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GACKT、映画『翔んで埼玉』出演はもはや必然? アーティスト活動の足跡を辿る

リアルサウンド

19/2/12(火) 8:00

 「埼玉県から東京に行くには通行手形が必要なのです」「そこらへんの草でも食わせておけ! 埼玉県民ならそれで治る!」などという埼玉県ディスが痛快な魔夜峰央原作の漫画『翔んで埼玉』が30年以上の時を経て実写映画化され、2月22日に公開される。埼玉県といえば、毎年ブランド総合研究所が発表する都道府県魅力度ランキングでは40位台が定位置で、“埼玉にはなにもない”や“だ埼玉”というあまりうれしくないあだ名が付けられたりと言われたい放題な現状である。

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 この『翔んで埼玉』は、東京都民から虐げられ身を潜めている埼玉県民の話。ある日、東京でトップの高校・白鵬堂学院の生徒会長で都知事の息子である壇ノ浦百美と、アメリカ帰り帰国子女で容姿端麗な謎の転校生・麻実麗による愛の物語。しかし、百美は麗が埼玉県出身であることを知ってしまい、東京と埼玉の県境で引き裂かれることになってしまう。まさに埼玉版『ロミオとジュリエット』とも言える愛の逃避行と、その中で埼玉県解放を成し遂げるべく戦いを挑んだ者たちの革命のエンターテインメントなのだ。

 そんな『翔んで埼玉』の主演に二階堂ふみ(壇ノ浦百美)とともに抜擢されたのがGACKT(麻実麗)だ。シンガーソングライター以外に俳優としても活躍するとはいえ、“なぜ現在45歳のGACKTが男子高校生役に?”という疑問は拭えない。実際にGACKT本人もオファーを受けて、「設定に無理があるんじゃないか?」と思いつつも以前から魔夜の作品のファンだったこともあり引き受けたと映画化発表時の公式コメントで明かしている。しかし、45歳で高校生の役はどうなのか? という気持ちはまだ払拭しきれていないようだが、そこに関してはこの漫画自体がかなり無理のある設定なので、無理が一つくらい増えても問題ないと思っているとも語っている。本稿では改めて“GACKTとは”というところに焦点をあて、なぜ『翔んで埼玉』にキャスティングされたのかを紐解いていきたいと思う。

 今となってはソロアーティストの印象が強いGACKTだが、元々はMALICE MIZERの二代目のボーカルとして世に現れた。MALICE MIZERは1992年に結成されたヴィジュアル系バンドで、1997年にメジャーデビュー(当時はGackt表記で加入は1995年)を果たし、 “ヴィジュアル系四天王”のひとつとしてヴィジュアル系ブームを牽引したバンドである。当時のヴィジュアル系といえばメタルやポジティブパンクをルーツに感じさせるバンドが多かった中、中世ヨーロッパ風な華美な出で立ちで徹底した様式美を構築し、音楽性もクラシックやバロック、フレンチポップといったその他のヴィジュアル系バンドとは一線を画す音楽を表現。また、ライブではメンバーが楽器を置いて踊ったりとバンドという枠組みを超えた自由な表現で、“魅せる”ことに特化。その美しいルックスや衣装も相まって当時は究極のヴィジュアル系と呼ばれたり、ヴィジュアル系は好きではなくてもMALICE MIZERは認めざるを得ないといった声も聞かれるほどであった。余談だが、ゴールデンボンバーの鬼龍院翔はこのMALICE MIZERに多大な影響を受け、GACKTを神と崇めていたと語っている(参照:https://realsound.jp/2016/07/post-8370.html)。

 しかし、人気絶頂の1998年7月に行われた横浜アリーナ公演を最後にGACKTは失踪。年が明けた1999年1月に正式にMALICE MIZERからの脱退がアナウンスされ、その約半年後の6月にソロデビューを果たす。2001年にリリースされた「ANOTHER WORLD」は28万枚のヒットを記録。翌年には同曲で自身初となる『NHK紅白歌合戦』に出場し、着実にその知名度を上げ、地上波の歌番組にもたびたび出演するようになった。中でも『うたばん』(TBS系)での“豚バラ”や“マグナム”のエピソードや、中居正広にデコピンをお見舞いした回を覚えている方も多いのではないだろうか。その見た目のイメージとキャラクターの面白さとのギャップが世間に受け、ついに彼は2001年から『堂本兄弟』(フジテレビ系)で初の音楽バラエティ番組のレギュラーとなる。これが人気にさらに火をつけ、2005年には自身初となる東京ドーム公演を成功させることとなったのだ。さらに、2007年にはNHK大河ドラマ『風林火山』で上杉謙信役を演じたことをきっかけに俳優として映画やドラマにも出演。活動の場をさらに広げた。

 また、2009年からは「GACKTが仕掛ける、本気の遊び!!」と称し、学園祭をコンセプトにGACKTが扮する神威財閥の息子・神威楽斗が”性”徒会長を務める学園で行われるセレブで少し破廉恥な楽園祭(学ぶのではなく楽しむという意味での当て字)・『神威♂楽園』を開催している。これは学園祭がコンセプトなだけあり、学生服のドレスコードが義務付けられ、出演者が軽音楽部としてL’Arc~en~CielやSMAP、B’zやももいろクローバーZなど様々なアーティストのコピーを披露したり、演劇部としてコントに挑戦したりと、“本気で遊び、本気で学び、命をかけて物事に取り組む”という神威♂楽園のモットーを体現したようなエンターテイメント性が高いイベントとなっている。

 ここまでGACKTというアーティストの足跡を辿ってみると、今回『翔んで埼玉』へのキャスティングはなるべくしてなったと思えて仕方がないのは筆者だけだろうか。まず、劇中で彼が身に付けている中世ヨーロッパを思わせる王子のような衣装はMALICE MIZERを彷彿とさせる。さらに、バラエティ番組で見せるギャップのあるキャラクターは間違いなく邦画史上最大の茶番劇と謳われる今作に還元されているはずだ。そして、エンターテインメント性に振り切った学園モノで、その現場にも全力で取り組み、観る人を楽しませるために、まずはGACKT本人がこの作品を楽しむというスタンスは『神威♂楽園』のモットーそのものだと感じる。

 事実、魔夜自身も「名前が上がった時、そこにいた一同全員がのけぞり次の瞬間、ありか、と頷いたものです。願ってもないキャスティングですが、この役がGACKTさんの人生の汚点にならないことを祈っております」とコメントしていることからも、やはりこのキャスティングは必然だったと思わずにはいられないのだ。むしろGACKTにしか演じることの出来ない役だとすら思える。そんな空前絶後のディスり合戦の火ぶたは間もなく切って落とされる。埼玉県民の人はもちろん、そうでない人もその戦いの行く末を見届けてみてはいかがだろうか。(オザキケイト)

※記事初出時、一部情報に誤りがございました。訂正の上、お詫びいたします。

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