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『いだてん』杉咲花、中村勘九郎らが次世代に灯した光 「種まく人」が描かれた第一部最終回

リアルサウンド

19/6/24(月) 12:30

 『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』(NHK総合)第24回「種まく人」が6月23日に放送された。関東大震災によって壊滅状態になった東京で、四三(中村勘九郎)は「復興運動会」のアイデアを思いついた。四三が「いだてん」として自らの使命を果たす姿や、四三や治五郎(役所広司)、三島(生田斗真)やシマ(杉咲花)といった人々が「種まく人」として、次の世代に光を灯したことが印象的な回となった。

参考:『いだてん』中村勘九郎が第一部を振り返る 「金栗四三はこれからも走り続けていきます」

 四三が「いだてん」として自らの使命を果たすとき、彼の背中を押したのは義母・幾江(大竹しのぶ)だった。関東大震災の後、四三は熊本にいるスヤ(綾瀬はるか)の元へ戻った。四三の無事にスヤや実次(中村獅童)は安心した様子を見せるが、幾江は厳しい表情で「なーし帰ってきた」と四三に問う。そんな幾江の顔をじっと見つめる四三。中村はどこか心残りがあるような表情を見せる。関東大震災後の東京で、自分の無力さを思い知った四三だが、「何かしなければ」とは思っていたのだろう。そんな四三の心情を、中村は繊細な演技で表現する。幾江は四三を叱咤した。

「東京に残って、踏ん張らんでどぎゃんする」
「弱ってる人に手ェば差し出さんで、どぎゃんする」

 場をおさめようとした実次が発した「逆らわずして勝つ」という言葉を聞き、奮起した四三。四三は「(地震に対して)そもそも人間は無力たい」と発した。その表情は清々しい。だが決して、関東大震災を楽天的に捉えているわけではない。つらい現実から目を背けているわけでもない。震災後の生活にどう向き合うべきか、未来をどうすべきか、彼の中で決着がついたのだ。

 東京へ戻ることに決めた四三に、幾江は四三に「韋駄天」が何の神様なのかを伝える。

「人々のために、走って、食いもんば集めて、運んだ神様たい」

 これまでずっと走り続けてきた四三。日本人初のオリンピック選手として讃えられたり、時に世間から厳しい言葉を浴びせられても、バカのようにずっと走り続けてきた。「いだてん」と呼ばれてきた四三は今、人々のために「韋駄天」としての使命を果たすことになるのだ。東京に戻った四三は走り続けてきた仲間と共に、幾江たちから託された救援物資を背負って走り出した。

 また、四三は「いだてん」としての使命も果たす。

 震災後の人々は賑わいを取り戻しつつあったが、夜になるとそこかしこで涙する声が聞こえる。清さん(峯田和伸)はこう言った。「気が済むまで泣いて、こっちは聞こえねえふりして、また明日何食わぬ顔でおはようって言うんだ」人々は明日を生きるために前を向かなければならない。だが、前を向くだけでは悲しみや苦しみを乗り越えることはできないのだ。

 そんな人々のために四三が提案したのが「復興運動会」の開催だった。塞ぎ込む人々のために希望を与えたい。四三が提案した思いをより強いものに変えたのは、震災後も変わらず元気な子どもたちの姿だった。四三と共に走る子どもたちの姿を見て、治五郎は「子どもたちの笑顔が、ここでは唯一の救いだ」「あの子たちにこそ、オリンピックを見せてやりたい」と言った。子どもたちは未来だ。そんな未来に対して、四三の表情は明るい。震災後の人々の生活に光が差し込み始めた。

 子どもたちのかけっこで幕を開けた復興運動会。そこには、ストックホルムオリンピックで監督を務めた大森兵蔵(竹野内豊)の妻・安仁子(シャーロット・ケイト・フォックス)や四三と共に日本人初のオリンピック選手として活躍した三島、そしてシマがスカウトした人見絹枝(菅原小春)の姿が。シマの手紙に心揺さぶられ、陸上の世界へと足を踏み入れた絹枝。大々的な復興運動会を開催しても、シマは戻ってこなかった。だがスポーツを愛していたシマの心が、絹枝という新しい芽を連れてきた。絹枝はリレーに参加し、堂々とした走りで富江(黒島結菜)と共にゴールする。彼女たちの走りを見ていた増野(柄本佑)は、彼女たちに拍手を送るシマの姿を見た。

 第一部最終回となった第24回「種まく人」は、第一部に登場した人々が「種まく人」であったことを実感できる。治五郎が日本とオリンピックをつなげ、三島はシマに、シマは絹枝にスポーツの楽しさをつなげた。復興運動会のシーンでは、今は亡き兵蔵がアメリカから持ち帰ったバレーボールが女学生に人気となり、可児(古舘寛治)もドッジボールの普及に力を注いでいる。

 そして四三は走り続ける。治五郎は走り続ける四三を「いだてん」と呼ぶが、スヤは四三の走る姿を「バカの走りよるて、皆笑っとるだけたい」と言った。だが、「いだてん」とも「バカ」とも評される、走ることにあまりにもまっすぐな四三を、中村が晴れ晴れとした表情で演じ続けてきたからこそ、四三のその姿勢に説得力が生まれていた。

 次週から第二部がスタートする。第一部の彼らが「種をまいた」からこその第二部だ。彼らのまいた種は、どのような花を咲かすのだろうか。(片山香帆)

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