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バルーン=須田景凪、2019年最注目アーティストと言われる理由 須田名義で獲得した肉体性を分析

リアルサウンド

19/1/17(木) 14:00

 『JOYSOUND』より発表されているカラオケランキングにて、2017年発売曲総合1位、2017年~2018年2年連続10代のランキングで1位を獲得した楽曲「シャルル」(JOYSOUNDカラオケランキング、2018年年代別カラオケランキング)。現在もリアルタイムランキングで米津玄師「Lemon」、DA PUMP「U.S.A.」といった大ヒット曲に続いてランクインしている同曲は、10代~20代のリスナーにもっとも支持されている楽曲と言えるだろう。YouTubeの再生回数も2100万回(ボカロ版、セルフカバー版をあわせると3000万再生)を超えている「シャルル」を歌っているのは、現在急激に注目度を上げ続けている須田景凪(すだ・けいな)。2017年からこの名前で活動をスタートさせたシンガーソングライターだ。

参考:はるまきごはんが語る、表現活動で大事なこと「自分を好きな人にどれだけいいものを伝えられるか」

 須田景凪のキャリアは2013年、ボカロP“バルーン”としてスタートした。ニコニコ動画に「レディーレ」(ボカロ版:約121万回再生/セルフカバー版:約148万回再生)、「メーベル」(ボカロ版:約138万回再生/セルフカバー版:約300万回再生)、「雨とぺトラ」(約290万回再生)といったヒット曲を次々と発表し、瞬く間に知名度をアップ。自身が歌うセルフカバーも大きな注目を集め、シンガーとしての驚異的なポテンシャルを証明した。その才能を端的に示しているのが、前述した「シャルル」というわけだ。

 「シャルル」の中心にあるのは、彼自身の声と言葉、つまり歌だ。この曲で歌われているのは、恋人(あなた)との別れを経験した男子。〈さよならはあなたから言った それなのに頬を濡らしてしまうの〉という歌い出しからグッと引き込まれるが、具体的なシチュエーションは説明されないまま、〈深い青〉〈朝焼けとあなたの溜息〉といったフレーズによって、聴き手に色彩豊かな情景を想起させることに成功している。

 さらに印象的なのは、意味とリズムをバランスよく兼ね備えた〈嫌嫌嫌〉〈否否否〉〈今今今〉など強い感情とキャッチ―な五感を併せ持った歌詞。一瞬でリスナーの心を捉える即効性、そして、何度でもリピートして意味を読み取りたくなる深みを同時に体現していると思う。もちろんボーカルも絶品。一度聴くだけで耳から離れない個性を持ちつつ、あくまでも楽曲の世界を描くことに心を砕いたボーカリゼーションは、他の楽曲にも通じる彼の基本的なスタイルなのだろう。歌のリズムの良さもまた、彼の大きな特徴だ。

 曲の場面展開を演出するリズムチェンジ、主人公の心の葛藤とリンクするようなギターフレーズも、歌の魅力をしっかりと増幅させている。“中毒性があるメロディ”“豊かな表現力を備えたボーカル”“細部までこだわり抜いたサウンドメイク”は楽曲を評する際の常套句だが、この楽曲はすべての要素において、群を抜いている。

 2018年1月には須田景凪名義の1stアルバム『Quote』を発表し、2018年2月12日付オリコンウィークリーチャートで13位を記録。3月に行われた1stライブ『Quote』(渋谷WWW)、夏に開催された『須田景凪 LIVE 2018 “Dolly“』(渋谷 WWW X/梅田 Shangri-La)も即ソールドアウトさせるなど活動の規模を拡大している彼は、2019年1月、ついにメジャーシーンに進出。デビュー作となる1stEP『teeter』を聴けば、独創性とポピュラリティを備えた須田の音楽世界が大きく広がっていることを実感してもらえるはずだ。

 まずは「パレイドリア」を聴いてみてほしい。和的なイナたさを意識的に取り入れただろうギターフレーズから始まるこの曲は、ポップかつトリッキーなバンドサウンドを軸にしたアッパーチューン。語感、リズム、意味性をハイブリッドささせたソングライティング、心地よい中毒性をもたらすメロディラインなど、彼独特のクリエイティビティをさらに進化させたこの曲から伝わってくるのは、生々しい肉体性が大きく増していることだ。

 おそらく昨年のライブの経験も作用しているのだと思うが、須田は今、音楽を介したリスナーとの直接的なコミュニケーションに興味が向いているのではないだろうか。これまでほとんど世に出ていない歌唱シーンを含む初の実写MVを制作したのも、その証左だと思う。

 『teeter』には「パレイドリア」のほか、ダンロップのスタッドレスタイヤ「WINTER MAXX 02」のプロモーションのために制作された短編アニメ『ROAD TO YOU ~星降る丘の約束~』の主題歌「レソロジカ」、昨年7月にYouTubeで公開され130万回再生を超えた「Dolly」などを収録。グル―ヴィーかつダンサブルなナンバーから叙情的なミディアムバラードまで、楽曲の幅が広がっているのも印象的だ。レコーディングには、モリシー(Gt/Awesome City Club)、長島涼平(Ba/フレンズ/the telephones)、村田シゲ(Ba)、堀正輝(Dr)が参加。優れた演奏力と表現力で、楽曲の魅力を的確に引き出している点にも注目してほしい。

 “ボカロPからシンガーソングライターへ”、“10代・20代の若者から着火”、“作詞・作曲・アレンジまでを手がけるマルチクリエイター”など、米津玄師との共通点を取り上げられることも多い須田景凪だが、その音楽性、ボーカルスタイルからは、明確な個性がはっきりと感じられる。いずれにしても須田が2019年の音楽シーンにおいて、もっとも注目すべきニューカマーであることは疑いようがない。『teeter』から始まるアーティスト・須田景凪のストーリーを多くの音楽ファンとともに共有したいと思う。(森朋之)

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