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tofubeats、mabanua、STUTS……現在のポップカルチャー担う三者の傑作アルバムを聞く

リアルサウンド

18/10/5(金) 8:00

 洋邦問わず充実したリリースがつづく2018年。特にこの夏から秋にかけては、メインストリームとアンダーグラウンドをまたにかけるプロデューサーのソロ作が続いた。星野源とのコラボレーションでお茶の間にまで活躍の場を広げたSTUTS、ジャンルを問わない幅広いプロデュースワークでJ-POPシーンにも存在感を示すmabanua、映画『寝ても覚めても』などの劇伴を手がけて話題を振りまいたtofubeats。現在のポップカルチャーを担う音楽家として注目を集めるこの三者のアルバムから、彼らのいまを透かし見てみたい。

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 まず、8月29日にリリースされたmabanua『Blurred』。ソロアルバムとしては、6年ぶりの3枚目となる。本作は、これまでのソロ作やドラマー/ボーカルとして参加するOvallでのヒップホップ~ネオソウル調のサウンドとは対照的に、折からの80年代リバイバルと共振するスクエアなビートとシンセサウンドが印象的な作品だ。シンセサイザーの不安定なピッチ感やヒスノイズも取り込んだ、まさに「にじんだ(blurred)」音像が空間を包み込む。

 わかりやすいストーリーを排した、あいまいな情景や感情を描く日本語詞が、mabanuaのボーカルの魅力をいっそう引き立てているのも特筆すべき点だ。リズムボックスのチープなサウンドとCharaのウィスパーボイスが心地よい「Call on Me feat. Chara」も、本作のドリーミーな雰囲気にアクセントを加えている。

 しかし、ウォームな感触とは対照的に、低域から高域までがしっかりと鳴る現代的な質感が本作のフックになっている。少しレトロなドラムマシンのサウンドも鮮やかに聞こえるのは、芯を感じさせる低域の鳴りによるところが大きいだろう。たとえば「Tangled Up」で、印象的なパーカッションの響く間奏後に鳴らされるキックの太さは、目がさめるようだ。

 次に、9月5日にリリースされたSTUTS『Eutopia』に目を向けよう。デビューアルバムである前作『Pushin’』は、MPCプレイヤーとしての矜持を感じさせるグルーヴ感を存分に披露しながら、ほしいところにきちんと手が行き届いた手堅いプロダクションが光る一作だった。本作では、さらに生演奏のニュアンスを取り入れ、プロデューサーとして、ソングライターとしての手腕が振るわれている。

 「Dream Away feat. Phum Viphurit」や「FANTASIA feat. 一十三十一」など、重心低めのドラムサウンドにはヒップホップらしさを感じるものの、全体としては生演奏の伸びやかなグルーヴが体を揺らしてくれる。また、「Paradise (Ever Green)」や「Never Been」は、練られたビートのうえにじわじわと高揚感をもたらすハウシーなウワモノが展開し、ヒップホップの文脈から一歩踏み出しているようだ。

 一方、ラップが映えるビートメイクもクオリティを増している。「Sticky Step (feat. 鎮座Dopeness, Campanella)」のタメのきいたビートや、「Above the Clouds (feat. 長岡亮介, C.O.S.A. × KID FRESINO & asuka ando)」のラッパーの解釈の余地をもたせたビートメイクも素晴らしい。ラストの「Changes feat.JJJ」は、前作収録の人気曲「夜を使いはたして feat. PUNPEE」と並ぶアンセムになるはず。

 最後に、つい先日10月3日にリリースされたtofubeatsのメジャー4枚目となるニューアルバム、『RUN』。フィーチャリングを減らしてメッセージ性を強めた前作『FANTASY CLUB』で新たな評価を得て以来、期待を背負った新作だ。今作ではついにフィーチャリング一切なし。トラップ、ハウス、ガラージ、J-POP……と持ち前の多彩なボキャブラリーを繰り出しつつ、これまで以上に自身の歌声がフィーチャーされた一作となった。

 ヒップホップをルーツとしつつも、テクノやハウスといったダンスサウンドをポップに消化したプロダクションが持ち味のtofubeats。本作でもそのバランス感覚は健在で、中盤で続く3つのインスト曲は、「RUN」や「ふめつのこころ」といったコンパクトなポップソングとは対照的な長尺のハウストラックながら、アルバムのカラーに馴染んでいる。ポリリズムを取り入れた「SOMETIMES」のように、テクニカルな挑戦も行っているのも注目だ。

 また、「DEAD WAX」や「ふめつのこころ SLOWDOWN」での、トレードマークだったオートチューンを外した歌声に驚く人も多いだろう。オートチューンという仮面を脱いでなお魅力的な声質もさることながら、『FANTASY CLUB』での切実な問題提起を経て、本作で「走り続ける」ことへの決意へとモードチェンジしたtofubeatsなりの覚悟を感じる。

 いずれの作品も、客演やプロデュースワーク、劇伴といった仕事に引っ張りだこのプロデューサーが、その持ち味を最大限に披露する力作だ。と同時に、明確なビジョンを感じさせるきめ細かなサウンドのケアでリスナーの身体に訴えかけるmabanua、着実にソングライティングのスキルを上げて自身のカラーを革新するSTUTS、ダンスミュージックへの愛着を示しつつもシンガーとして声を上げることに本腰を入れたtofubeatsというように、それぞれの作品のなかには、自身のキャリアや音楽に対する各々のスタンスがはっきりと聴き取ることができる。表現者としての芯とプロダクションの高いスキルを両立させたこれらの作品で、彼らへのリスナーやプレイヤーからの信頼はさらに積み上がることだろう。ぜひ、各々のアルバムが示す世界やサウンドに浸りながら、今後の動向に注目してもらいたい。(imdkm)

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