。どれだけ崇高な経営理念があったとしても、“いかにして売るか”を考える必要もあるのだろう。『まんぷく』ではこれまで、福子-萬平の絶妙なコンビネーションも見てとれたが、世良―萬平という二輪の動きもうかがい知ることができる。つまり、理想・モットーに忠実な萬平と、現実的な戦略に精を出す世良という2人の組み合わせが、より柔軟性の高い会社を作り出しているということだ。世良はあくまで「世良商事」の人間ではあるものの、今や「たちばな栄養食品」の戦略ブレーンになりつつある。

 経営に携わる人間の多くは、程度の違いはあるとはいえ、こうした萬平的な側面と、世良的な側面を併せ持っているはずだ。1人が背負い込んでいることもあれば、2人で分担していることもあるだろう。世の中に何かの価値を生み出すには、アイデアリスト的側面とリアリスト的側面のバランスこそが大切なのかもしれない。

 さて、全国で勝負できるように味の改良も進められ、どんどん魅力的な商品になっていったダネイホン。それに続けて、世良は販売戦略だけではなく広告戦略にも打って出る。広告には萬平自身を起用し、宣伝放送の録音は福子に務めさせる。「美味しい、美味しい、ダネイホン。栄養満点ダネイホン。萬平印のダネイホン」。「美味しい」や「ダネイホン」といった言葉の繰り返しを盛り込むあたりは、いかにもプロらしい。さらに、広告を見た人の印象に残るような恰好を萬平にさせることで親しみを覚えさせる。認知度アップのための彼の戦略は、広告代理店さながらの腕前である。

 商品を届ける場所の拡大、ダネイホンの味の改良の発案、視覚にも聴覚にも訴えかける広告戦略。マーケティングスキルをふんだんに発揮する世良の役回りは、萬平や福子にとって大きな武器とも言えよう。もちろん、萬平や福子も世良のように商売のアイデアを出してきたのであって、世良がすべてを担っているわけではない。例えば、初めに病院にダネイホンを売ることを提案したのは福子だった。ただ、今週のようなドラスチックな戦略は、世良流のやり方によるものが大きい。

 私たちは、食べ物も、服も、家も、音楽も、医薬品も、知識も、“商品”として売買される世の中で暮らしている。それらを売る人々はみな、「美味しいものを食べてほしい」「いい音楽を聴いてほしい」「この薬で健康になってほしい」という理想を持ちつつも、売れないことには自分も家族も社員も食べていけない。それがビジネスというものである。塩を専売局に売るに際して、世良はズルをしたものの、彼はその後も萬平たちに何かと利する役割を果たしている。今後、世良がどのような振る舞いを見せるのかは分からないが、少なくとも言えることは、『まんぷく』は世良を単純に卑怯なだけの男として描こうとはしていないことだ。萬平的な才覚と、世良的な才覚、それぞれに光る場所が用意されているのだ。(國重駿平)

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