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Hi-STANDARDによる新たなサプライズ “語り合いたくなる”ドキュメンタリー映画公開までの軌跡

リアルサウンド

18/11/16(金) 12:00

 「絶対無いと思ってた でも絶対じゃなかった」

 この言葉がぴったりなのがHi-STANDARDというバンドであり、彼らの活動の軌跡を追ったドキュメンタリー映画『SOUND LIKE SHIT: the story of Hi-STANDARD』を観終えた素直な感想だ。

参考:Hi-STANDARDの“すべて”が明かされる 初のドキュメンタリー映画が伝える、巨大な夢と愛の核心

 2011年に活動再開してから、彼らの一挙手一投足には常に驚かされっぱなしだった。そもそもが、2000年の『AIR JAM 2000』を最後に歩みを止めた彼らが、再び一堂に会することなんてありえない、誰もがそう思い続けてから11年後の2011年4月26日。難波章浩(Vo/Ba)、恒岡章(Dr)、横山健(Gt/Vo)、がそれぞれTwitterで「9.18 ハイ・スタンダード AIR JAM。届け!!!」と同時につぶやいたあの日から、「絶対無いと思ってた」ことが絶対ではなくなった。特にここ数年、シングル『ANOTHER STARTING LINE』の無告知リリースや、18年ぶりのニューアルバム『The Gift』リリースまでの流れあたりが顕著だろう。

 そんな中で、彼らはまた新たなサプライズを我々に用意した。それが先の映画『SOUND LIKE SHIT the story of Hi-STANDARD』に関する一連の動きだ。

 この映画公開に関しては今年9月9日、18年ぶりの千葉マリンスタジアム(現・ZOZOマリンスタジアム)での開催となった『AIR JAM 2018』にて号外が配布されたのを機に情報解禁。当日、リストバンド交換所にて配布されたわけだが、多くの者がこれから始まる『AIR JAM』に対して期待を高めている中、突然渡されるこの号外に最初こそ「?」な表情を浮かべていたが、時間が経つに連れてその事実を把握し、さらに驚いた表情を見せていた。

 ここから1カ月後の10月8日には渋谷駅地下コンコースの壁面を使用し、映画の“読む予告編”こと「Hi-STA ZINE」を無料配布。壁面に貼られたジン(冊子)を通じて映画の断片がひと足先にキャッチできるというものだった。このZINEは昔、ライブハウスシーンやパンクシーンを中心に展開されたDIY精神の残るファンジンを作ろうという趣旨のもと制作され、予告動画など映画の断片が一切公開されていない状況下で想像を駆り立てるような内容になっていた。当然この話題はSNSを通じて世間に広まり、掲示から3時間程度でまず2000部がなくなり、その後何度かの補充を経て、計6000部が剥がされ持ち帰られた。ZINEがすべてなくなると、その下からは約400カットの写真とともに、10月20日19時より新宿アルタビジョンにて長尺の予告編が公開されることがサプライズ発表される。なお、このジンは10月15日からは全国の上映劇場、CDショップ、ライブハウスなどでの配布も展開された。

 そして劇場公開まで3週間に迫った10月20日、ついに映画の一部に触れることができるチャンスが訪れた。当日は夕方から突然の雨に見舞われたが、新宿アルタビジョンの周りにはこの日を待ちわびた大勢のファンが集結。スマホを片手に、5分におよぶ予告編を堪能した。なお、この映像はのちにYouTubeでも公開され、多くのロックファンの間で拡散されていく。

 その後、メディア向けの試写会が実施されると、いち早く映画を目にしたアーティストや著名人、ライターたちがSNS上で感想をつぶやき始め、さまざまな意見が飛び交うことに。これらの声を目にした多くのファンは、その内容に想像を掻き立てられ、「早く観たい!」という熱がマックスまで高まることとなった。

 これら映画にまつわる施策をそのままバンドの活動スタンスと紐付けることはできないかもしれない。しかし、Hi-STANDARDのメンバーやスタッフのみならず、彼らに関わる人間がバンドのスタンスに共感し、こういったサプライズでファンを楽しませようとするバンドのスピリットを受け継いだ姿勢には好感が持てる。初めて映画が公開されると知ったときの驚き、「Hi-STA ZINE」を手にしたときの喜び、そして初めて目にする映像ばかりの5分にわたる予告編映像を観たときの衝撃は、初めてCDショップ店頭で『ANOTHER STARTING LINE』を見つけたとき、街中で『The Gift』発売を告げる巨大ボードを見かけたときのそれに匹敵したはずだ。いやあ、痛快ったらありゃしない。

 そんなHi-STANDARDというバンドの在り方を114分に凝縮したのが、11月10日から劇場公開中の映画『SOUND LIKE SHIT: the story of Hi-STANDARD』だ。ここからは、この作品の魅力について触れていきたい。

 冒頭に書いたように、筆者はひと足先に試写会にてこの映画を拝見し、その際Twitterに下記のようなコメントを残した。

“ハイスタ映画試写、見終えてしばらくひとりで噛み締めてました。知らなかったこと、今回初めて明かされることなど情報量多すぎて、処理するのに時間がかかりそう。とにかく「すごい」の一言。これ、劇場公開後に数人で観に行って、終わってからいろいろ語り合いたい。胸いっぱい。”

 古くから知るファンならば、初めて明かされるその情報量の多さに間違いなく圧倒されることだろう。時系列に沿って、メンバー3人のコメントと当時の貴重な映像で進行していく作風は非常に淡々としたものだが、だからこそ余計な情報で邪魔されることなく、Hi-STANDARDの濃厚な世界にじっくり浸ることができるはずだ。また、最近彼らのことを知ったという若いリスナーにとっては、丁寧な説明がないぶん、事前に彼らの軌跡を把握していないと難しく映るかもしれない。だからといってつまらないかと言われると、まったくそんなことはなく、ある程度の予習があればより理解が進むし、観終えてからさらに深く知ればどんどん“沼”にハマっていくことだろう。

 そして、知れば知るほど他人と語り合いたくなる。Hi-STANDARDの3人は自分と同年代ということもあり、より自分の人生と重ね合わせて観てしまう部分が多かった。それによる感情移入も少なからずあったのも事実だ。そんな自分の中に溢れる思いを、他人にぶちまけ共有したい。相手がこの映画を観てどう感じたのか、その理由を知りたい。Hi-STANDARDというバンドを通して自分自身の生き方を再確認する……まさかそんな経験をすることになるとは、観る前は考えてもみなかったのだから、そりゃあ胸いっぱいになるわけだ。

 Hi-STANDARDというバンドの本質が、嘘なく正直に描かれたこの映画。これを観ればHi-STANDARDが支持される理由が理解できるはずだ。だって、こんなに“人間クサい”んだもの。自分に対しても相手に対しても正直で、他人事感がまったくない。自分たちが信じたものこそが「カッコいい」わけで、そこにブレがまったくない。だから物事がうまく進むときはスムーズだし、ぶつかり合うときはとことんぶつかる。彼らの歴史を振り返れば、思い当たる事象はいくつもあるし、そういった場面もこの映画の中では余すところなく触れられている。

 だから、この3人のことを信用できるんだ。114分におよぶ映画を観終えたあと、きっと誰もがそう思うはずだ。この数奇な運命を見事な形で映像作品としてまとめ上げた梅田航監督にも拍手を送りたい(しかもこの作品が初監督映画とのこと!)。

 さて、あなたはこの映画を観て何を感じるのだろうか。ぜひ身近にいる人と一緒に映画館に行き、観終えたあとに自分の中に芽生えた感情をお互いにぶつけ合ってほしい。あるいはひとりで観るという人は、SNSなどを通じてぶちまけてほしい。そうすることで、Hi-STANDARDというバンドの存在がよりリアルなものになるはずだから。(文=西廣智一)

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