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バンド主催フェスにおける共通点は? YON FES、DEAD POP FESTiVALから考える

リアルサウンド

18/8/19(日) 10:00

 今年も夏フェスの季節がやってきた。ライブ・エンタテインメント市場は年々拡大中。一時のブームではなく定番化した娯楽として認識されつつある音楽フェスは、年中各地で行われているものの、四大フェスがこぞって開催されるこの季節がやはり「フェスの本格シーズン」といえるだろう。実際、7~9月のスケジュールを見てみると、毎週のようにフェスに出演する予定が入っているアーティストも少なくはない。

 そんななか、今年は夏を待たず、4月7・8日に行われた『YON FES 2018』、6月30日・7月1日に行われた『DEAD POP FESTiVAL』(以下、DPF)に行ってきた。すると、会場にいた観客には活気があり、全体としてポジティブな空気に満ちているように思えたのだ。その勢いはチケットの売れ行きにも表れている。約24,000人を動員した『YON FES』は2月1日時点でソールドアウト(一般発売開始日は1月28日)。一般発売日は6月2日とやや遅めに設定されていた『DPF』も6月13日時点で約20,000枚のチケットをソールドアウトさせているようだ。

 両者の最も大きな共通点は、アーティストが主催しているフェスであるということ。改めて説明すると、『YON FES』は04 Limited Sazabysが主催しており、『DPF』はSiMが主催している。フェスの主催者は、①イベンター/②メディア/③アーティスト/④その他という4つのタイプに分類することができるが、この中で主催者一個人が顔と名前(芸名ではあるが)を公開しているのは③もしくは④のケースが主。この「生産者の顔が見えるお米」的なあり方がフェス自体の発展に起因していると考えられる。

 今や国内最大級のフェスと言われている『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』をはじめ、「参加者こそが主役」ということを謳っているフェスは多く、『YON FES』や『DPF』も例外ではない。そんななか、例えば、04 Limited SazabysのKOUHEI(Dr)は自身のTwitterにて、「主にYON FESの意見を吸い上げるため」とし、一般ユーザーに対してもダイレクトメッセージ機能を開放している。SiMのMAH(Vo)は今年の『DPF』で自身のライブを終えたあとにステージ上で、会場~最寄り駅間を行き来するシャトルバスの本数の少なさについて謝罪していた。このように、「消費者の意見を汲み取ろうとしている」ということを「顔の見える生産者」が発信することにより、観客の抱く信頼感が増大し、「フェスを共に育てている」という意識が芽生えやすくなる。その結果、フェス自体のファンが増えているのではないのだろうか。

 『YON FES』と『DPF』における次なる共通点は、2ステージ制を採用し、タイムテーブル上被りのないような設計になっていること。言い換えるとこれは、「同じ時間帯にライブをしているアーティストが1組しかいない」ということであり、観客側からすると、予期せぬ出会いが起こりやすい環境になっているわけだ。そのうえで『DPF』は「壁を壊す」というテーマの下、音楽ジャンルに拘らず、様々なアーティストを呼んでいる。『YON FES』も、他フェスとの差別化を図りつつ、ブッキングを行っているという。

 2つあるステージのうち、特にサブステージの方は、それぞれの特色が色濃く出ていた印象。今年で言うと、『YON FES』は、SIX LOUNGE、teto、DATSなど若い世代のバンドが多め。『DPF』にはSHE’S、FIVE NEW OLDなど、SiMの持つラウドなイメージからは少し距離のあるバンドも出演していた。また、『YON FES』にも『DPF』にも出演しているCOUNTRY YARDは、他のフェスではなかなか見かけない貴重な存在のバンド。ホームページに掲載されているスケジュールを見ればわかるように、このバンドはライブの本数がかなり多い。それにより培われた確かなライブ力に、04 Limited SazabysやSiMのメンバーも信頼を置いているのではないだろうか。

 一方、メインステージでは、フェスを主催するアーティスト同士の「輪」のようなものが顕在化していた。『HAZIKETEMAZARE FESTIVAL』を主催するHEY-SMITHは『YON FES』にも『DPF』にも出演しているし、『DPF』には『京都大作戦』を主催する10-FEETも出演していた。『DPF』での04 Limited Sazabysのライブ中に、GEN(Ba/Vo)がSiMに『YON FES』への出演オファーをしていたように、おそらく「呼ばれたら呼び返す」的な文化が彼らの中にはあるのだろう。恩を恩で返すような関係性は非常に美しいものだが、そうなると、アーティスト主催フェス同士で何となく出演者が被ってしまうという弊害も招きかねない。その辺りのバランス感覚は今後の課題になっていきそうだ。

 10-FEETによる『京都大作戦』、氣志團による『氣志團万博』、西川貴教による『イナズマロック フェス』などはすでに独自の存在感を確立したような印象があるが、『YON FES』や『DPF』もこの潮流に続くことになるのだろうか。両者とも現時点では来年度の開催をアナウンスしてはいないが、引き続き動向を追っていきたいと思う。

■蜂須賀ちなみ
1992年生まれ。横浜市出身。学生時代に「音楽と人」へ寄稿したことをきっかけに、フリーランスのライターとして活動を開始。「リアルサウンド」「ROCKIN’ON JAPAN」「Skream!」「SPICE」などで執筆中。

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