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“月”=塾を舞台に描く子どもたちの教育 高橋一生×永作博美『みかづき』原作小説から読み解く

リアルサウンド

19/1/26(土) 17:00

 「冬ドラマ」とは厳密には言わないのかもしれないが、ドラマファンから大きな期待を集めている作品がある。NHKで本日1月26日から始まる高橋一生、永作博美主演のドラマ『みかづき』である。

参考:“ちょっとだけ普通じゃない”高橋一生が教える生き方 『僕らは奇跡でできている』が放つメッセージ

 原作は森絵都の同名小説。第12回中央公論文芸賞、2017年本屋大賞第2位、TBS系『王様のブランチ』ブックアワード2016大賞を受賞している。昭和から平成にかけて勃興し、急成長した学習塾の世界を舞台に、子どもたちの教育に情熱を傾けた親子三世代の姿を描く物語だ。

 塾というものが影も形もなかった時代から通塾率が一気に上がった昭和30年代の高度経済成長の時代に始まり、急増した学習塾バッシング、ライバル塾同士の抗争、平成の時代に移ってからの文部省との対立、少子化のゆとり教育、そして教育格差……といった具合に、この国の教育についての諸問題がみっちりと練り込まれている。激しくうねる時代の中で千葉の小さな塾が成長していく姿は、まるで企業小説を読んでいるよう。文庫版で600ページを超える長編小説だが、一気に読ませるドライブ感がある。

 主人公は、教員の免許はないが、落ちこぼれの子どもに勉強を教えるのが天才的に上手い小学校の用務員・大島吾郎(高橋一生)と、彼を強引にスカウトして学習塾を開く聡明なシングルマザー・赤坂千明(永作博美)。ふたりはまもなく結婚し、蕗子(黒川芽以)、蘭(大政絢)、菜々美(桜井日奈子)の三姉妹を育て上げるが、彼女たちは親の仕事を受け継いだり、親に反発したりしつつ、それぞれの道を歩む。吾郎と千明だって一枚岩ではない。時代の流れに揉まれながらふたりの教育観は激しく対立する。さらに物語は吾郎と千明の孫、フリーターの一郎(工藤阿須加)の時代まで続く。

 子どもたちに優しく、教育に情熱を燃やすが、年上の女性の押しに弱い吾郎役のイメージに高橋はよく似合っている。同じく教育者を演じた『僕らは奇跡でできている』(関テレ・フジテレビ系)を連想する視聴者もいるかもしれない。永作とのテンション高めなかけあいも見どころだ。

 「私、学校教育が太陽だとしたら、塾は月のような存在になると思うんです」

 タイトルの『みかづき』とは、千明のこの言葉から採られている。“太陽”にあたる学校を舞台としたドラマや映画は数限りなく作られてきたが、“月”である塾を舞台にした作品はそれほど多くはない(受験をテーマにしたドラマは少なくないが)。システムとしての教育、ビジネスとしての教育からこぼれ落ちてしまう子どもたちに寄り添い、かすかな光をあてていく塾という存在がどのように描かれていくか楽しみだ。

 不安材料といえば「全5回」と尺が短いところだろうか(1話50分)。先述のとおり、長大なストーリーなのでダイジェスト風になってしまう。正直なところ、朝ドラで見たいぐらいだ。文芸評論家の斎藤美奈子氏は文庫版の解説で、『みかづき』の物語は小篠綾子とデザイナーになったコシノ三姉妹の物語(つまり『カーネーション』だ)を想起させると指摘している。なお、『みかづき』の脚本を担当するのは2019年の朝ドラ『スカーレット』(共にNHK)を執筆する水橋文美江である。

 予告編を見ると、ドラマの内容は深刻になりすぎることなく、どこかコミカルな味付けがなされている模様。森絵都の原作小説にあるリーダビリティの高さを活かすようなつくりになっているのではないだろうか。エンディングではなんと高橋と永作ら出演者たちがダンスを披露するらしい。原作の分厚さを見れば、重厚さを期待する向きも多いかもしれないが、あまり身構えることなく楽しみたいと思う。

(大山くまお)

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