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世界席巻中の『アクアマン』、興収1位スタート ヒットの秘訣は「作品の独立性」にあり!?

リアルサウンド

19/2/14(木) 17:00

 先週末の映画動員ランキングは、『七つの会議』が土日2日間で動員21万3000人、興収2億7400万円で2週連続1位。初登場で動員ランキングの2位にランクインしたのは『アクアマン』。土日2日間で動員21万人、興収3億1400万円。つまり、動員でも『七つの会議』とほぼ横並び、興収では大きく上回って先週末の1位。初動3日間の動員は37万人、興収では早くも5億円を突破するという景気のいいスタートをきったことになる。

参考:世界の情勢を変化させようという重要なテーマも 『アクアマン』成功の秘密を分析

 言うまでもなく、『アクアマン』は、2013年公開の『マン・オブ・スティール』から始まるDCエクステンデッド・ユニバースの最新作。今作と同じジェイソン・モモアが演じているアクアマンのキャラクターは、2016年公開の『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』のカメオ出演で顔見せを済ませ、2017年公開の『ジャスティス・リーグ』では大いに活躍。今作が3作目の登場にして、初の単独作という流れ。時系列的にも今回の『アクアマン』は『ジャスティス・リーグ』よりも後の話となっている。

 少々驚かされるのは、DCエクステンデッド・ユニバースで直近の前作にして、アクアマンだけでなくバットマンやスーパーマンといった知名度トップクラスのキャラクターたちも勢揃いしていた『ジャスティス・リーグ』の日本での公開初週土日2日間の成績が、今回の『アクアマン』を大きく下回る興収2億400万円に過ぎなかったこと。たった1年ちょっとの間で一体何があったのか?

 一つは、やはり作品の前評判だろう。本国アメリカから1週遅れというタイミングで公開された『ジャスティス・リーグ』だったが、情報収拾力に長けた日本のアメコミ映画ファンの間では、公開時点で本国での作品への悪評と興行的苦戦がすっかり認知されていた(ちなみに個人的に『ジャスティス・リーグ』は、少なくとも『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』の何倍も楽しく観ることができた作品だったが)。一方、『アクアマン』は作品への評価こそそこそこだったものの、あっという間に世界興収ではDCエクステンデッド・ユニバースでトップに躍り出るメガヒットに。アメリカでの公開から約1か月半後という日本公開までのタイムラグの期間、ファンの期待は高まり続けていた。

 もっとも、世界興収ではDCエクステンデッド・ユニバースのトップどころか、その前の時代の『ダークナイト ライジング』も超えてDC映画史上1位となった『アクアマン』だが、アメリカでは現時点でもDCエクステンデッド・ユニバースでは歴代3位(今後も1位の『ワンダーウーマン』を超えることはないだろう)、DC映画全体では歴代5位(1位はダントツで『ダークナイト』)にとどまっている。実は『アクアマン』が世界で初めて一般公開されたのはアメリカではなく中国。そのことからもわかるように、実は『アクアマン』大ヒットの原動力は、中国をはじめとするアメリカ以外のマーケットでの新しいファンの開拓に成功したことにある。

 2008年公開の『アイアンマン』からスタートして、現在まで20作品に及ぶ公開作がありながらも、プロデューサーのケヴィン・ファイギの見事な手腕によってある種の一貫性と連続性を保っているマーベル・シネマティック・ユニバース。その成功にあやかったDCエクステンデッド・ユニバースだが、まだ始まってたった5年、『アクアマン』を入れても6作品しかないにもかかわらず、主要キャストの離脱の噂を筆頭に、既にいろんなところで破綻が見え隠れしている。普通に考えれば、それは現在のDC作品の短所であるわけだが、『アクアマン』の世界的大ヒットはむしろそれを長所へと転換してみせた。つまり、ユニバースの他の作品を観てなくても『アクアマン』は楽しめるという感覚が観客から共有されていて、実際の仕上がりもそのような作品になっているのだ。

 以前、本コラムで『デッドプール』シリーズや『ヴェノム』の日本マーケットでの健闘について書いた時にも触れたが、今回の日本でのヒットの要因もそこにあるはずだ。数年前まで、スーパーヒーロー映画に他のスーパーヒーローが顔を出すことは作品の「売り」とされてきたが、むしろ『アクアマン』ではその独立性こそが「売り」となっている。日本のマーケットだけでなく、今や世界的にもそのような大きな時代のターニングポイントに、アメコミ映画全体が立たされているのかもしれない。(宇野維正)

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