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動画サービスから起こるムーブメント 夏代孝明が語るアーティスト像とシーンの未来

リアルサウンド

19/3/1(金) 20:00

 昨年「Lemon」のヒットなどを経て『NHK紅白歌合戦』に出演した米津玄師を筆頭にして、近年活躍著しい動画サービスを出自に持つシンガーソングライターたち。その勢いはますます加速中で、Eveや、須田景凪、神山羊、Uruなど、様々なアーティストが日本の音楽シーンの中心地へと活動の舞台を広げている。その重要アーティストのひとりが、動画サービスで人気を集め、2015年にカバーを主体にしたアルバム『フィルライト』を発表。今では自身で作詞作曲したオリジナル曲をリリースするシンガーソングライターとして、10~20代のリスナーを中心に高い人気を誇り、3月に控えたリキッドルームでのワンマンライブのチケットを即完させるまでに至った夏代孝明だ。

 彼が初めて全曲オリジナル曲で完成させた最新アルバム『Gänger』は、ギターロックを中心に据えつつも、全10曲の中にヒップホップや、シティポップ、ジャズ、レゲエ、エレクトロポップといった様々な要素が詰め込まれ、「Gänger」のMVではダンスも披露するなど、その音楽がより豊かに外へと広がっていくような作品になっている。また、「Gänger(=人)」というアルバムのテーマに、SNSなどを駆使してファンと近い距離で活動を続けてきた彼ならではの気持ちが反映されていることも、作品の大きな魅力に繋がっている。アルバムに込めた様々な工夫や思いを通して、彼の音楽が支持される理由を探った。(杉山仁)

表現者としての原点に 

ーー昨年11月14日にリリースされた最新アルバム『Gänger』は、初めて夏代さんが作詞作曲を担当したオリジナル曲ばかりで構成されたアルバムになりましたね。まずはこの変化がどんな風に起こっていったのか、改めて教えてもらえますか?

夏代孝明(以下、夏代):僕のもともとの音楽のルーツはバンドなので、完成度は今とは全然違いますけど、オリジナル曲には高校生の頃から挑戦していたんです。でも、4年前の『フィルライト』は、その時点ではシンガーとして注目していただいていたこともあって、シンガーとしての自分を出した作品となりました。だから、今回は表現者としての原点に帰りたいという気持ちもあって、作詞作曲をすべて自分でやろうと思いました。シンガーとしての自分から、シンガーソングライターとしての自分に移行するために、4年間かかったという感じなんだと思います。

ーー今考えてみると、その変化には何かきっかけがあったと思いますか?

夏代:カバーが中心だった『フィルライト』で1曲だけ作曲をしたときに、伝えたいことを曲に乗せて発信することで、自分の中の負の感情が浄化されるというか、若干軽くなるように感じたんです。僕はもともと、自分の気持ちを伝えるのは苦手な人間で、相談ごとも得意ではなくて。だから、音楽が自分の内面を誰かに発信する方法としてすごく機能していることに気づいたというか。たぶん、そこがひとつの起点になって、徐々に変わっていった気がします。

ーーとはいえ、全曲作詞作曲してアルバムを作るのは、大変だったんじゃないですか。

夏代:やっぱり、想像していたよりもカロリーは高かったです(笑)。カバーをするのとはまた違って、自分の中の二面性に向き合うような作業でした。僕の場合、前向きな曲を作っているときは、自分自身は相当後ろ向きな気持ちのことが多かったりするんですよ。たとえば、誰かを励ましたいと思って曲を作っているときって、思い返してみると、「自分自身も励まされたい」という気持ちになっていたりして。「誰かのために」と思っている自分と、「自分が救われたい」と思っている自分のどっちが表に出るかで、曲の方向性が決まってくるんです。そのバラバラな感じがすごく不思議な気分になるんですよ。意図せずにムーンウォークしているような感じというか、景色は変わっていっているのに、自分自身は動いていない感覚がするというか……。

ーー原曲に寄り添うことも必要なカバー曲とは違って、より深く自分を見つめていくことが必要なオリジナル曲ならではの苦労を経験したのかもしれませんね。

夏代:そうですね。やっぱり、自分のことって、嫌なことの方が目に付きやすいじゃないですか。だから、オリジナル曲を作るにあたって自分との対話を繰り返していくと、結果的に自分の嫌なところにも、たくさん向き合わなければいけなくなったのかもしれないです。

ーーそういう意味では、今回の『Gänger』は、「ユニバース」や「世界の真ん中を歩く」「ニア」のように前向きな/誰かのために歌うような楽曲も、より夏代さん自身の感情をさらけ出すような楽曲も、どちらもが詰まっているように感じました。「そのどちらもが自分だ」という雰囲気が感じられるような作品になっているのかな、と。

夏代:そうですね。タイトルの『Gänger』はドイツ語で「人」を意味する言葉なんですけど、「〇〇Gänger」という形で単語の後ろにつけると、「〇〇する人」という言葉になるんです。今回のアルバムでは全体を通して「人」について書こうと思っていて、それぞれの曲が「〇〇Gänger」の「〇〇」に当たるようなものになっています。つまり、自分も含めて、色んな人の内面を書いていこうと思ったんですよ。僕の場合、自分のことを好きでいられている自信はないんですけど、人自体はすごく好きで、誰かと話すのも遊ぶのも好きなんです。それから、今回は全曲オリジナル曲で作った1枚目のアルバムでもあるので、自分の固定概念を取っ払って、音楽を楽しむことに力を入れました。今まで自分が通ってこなかったような音楽も色々と聴いて、取り入れられるところは取り入れていったんです。そういう挑戦をしつつも、サビがきたら僕らしさを感じてもらえるような、そんな作品にしたいと思っていました。

Gänger / 夏代孝明 MV

ーー実際、今回の『Gänger』は、曲自体もアレンジも、歌い方も含めて、新しい挑戦がたくさん詰まっている作品になっていますね。たとえば、1曲目の「Gänger」はAメロでアコギとラップの要素が取り入れられていて、サビで一気にポップに変わる構成が面白いです。

夏代:この曲はまず、AメロとBメロの部分はアコギ主体で洋楽の要素を取り入れていて、ラップにこれまであまり触れてこなかった自分なりに、昔よく聴いていた曲を思い出しつつラップを入れました。洋楽の要素やラップの要素はこれまで上手く取り入れられたことがなかったので、そこを強調しつつ、サビは僕らしいものに仕上げた曲ですね。

ーー洋楽というと、夏代さんはどんな音楽を聴いているんでしょう?

夏代:楽曲単位のことが多いので、特別好きなアーティストがいるわけではないんですが、最近だとエド・シーランさんの曲はよく聴いていますね。

ーーなるほど、実は最初に『Gänger』を聴かせてもらったとき、全体の雰囲気として僕もエド・シーランの作品に通じる魅力を感じたんですよ。あの人はシンガーソングライターでありながら、ヒップホップやアーバンなものも取り入れて作品を作っていますよね。

夏代:ああ! ありがとうございます。日本語は母音が強い言語なので、普段は歌詞につられて歌のリズムも8分や16分に引き寄せられてしまうことが多くて。この曲に限らずなんですけど、今回はそれをどこまで崩せるかを考えていたんです。特に「Gänger」や「ジャガーノート」は、それに挑戦できた曲になったのかな、と思っています。

ーー2曲目の「エンドロール」は、イントロの鍵盤の音がすごくアーバンな雰囲気のものになっていて、ここでも音楽性の広がりを感じました。

夏代:「エンドロール」は、「ひとつの曲の中でどれだけひねれるか」を裏テーマにしつつ、「自分との対話」を表現できるように曲を作っていきました。アレンジの面では、ちょっとシティっぽい雰囲気も出しつつ、僕が自分の楽曲で得意だと思っている転調のしかたをより工夫しようと思っていました。どれぐらい聴いてくれている人が「?」を持ってくれるかということを意識して、Bメロの中で転調したり、2番のサビ終わりのところで全然関係ないところに飛んでみたりしたんです。音楽って、メッセージを伝えることも重要ですけど、エンターテインメント性が高いとより楽しめることがありますよね。「リズムが効いていて楽しい」とか「サビが耳に残る」とか、そういうことも音楽ならではの強みだと思うので、「メッセージをそのまま曲にしました」というだけではつまらないんじゃないかと思ったんです。

ーー「音楽」の色々な側面を使って曲を作っていきたい、ということですか?

夏代:そうです。このアルバムではまだできなかったことも自分の中ではたくさんあって、たとえば、今ちょうど「トラップっぽい曲を作ってみよう」と試していたりもするんです。まだ自分の中でしっくりくるやり方が見つかっていないんですけどね(笑)。でも、トラップやEDMっぽいことは試しています。EDMをJ-POPに取り入れると、サビが歌になってしまって、「それじゃあEDMじゃないよね?」と思うので、難しいんですよ。

ーー歌を大切にすると、EDMの一番の特徴であるドロップがなくなってしまう。

夏代:はい(笑)。僕はまだ夏代孝明として曲を書きはじめて間もないので、ちゃんと自分の意思を持って歌詞を書いたり、「伝わるような曲」を作ったりと、軸は忘れないようにしつつも、自由に色んなことを試してみたいです。僕の場合は、聴いてくれる人にメッセージが伝わらないなら、自分にとっての音楽の役割は果たせていないかな、と感じるんですよ。

ーー夏代さんは、音楽をコミュニケーションツールとしても捉えている印象がありますね。「誰かのために曲を作りたい」という発想も、そんな人ならではのような気がします。

夏代:いつもではないんですけど、僕は自分の気持ちが乗っているときは自己犠牲の気持ちが出てくることがあるんです。そういうことが、もしかしたら曲にも反映されているのかもしれないです。あと、僕は活動を続けていく中で、SNSでリスナーの人たちとコミュニケーションを取ってきて、それが自分の原点だと思っているんです。だから、僕が何かを伝えたいと思っている人たちが、つねに隣にいるような感覚があって、自分が言ったことに対して「そう思う」とか「そうは思わない」という反応がすぐにもらえる環境にいるので、「音楽を伝える先に誰かがいる」という感覚は、もしかしたら人よりも強いのかもしれないです。

ーーそう考えると、今回の『Gänger』には夏代さんの気持ちを吐き出すような楽曲も収録されたことで、これまで曲を聴いてくれていた人たちとも、より深くコミュニケーションが取れるような作品になっているのかもしれませんね。

夏代:確かに、そうかもしれないです。自分で作詞作曲をはじめたばかりの「ユニバース」や「世界の真ん中を歩く」を作った頃は、僕の音楽を聴いてくれる人に、何かお返しができたらいいな、と思って曲を作っていました。でも僕は、同時に自分の本当にどうしようもないところとか、誰にも言えない葛藤のようなものも持ち続けて活動してきたので、「エンドロール」や「ジャガーノート」を公開するときは、「本当は自分はこういう人間なんだ」ということを知られるのが、若干怖かったりもして。でも、それに対してみんなが「そういう気持ち、僕にも/私にもあるよ」と言ってくれたことが、すごく勇気に繋がりました。だから、また誰かに寄り添う曲を作るときがきたら、その経験が生きてくるような気がしています。「今度こそ本当の意味で、近くにいられるような曲が作れるんじゃないかな」って。

ーー自分の気持ちを隠さずに伝えられるようになってきているんですね。

夏代:僕はたまに、夏代孝明というアーティストが、自分自身ではないように感じることがあるんです。『フィルライト』の頃から、夏代孝明の後ろに本当の自分が立っているような感覚になることがあって、「夏代孝明にスポットライトが当たったときの、その後ろにできる影が自分なんじゃないか?」と思うこともあって。僕は、誰に対しても正直でありたいと思っているので、自分という存在が誰かの中で美化されていく感覚に、自分自身がついていけなくなっていたのかもしれません。それで、「本当の自分はそんなにいい人間じゃない」と、自己嫌悪に陥ってしまって。でも、それって誰の悪意もない現象だと思うんですよ。僕自身もみんなに自分のことをよく思ってもらいたいし、みんなも僕のことを知ってくれて、よく思ってくれているという、誰も悪くないのに起きてしまうことで。だからこそ、僕自身が理想の夏代孝明を越えていく必要があるし、つねに新しいことに挑戦したいと思うんです。

成長とともに求めるものも大きくなってきている 

ーー一方で、3曲目の「ジャガーノート」は、夏代さんの音楽が広がるきっかけを作ってくれたニコニコ動画のカルチャーに向けた気持ちが歌われた曲になっています。

夏代:ボーカロイドやニコニコ動画のカルチャーって、今はかつてのような勢いは生まれていない状態が続いていると思うんですけど、僕はあの場所が、そんな風に置き去りにされていくのが哀しいんです。僕が頻繁に動画を投稿していたのは『フィルライト』よりも前の頃ですけど、当時あの場所は登竜門のようなところになっていて、色んな人が、色んな音楽でしのぎを削っているような熱気がありました。でも、みんなそこから飛び出していってーー。

ーーいまやJ-POP/J-ROCKのシーンで活躍している人たちがたくさん生まれていますね。

夏代:でも、「それであの場所自体は、結局どうなったんだろう?」という気持ちがあったんです。みんなが各々自分の道を進んで、あの場所が空っぽになっているのが、僕はすごく気になって。たとえば、僕自身音楽のルーツになるバンドがいて、そのコピーバンドをはじめて、今では自分で曲を作るようになったように、それをボーカロイドで経験した人も、たくさんいると思うんです。だからこそ、その火を消してしまうのはもったいないし、自分自身が通ってきた道だからこそ、これからも色んな人が続いてくれたらいいな、と思っていて。この曲は、そんな気持ちを込めた曲なので、ニコニコ動画では自分のボーカルバージョンは公開せずに、ボカロ動画だけを上げて、自由に楽しんでもらえる方法で公開しました。

ーーそういう意味で言うと、次の4曲目「REX」も、夏代さんの「これまでの自分も大切にしていきたい」という気持ちが感じられる曲になっていますよね。

夏代:こういうギターロックは、僕がずっと得意としてきたことなので、今回も1曲は絶対に入れたいと思っていました。自分のことを昔から見てくれているリスナーの方も、こういう曲があればきっと喜んでくれると思ったし、僕自身、自分の曲で一番最初に浮かぶは、やっぱりこういうギターロックなんです。この曲では、逆境を巻き返すとき、最後の最後は自分自身を信じることが大事だと思う機会があって、その気持ちに絶滅寸前のティラノサウルスの一匹を重ねてみました。実は、最初の恐竜っぽい声も、僕自身の声なんです(笑)。

ーーえっ、そうなんですか……?!

夏代:これだけで3時間ぐらいかけました(笑)。小声で巻き舌で、「ガオー」と言ったものを改造して作っています。デモの時点で冗談で入れたものを、そのまま使うことにしたんですよ。

ーーそれは全然気づきませんでした。アレンジでもうひとつ面白い曲というと、「キャラメル」はサビで一気にエレクトロポップに変わる展開が楽しいものになっていますね。

夏代:この曲は、日本語でリズムをどれだけ刻めるかを考えつつ、ちょっとレゲエっぽさや、ひと昔前の洋楽感、それからサビのポップさを意識しました。僕の場合、これまで恋愛をテーマにした曲って、真面目な曲しか書いてこなかった気がしているんです。それもあって、もっと日常に溶け込むようなライトな恋愛の歌を書いてみたいな、と思って。次の「プラネタリウムの真実」は恋愛のドラマを書いた曲ですけど、「キャラメル」はもっと日常的な……おにぎりとかポテトチップスみたいなイメージです(笑)。でも、タイトルを「おにぎり」にするわけにはいかないので、「キャラメル」にしました。

ーーそういう意味で、ストリングスを加えた「プラネタリウムの真実」とはアレンジがまったく違うものになっているんですね。ちなみに、「キャラメル」ではボーカルがかなり重ねられていますよね?

夏代:地声を使ったメインが1本と、裏声がたぶん4本あって、コーラスも上下で4本重ねていると思います。サビでガラッと雰囲気が変わるし、音程の高低差もある曲なので、それをより強調したかったのと、あとは「日常的な恋愛」というテーマを生かすためにも、鋭く耳に刺さらないような雰囲気を出したいと思っていたんです。

ーー曲のテーマに沿うように、色んな工夫が行なわれているんですね。

夏代:やっぱり、僕は曲の中にある要素が足し算になっているのではなくて、掛け算になっているような曲を作りたいと思うし、そういう曲ができたときに音楽に楽しさを感じるんですよ。

ーーラスト曲の「君のいない夜」にも、冒頭にマーチングバンドのようなリズムが加えられていますが、これはどんなアイデアだったんでしょう?

夏代:これは、歌詞のテーマと直接関係があるわけではないですけど、僕は小説の『銀河鉄道の夜』がすごく好きで。この曲では銀河鉄道が夜空を走っているようなイメージを連想していました。それで、機関車の汽笛がなっているようなイメージから曲をはじめたかったんです。

ーーこのイントロ部分があることで、曲に幻想的な雰囲気が加わっていますね。

夏代:そうですね。純粋なバラードで、まるで星空が浮かんでくるような雰囲気で。歌詞の内容自体は、ひとり暮らしのワンルームで起こっていることをイメージしました。自分が学生だった頃のひとり暮らしの部屋って本当に狭かったんですけど、でもそこが、自分の宇宙というか、何でもできる場所のような感じもしていて。当時は「ここから色んなことがはじまっていくんじゃないか」と感じていました。でも、自分の未来に可能性を感じて、部屋を宇宙のように感じつつも、結局悩んでいることは、すごく小さいことだったりもして。その乖離を書きたいと思ったんです。そのときの自分の悩みや葛藤、恋愛、そして18~22歳頃まで暮らしていたあの場所は、自分のクリエイティブの根幹を作ってくれたんじゃないかなと思うので、アルバムの最後をこの曲にしました。曲自体は恋愛の歌ですけど、そういう意味では「原点回帰」のような気持ちを込めた歌でもあります。

ーー当時の夏代さんと今の夏代さんを比べてみると、どう感じますか?

夏代:どうなんでしょう?(笑)。もちろん、できることも増えましたし、手伝ってくださる方もたくさんいて、「僕はすごく恵まれてるな」と思うんですけど、課題に思うところは今もあって、当時と気持ちが大きく変わっているかというと、そうでもないんです。18歳ぐらいの頃は、誰にも自分の音楽を聴いてもらえなくて、「音楽を続けても、意味があるのかな」と思っていて。その状況は、確かに変わりました。でも、不思議なんですけど、その飢えのようなものって、満たされるわけでもないんです。きっと自分の成長とともに求めるものも大きくなってきているので、当時の僕が今の自分を見たら「十分でしょ」と思うにしても、今は今でやりたいことも一緒に膨らんできているんだと思います。

ーー『フィルライト』からの4年間は、夏代さんにとってどんな期間になりましたか?

夏代:思い返すと、本当に色々な経験ができた期間だったと思います。シングルを3枚出して、アニメのタイアップ曲では作品に寄り添って歌詞を書くことも考えましたし、制作の流れも変わりました。それに、『フィルライト』は「歌ってみた」のシンガーとしての夏代孝明を出したアルバムだったので、新しい挑戦というよりは、それまでの自分をまとめたような作品だったんです。でも、そこからシングルを出していく中で、「こういう制作のしかたもあるんだ」という気づきがあったり、イベントで来てくれた人たちと話している中で、「遠くに行っちゃうような気がする」と言われて、「じゃあ、僕発信でみんなに寄り添える曲を作ろう」と思って、それが「ユニバース」や「世界の真ん中を歩く」に繋がったりもして。そうしていく中で、自分自身が持っている負の感情や闇の部分が看過できなくなって、またそれが曲になっていきました。でも、すごく嬉しかったのは、そうすると、今度はリスナーのみんなが、僕に寄り添ってくれるようになったということで。僕の弱い部分を知ってくれたうえで、それでも僕や僕の音楽を好きでいてくれるというのは、本当に嬉しいことでした。そういう意味でも、今度はまた僕がみんなに色々なものを返していきたいですし、僕の音楽を聴いてくれるみんなとのコミュニケーションもより深まってきて、自分がやりたいことも、より明確になってきているような気がします。そんなことを感じた4年間でした。

ーーこれからに向けてという意味でも、とても大事な期間だったのかもしれませんね。

夏代:そうですね。今回『Gänger』を出して吹っ切れたような感覚がありますし、音楽を作っていくことがより自由に感じられるようにもなっているので、今はスポンジのように色んなことをどんどん吸収していきたいです。そのうえで、「これが夏代孝明だ」と分かってもらえるような音楽を、突き詰めていきたいと思っています。触れる音楽が多ければ多いほど、僕自身も新しくなっていけると思うので、これからも色んなことに挑戦していきたいですね。

(取材・文=杉山仁)

■リリース情報
『Gänger』
発売:11月14日(水)
※同日、配信サイト、及び定額制音楽配信サービスにて配信
【ウムラウト盤(初回限定)】¥3,200(税抜)
CD
・特別ブックレット[月面移住計画]
・アートポスター[Gänger]
・映画”End Roll”ダミーチケット / “プラネタリウム”ダミーチケット(ランダム封入)
・クリアスリーブ仕様
【通常盤】¥2,300(税抜)

■ツアー情報
『夏代孝明 ワンマンツアー「Fußgänger」』
2019年3月15日(金)
大阪・梅田 Banana Hall 
17:30 OPEN / 18:30 START
問合せ先:キョードーインフォメーション(0570-200-888)

2019年3月17日(日)
東京・恵比寿 LIQUIDROOM
17:00 OPEN / 18:00 START
問合せ先:SOGO TOKYO(03-3405-9999)

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