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Swindle、The Cinematic Orchestra、K Á R Y Y N……小野島大、エレクトロニックな新譜9選

リアルサウンド

19/3/10(日) 8:00

 ロンドン生まれのDJ/プロデューサー、スウィンドル(Swindle)の4年ぶり新作『No More Normal』<Brownswood Recordings / Beatink>が素晴らしい大傑作です。伝統的なジャズ、ファンク、R&B/ソウルとグライム、ダブステップ以降のベースミュージック〜ダンスミュージックが交錯するところから出てきたミクスチャーミュージックで、本作は、これまで以上にポップで、開放的で、ソウルフルで、エモーショナル。その豊穣でふくよかな音から、アーティストのこれまでの経験や情熱、生活や人生、ひいてはそれを支える音楽の伝統の厚み、奥行き、広がり、生命力といったものまで感じ取れます。既存の常識や価値観に囚われず自由に生きたいという哲学がアルバムタイトルに結実しています。将来はクインシー・ジョーンズのようなプロデューサーになりたいと熱望するこの男。その豊かな才能に今後も要注目です。(参考:Beatink公式ページ

Swindle feat. Kojey Radical – Coming Home (Official Video)
Swindle『No More Normal』

 ジェイソン・スウィンコー率いるThe Cinematic Orchestraの、なんと12年ぶりのオリジナルアルバムが『To Believe』<Ninja Tune / Beatink>です。ジェイソンの長年の協力者であるドミニク・スミスを共同制作者に迎え、J・ディラやフライング・ロータス、ドクター・ドレー、サンダーキャットやカマシ・ワシントンからレイ・チャールズまで共演経験のあるミゲル・アートウッド=ファーガソンが手がけるストリングスを全面的にフィーチャー。彼らの根本にあるクラブジャズ的なイディオムを下敷きにしながらも、オーケストレイションを導入することでバンド名通りのシネマティックでロマンティックな面が強調され、彼ららしい美意識と世界観が貫かれた素晴らしいアルバムに仕上がっています。アレンジも、サウンドも、メロディも、リリックも、演奏も、すべてが一部の隙もなく完成されながらも、そこには聴き手の自由な想像力を羽ばたかせる余白があります。必聴の大傑作。4月には早くも来日公演も予定されています。3月15日全世界同時発売。(参考:Beatink公式ページ

The Cinematic Orchestra – A Caged Bird/Imitations of Life (feat. Roots Manuva)

 シリアをルーツに持ち、アラバマで生まれ、インディアナ、LAで育ち、NY、ベルリンなど世界中を移り住んできた女性シンガーソングライター、カーリーン(K Á R Y Y N)が英国の名門<Mute>と契約、リリースするのが1stアルバム『The Quanta Series』<Mute / Traffic>です。本人も認めるようにビョークに通じる音楽性ですが、エレクトロニカ、R&B、現代音楽などが交配されたポストクラシカル〜アンビエント〜ドローンなトラックと、本人の変幻自在で魔術的なボーカルコラージュが交錯するミステリアスでスピリチュアルなサウンドは一聴の価値があります。日本盤は『Pitchfork』でベストニュートラックに選ばれた「MOVING MASSES」をボーナストラックとして収録。3月29日発売とまだ先のリリースですが、ぜひご記憶のほどを。(参考:Traffic公式ページ

K Á R Y Y N / THE QUANTA SERIES
K Á R Y Y N | MOVING MASSES
K Á R Y Y N | QUANTA 1: ALEPPO

 現在のAOR再評価を決定づけた功労者のひとりとも言えるトロ・イ・モア(Toro Y Moi)ことチャズ・バンディックの新作が『Outer Peace』<Carpark Records / Hostess>。前作は原点回帰的な内省的チルウェイブアルバムでしたが、今作はポップでキャッチーでグルービーな、とても活気のあるエレクトロファンク〜ディスコアルバムに仕上がっています。10曲30分というサイズもあって勢いがあり、あっという間に聞き終わる感じ。ライブで盛り上がりそうな曲が多く、フジロックがとても楽しみです。

Toro y Moi – “Ordinary Pleasure” (official music video)
Toro y Moi – “Freelance” (Official Music Video)
Toro Y Moi『Outer Peace』

 デンマーク電子音楽界の第一人者ローク・ラーベックによるソロプロジェクト、クロアティアン・アモール(Croatian Amor)の6枚目のアルバムが『ISA』<Posh Isolation>。ロークは昨年リリースされたイヴ・トゥモアの大傑作『Safe In The Hands Of Love』にも参加していますが、今作ではお返しにイヴが参加しています。ダークでエクスペリメンタルなエレクトロニカ〜ドローン〜アンビエントですが、瞑想的で思索的であると同時に、メランコリックなメロディと透明感のある電子音が包み込むように美しく、フッと胸元にたぐり寄せられるような魅力があります。特に終曲「In World Cell」の壮大で深遠な展開は聞き物です。

Croatian Amor “Isa”
Croatian Amor『ISA』

 フランスはリヨン出身のプロデューサー、フォラモア(Folamour)の2年ぶり3作目『Ordinary Drugs』<FHUO>。前作『UMAMI』が、ダニー・クリヴィットやローラン・ガルニエなどにフックアップされ注目を集めた人ですが、ピアノやホーンなど生楽器をフィーチャーしたソウルフルでジャジーなディープハウスとして抜群のセンスとクオリティです。前作よりもジャズ色が強まり洗練度も増して、バランスが良くまろやかでファットな音質も素晴らしく、リスニング用としてもフロア用としてもいける最近出色の傑作と言えるでしょう。

Folamour – Ordinary Drugs.
Folamour『Ordinary Drugs』

 またフォラモアと同じリヨン出身のエチレン(Ethyène)の『Brotherly Love』<Moonrise Hill Material>のエレガントでシネマティックなディープハウスも実に魅力的です。

Ethyène – Brotherly Love
Ethyène『Brotherly Love』

 ベルリン在住のDJ/プロデューサー、エフデミン(Efdemin)ことフィリップ・ソルマンの5年ぶり4作目が『New Atlantis』<Ostgut-Ton>。英国の哲学者フランシス・ベーコンの同名小説からインスピレーションを得たという本作は、黒光りする四つ打ちのストイックなビートに、ヒプノティックなアンビエント〜ドローンサウンド、ダルシマーやハーディ・ガーディ、ギターといった楽器が瞑想的に交錯するミニマル〜ディープテクノ。ヨーロッパの古楽とエクスペリメンタルなエレクトロニカが合体したようなサウンドはほかにない個性で、実に魅力的です。こういう曲が鳴らされるパーティーで踊ってみたいもの。

Efdemin | New Atlantis [Official Visual]
Efdemin『New Atlantis』

 ベルギーのアンダーグラウンド・ハウスの気鋭、UC・ビーツ(UC Beatz)は、さきごろ『Mosaic Grooves』<Entrepôt Records>という素晴らしいアルバムを出したばかりですが、間髪を入れずリリースされた『Hidden Treasures』<Underluxe Records>は、自主レーベル<Entrepot Records>から、2014年〜16年にかけて限定数百枚のバイナルオンリーでリリースされたトラックをコンパイルしたもの。マメにバイナル盤をチェックしきれない私のような無精なリスナーには大変ありがたいアルバムです。フィリーディスコやオールドスクールなソウル〜ファンク、ジャジーブレイクスなどサンプリング主体の太いボトムと共に展開する、アルバムよりもロウで荒々しいダンストラック集です。

Untitled Track 3 / Untitled Track 4 (ER02)
UC Beatz『Hidden Treasures』

■小野島大
音楽評論家。 『ミュージック・マガジン』『ロッキング・オン』『ロッキング・オン・ジャパン』『MUSICA』『ナタリー』『週刊SPA』『CDジャーナル』などに執筆。Real Soundにて新譜キュレーション記事を連載中。facebookTwitter

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