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RIP SLYMEやキックの後継者? JABBA DA FOOTBALL CLUB、“00年代HIPHOP”のDNA

リアルサウンド

19/6/9(日) 12:00

 日本のメジャーシーンで最初にブレイクを果たしたヒップホップグループがRIP SLYMEとKICK THE CAN CREWであることに異論の余地はないだろう。RIP SLYMEの「One」(2001年)、「FUNKASTIC」(2002年)、「楽園ベイベー」(2002年)、KICK THE CAN CREWの「クリスマス・イブRap」(2001年)、「マルシェ」(2002年)などが次々とヒットチャートを駆け上がた2000年代前半は、J-POPとヒップホップがもっとも幸福な関係を結んでいた時期だったと言っていい。

参考:EXILE SHOKICHIが語る、ソロ作『1114』で目指したもの 「今はトレンドを意識してない」

 その後、日本のヒップホップシーンはすそ野を広げ、才能あふれるアーティストが次々と登場した。SALU、SKY-HI、BAD HOP、t-Ace、ちゃんみな、AKLO、KID FRESINO、あっこゴリラ、chelmicoなどが精力的に活動を繰り広げている状況は、ジャパニーズヒップホップの充実ぶりを証明していると思う。そんななか、高い音楽性と色彩豊かなポップ性を兼ね備えたグループが注目を集めはじめている。ASHTRAY, BAOBAB MC, NOLOV, ROVINによるラップクルー、JABBA DA FOOTBALL CLUBだ。

 まずは彼らのキャリアを簡単に紹介したい。2014年にNOVOL、BAOBABによって結成され、ASHTRAY、ROVINの加入後、本格的に活動をスタートさせたJABBA DA FOOTBALL CLUBは、翌2015年に1stアルバム『QUEST』を発表。同年に開催した自主企画イベントにはSuchmos、Ykiki Beatが出演するなど、この時点ですでに幅広いジャンルのアーティストとつながっていた。さらに2017年3月に2ndアルバム『OFF THE WALL』(TOKYO HEALTH CLUBのTSUBAME全面監修)を発表。リードトラック「STAY GOLD,LIFE GOES ON」のスマッシュヒットをきっかけに、Spotifyが選ぶ注目新人枠“Early Noise”にRIRI、WONKらとともに選出。サマーソニックにも出演するなど、大きな飛躍を遂げた。

 昨年3月に発表したEP『FUCKING GOOD MILK SHAKE』には、Tempalyの代表曲「革命前夜」をサンプリングした「月にタッチ」、気鋭のR&Bシンガー・Kick a Showをフィーチャーした「THINK RICH, LOOK GOOD feat. Kick a Show」などを収録。音楽性の幅を大きく広げると同時に、これまで以上に幅広い層のリスナーに訴求することに成功。さらに『FUJI ROCK FESTIVAL’18』に出演、“オレはオレのままで、お前はお前のままで最高だから大丈夫。行っちまおう”というメッセージを掲げた新たなアンセム「i&i」をドロップするなど、活動のスケールを確実に上げている。

 JABBA DA FOOTBALL CLUBの音楽的な特徴は、00年代前半ーー前述した通り、J-POPとヒップホップがもっとも近づいていた時期ーーを想起させるトラックメイクだろう。FUNKY GRAMMAR UNIT(90年代半ばに発足したRHYMESTER、EAST END、RIP SLYME、KICK THE CAN CREW、MELLOW YELLOWを中心としたヒップホップコミュニティ)のアーティストにも通じる音楽性は、まさにジャパニーズヒップホップの遺伝子を受け継いでいる。R&B、ファンク、ロック、ラテンなどを癒合させたサウンドは、ヒップホップにそれほど馴染みがないJ-POPリスナーにとっても親しみやすいはず。また、聴き取りやすいフロウ、ポップに振り切ったなサビのメロディも彼らの魅力。つまりJABBA DA FOOTBALL CLUBの音楽は、誰もが気軽に楽しめるポップスとしての機能が備わっているのだ。

 さらに、幅広いジャンルに対する造詣の深さと作曲・トラックメイクの技術の高さはまちがいなく、JABBA DA FOOTBALL CLUBの“音楽の要”と言えるだろう。トラックメイクを手がけているBAOBABはグループでの活動以外に、chelmicoへのトラック提供、アイドルグループへの楽曲提供を行っている。また、共同プロデューサーのSUIはDJ MURO、DJ HAZIMEといったヒップホップ系プロデューサーとともにコアなシーンで存在感を示す一方、EXILE ATSUSHI、EXILE SHOKICHI、三浦大知、Nissyといったメジャーアーティスト、ももいろクローバーZ、lyrical schoolなどのアイドルグループの楽曲でもその手腕を発揮。BAOBABとSUIのコラボレーションにより、ディープな音楽性とポップな親しみやすさを共存させていることも、このグループの強みだ。

 そして2019年、4人はついにメジャーシーンに進出する。メジャー1stシングル曲「新世界」は、“新しい世界へ飛び込め!”という前向きなメッセージが響き渡るアッパーチューン。さらに進化したミクスチャーサウンド、一発で覚えてしまうパンチラインを含め、このクルーの魅力がわかりやすく伝わる楽曲だ。「新世界」のオープニングは〈Hello bonjour コンニチワ〉から始まるROVINのスピード感あふれるラップ。さらにソウルフルなギターのフレーズが加わり、シンガロング必至のコーラス(モチーフは、アントニン・ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」の主旋律)、バウンシーに飛び跳ねるビートとともに心地よい解放感へとつながっていく。メンバー個々のスキルとキャラクターを活かしまくったラップが交差し、〈「ただ何となく」を信じて行くぜ〉〈いつだってスタートなんだ今 ここが新世界/マジのガチだぜ〉というパワーワードに結実させる構成も見事だ。

 カップリングには、“一緒に上がっていこう”というストレートな思いを高らかに響かせるパーティーチューン「君の街まで」、すでにライブのアンセムとなっている「i&i」をORANGE RANGEのNAOTOがリミックスした「i&I Remixed by naotohiroyama」を収録。彼らのジャンルレスな音楽性を体感できるシングルに仕上がっている。

 NOLOV(リーダー&よく喋るグループのまとめ役&中肉中背)、ROVIN(ゲーム好き&スキルフルな高音域ラップ&チビ)、ASHTRAY(イケメン&流麗なフロウを駆使&ガリ)、BAOBAB MC(サブカル好き&トラックメイカー&デブ)と、体型まで含めてメンバーのキャラ立ちも抜群。00年代初めのRIP SLYME、KICK THE CAN CREWと同様、リスナーに「なんだか楽しそう」「自分もああいうことやってみたい」と思わせてくれるのも、このクルーの求心力の強さにつながっている。メジャーデビューシングル『新世界』によって、JABBA DA FOOTBALL CLUBの存在はさらに多くのリスナーに届くはず。その先にあるのは、J-POPとヒップホップの新たな出会いなのだと思う。(森朋之)

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