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SHINee テミン、“日本語ポップス”としてのクオリティの高さ 『TAEMIN』収録曲のサウンドを分析

リアルサウンド

18/11/13(火) 8:00

 K-POPグループ・SHINeeのメンバー、テミンの日本デビューアルバム『TAEMIN』が11月5日にリリースされた(CDなどフィジカル媒体での発売は11月28日を予定)。収録されているのは、現在開催中の全国ツアーでも披露されている新曲6曲を含む全12曲。古くは2014年の1stミニアルバム『Ace』収録の「Danger」の日本語版から完全新曲まで、時代の異なる楽曲が混じった構成にはなっているものの、高揚感と成熟したクールさが同居したひとつのトーンが貫かれている。アルバムを通じて、エレクトロニックなサウンドに重きを置いたプロダクションと、テミンの柔らかく伸びるボーカルの相性の良さがはっきりと感じられる。

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 SHINeeのほかにも、少女時代やRed Velvet、NCTなど人気グループを抱えるSMエンターテインメントは、K-POPの大手事務所のなかでも特に先鋭的な楽曲を送り出してきた。ソングライターを集め、共同で集中的に楽曲を制作する、いわゆる「ソングキャンプ」と呼ばれる楽曲制作体制を2000年代後半に導入し普及させたこともあり、K-POPのプロダクションを考える上でしばしば言及される重要な事務所だ。先述した、エレクトロニックなサウンドに特徴づけられるプロダクションは、大きくいえばSMのカラーとも一致する部分が多い。たとえば一部のK-POPファンのあいだでアンセム的な人気を誇るf(x)の「4walls」は、LDN NoiseのプロデュースによるUKガラージのハネたビートと、それに呼応するように複雑にシンコペートするボーカルが特徴的な一曲で、ポップスとしてはもちろんダンスミュージックとしても抜群の洗練を見せている。

 こうしたコンテクストを踏まえ、主要曲の再録も含む本作を通じてテミンのソロを振り返ってみると、とりわけ、本作に日本語版が収録された「Drip Drop」がそんなカラーを最もよく体現している曲だろう(下掲の動画は2016年発表の韓国語版)。

 驚かされるのは、イントロから甘いささやくようなボーカルが高揚感を演出するAメロ、ベース音が徐々に展開をビルドアップしていくBメロを経て到達するボーカルドロップ(ボーカルのサンプルを含むドロップ)だ。極端にシャッフルしたリズムと細かく揺れ動くメインのシンセリフが、足元をもつらせるようなトリッキーなグルーヴをつくりだしている。このグルーヴのうえで、韓国語独特のパーカッシブな響きを踏まえた、性急な譜割りの日本語を歌いこなすさまは圧巻だ。こうしたサウンドがポップスとして許容されうるのは、リリース当時の2016年時点でも、現在でも稀なことではないだろうか。

 「Drip Drop」はいささか極端な例だとしても、たとえば新曲である「ECLIPSE」のコーラスやクライマックスで響くサイドチェインのかかったノイジーなシンセサイザーのサウンドは十分に攻撃的で、テミンの歌声との対比が絶妙だ。近年のレゲトンやチルなサウンドの流行をおさえつつ、ハーモニーや歌詞を通して耽美的な世界を覗かせる「MARS」のソングライティングやプロダクションも興味深い。いわゆるEDM的なビルドアップ-ドロップの構造にも目配せしつつ、より複雑なアレンジや質感を加えた聴き応えのあるサウンドが全編で展開する。

 また、指摘しておきたいのは、こうしたサウンドが、単純に日本市場向けにローカライズしたというだけではなく、広く“日本語で歌われるポップス”として高いクオリティを達成しているということだ。もちろんその要因としては、テミンの日本語による歌唱の巧みさが第一にあるだろう。また、日本語詞を手がける作詞家として、J-POPのリスナーに馴染み深い名前としては、たとえばいしわたり淳治などが参加していることも要因のひとつとして挙げられる。巧みなソングライティング、先鋭的なプロダクション、そしてたしかな実力を感じさせる歌唱と三拍子そろった日本語のポップスとして、K-POPやJ-POPというくくりを外して耳を傾ける価値がある。(imdkm)

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