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折坂悠太、中村佳穂、KID FRESINO……“プレイヤー”たちのネットワークが新たな音楽を生む原動力に

リアルサウンド

19/1/11(金) 8:00

 2018年は若手SSWの活躍が印象的な年だった。あいみょんが次世代のJ-POPを担う実力を印象づけた一方で、崎山蒼志がSNS経由でスターダムを駆け上がり、折坂悠太や中村佳穂といった才能が発表したアルバムも大きな注目を集めた。長谷川白紙やMomがインターネット以降、またヒップホップ以降のDIY精神とポップス像を提示したのも印象深い。

(関連:折坂悠太、崎山蒼志、須田景凪……2019年に飛躍が期待できる男性SSW

 なかでも注目したいのは折坂悠太と中村佳穂だ。

 両者とも、多彩な表情と豊かな陰影を持った歌声や確固たる個性を湛えた詞で、新たな日本語の「うた」を提示した。加えて、アルバムを貫くアンサンブルやサウンドへのこだわりも、個人の才能の発露にとどまらない作品としての広がりを持っていた。

 その秘訣を知るためにクレジットをひもとくと、折坂悠太の『平成』をサポートしたのは、先んじるEP『ざわめき』にも参加している、寺田燿児率いるyoji & his ghost bandの面々や、に角すいの飯島はるかなど折坂悠太合奏のメンバーだ。

 yoji & his ghost bandが奏でる箱庭を思わせる折衷的なポップスや、ピアノとツインボーカルのシンプルな編成ながら複雑に折り重なるハーモニーが耳を捉える、に角すいの楽曲の響きは、『平成』に面影を残しているように思う。

 あるいは中村佳穂の『AINOU』は、荒木正比呂、深谷雄一(ともにレミ街)、小西遼(CRCK/LCKS)、西田修大(吉田ヨウヘイgroup)との密接なコラボレーションの成果だ。

 エレクトロニカやジャズ、ネオソウルのエッセンスをポップスに昇華してきた彼らから中村が吸収したセンスやスキルは、生音とエレクトロニックな加工がシームレスに同居したサウンド、そしてビートや譜割りの実験が繰り出されるアレンジに結実している。

 このような作品を前にすると、ロックを中心に根強いバンドという活動形態とは異なる、個性的なプレイヤーがコラボレーションしあうことで音楽のあり方を更新してゆく、そんなダイナミズムが見えてくる。バンドよりも、シンガーやビートメイカー、また楽器奏者といった“プレイヤー”たちのこうしたネットワークこそ、新しい音楽のかたちを開拓する原動力になっているのではないか。とはいえ、ソロアーティストがミュージシャンを集めて仕事をすることはありふれたことだ。なぜいまこうした図式をあえて持ち出すのかといえば、国内の音楽の中で様々なジャンルが互いに混じり合い、融合していく様を理解しやすくなるからだ。

 この視点に立てば、KID FRESINOの2018年作『ài qíng』もまた、『平成』や『AINOU』と同じ地平にあるものとして見えてくる。同作にはエレクトロニックなダンスミュージックからジャズ、R&Bまで、多様なジャンルのボキャブラリーが総動員されている。とりわけ変拍子やポリリズムを取り入れて話題を呼んだ「Coincidence」は、2017年以来活動をともにする、斎藤拓郎(Yasei Collective)や石若駿(CRCK/LCKS)をはじめとするバンドメンバーとの協働が生んだ稀有な一曲だ。KID FRESINOをハブとしたプレイヤーのネットワークが、ジャンルを超えた作品を生み出した例と言える。

 主にアメリカのメインストリームやK-POPを震源に、コーライティングなどポップスの分業制への関心が改めて高まる昨今。それに加え、プレイヤーたちのネットワークに注視することで、たとえば「ロックからヒップホップの覇権へ」といった単純な構図を超えた音楽地図を描けるのではないだろうか。

 2019年には、インターネット上に登場したまた新たなミュージシャンたちによって、まさにこうしたネットワークが再編される予感が感じられる。今後広い注目を集めるだろう若い世代のコラボレーションの例として、2019年の年始を飾った印象的なリリースを紹介したい。<Maltine Records>からリリースされたabelestのEP、『健康』だ。1曲目でコラボレーションする諭吉佳作/menは、崎山蒼志や長谷川白紙らと交流のある浜松の若手SSWで、このEPでも存在感を遺憾なく発揮している。すでに『未確認フェスティバル』でも評価を受けた才能に注目だ。(imdkm)

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