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いま、最高の一本に出会える

『イノセンス 冤罪弁護士』坂口健太郎が見せた名演技 藤木直人と市川実日子のやり取りにも注目

リアルサウンド

19/2/3(日) 12:00

 第3話にしてはじめて「死」にまつわる冤罪事件が描かれた『イノセンス 冤罪弁護士』(日本テレビ系)。13歳の娘を失った被害者遺族が発した“どうにもやりきれない感情”が、黒川拓(坂口健太郎)や和倉楓(川口春奈)にも連鎖していくように伝わっていき、悔しさから生じる涙や怒りなど、今までにはなかった表情があらわになった。

 今回、拓率いる弁護士チームが挑んだのは、総合病院に潜む内部政治の闇。冒頭、医療ミスが原因とされた患者の死亡事故の罪が、病院全体に関わる問題かもしれないなかでひとりの執刀医・雲仙(平岳大)に業務上過失致死として被せられてしまう。弁護の依頼を受けた拓らは、病院が制作した事件の内部調査報告書を雲仙とともに確認。すると、冤罪に関わる一連の動きは、雲仙の同期であり出世頭の医師・磐梯(山本耕史)の根回しによる隠蔽工作であったということが明らかに。真相を追う拓は、所属する弁護士事務所の所長・別府(杉本哲太)に行く手を阻まれながら、失職をかけてでも事件の原因究明に挑んでいく。

 大規模実験によって、医療事故は病院の怠慢による設備不良が起こしたものだったという真相が明らかになっても、判決はまさかの有罪。そして真実はより一層不明瞭に。怒りの対象を見失って苦悶する遺族に詰め寄られた拓は、目頭を熱くしながら“やりきれない”悔しさをふつふつと燃え上がらせる。

 印象的だったのは、この難しい感情を見事に演じきった坂口健太郎という役者の存在感だ。熱のこもった演技というよりはどこか冷めているような、落ち着いた演技をする印象がある坂口。そうした“感情を排除”したような演技が光るなか、『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(フジテレビ系)などの出演過去作では、悲哀や怒りの感情を静かに表出する姿を垣間見せてきた。飄々としたキャラクターである拓が見せたエモーショナルな表現は、坂口の演技の真骨頂といってもいいだろう。そのギャップは、見るものの感情を否応なく揺さぶりにかかってくる。どうしようもない苦悩を抱える遺族と拓の一方で、問題があるならば「いずれ」ではなく「今」変えるべきだという拓の誠実な言葉と病院の改善案を示す雲仙の思いを受けた磐梯は、病院の改革へ向けて動き出した。

 「拓がなぜ冤罪事件を追うのか」という謎も前回から少しずつ明らかになってきている。拓の大学時代の先輩で科学者の秋保(藤木直人)が語ったのは、拓の性格は“科学者向き”だということ。

 この“科学者向き”というのは、自らを現場畑の人間だと述べた雲仙とも重なる点かもしれない。医療の最前線で患者を救い続けることと、病院の未来を見据えて改革のためにうまく立ち回っていくこと。科学的に真実を明らかにすることと、それを法廷の場で裁判官と被疑者、あるいは被害者遺族へと伝えていくこと。雲仙は、病院の次代を背負うであろう磐梯に改革を託した一方で、拓は科学者向きの人間でありながら弁護士の世界へ足を踏み入れたというのも対比としておもしろい点だ。それだけに、自分が変えないといけないという切迫した思いがあったのだろう。彼が変えようとしているのは、父親なのか、あるいは社会や法曹界などもっと大きな何かなのか。それは今後じっくりと丁寧に描かれていくはずだ。

 拓に加え、未だ感情を隠し続ける秋保もまた、ミステリアスで独特の魅力を放っている。シリアスな展開にもコメディ要素を欠かさない本作であるが、今回は聡子(市川実日子)とのやりとりが物語のアクセントに。どちらもSっ気のあるふたりのやりとりは、ハラハラしつつも愛らしく、見ていて楽しい。回を追うごとにキャラクターの深みが明らかになっている本作。役者のかけあいにも今後注目していきたいところだ。 (文=原航平)

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