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高橋一生、戸田恵子と涙の対峙 『僕らは奇跡でできている』2人を繋いだ田中泯の包容力

リアルサウンド

18/11/28(水) 6:00

 山田(戸田恵子)に向けられた、「僕は山田さんから生まれたんですよね?」という一輝(高橋一生)の衝撃的な一言。二人の間には気まずい空気が流れ、これまでの愉快な関係は大きく様変わりしてしまう。

【写真】『僕らは奇跡でできている』第8話で悩みを抱える高橋一生

 11月27日に放送された火曜ドラマ『僕らは奇跡でできている』(カンテレ・フジテレビ系)第8話では、一輝と山田それぞれが、以前の二人の関係を取り戻そうと奔走する。

 本作の見どころの一つに、山田と一輝の、ユーモア溢れるすれ違い劇の妙があるが、それが今回は“心のすれ違い”に。一輝は育実(榮倉奈々)に家族との仲直りの方法を尋ね、山田は、一輝の祖父である義高(田中泯)や、一輝の恩師であり上司の鮫島(小林薫)に助言を求める。

 ところで、なぜ一輝が山田のことを母親だと気づいたのかというと、学生時代に初めてパスポートを取得したときに発覚したのだという。しかし、それから長いこと、その件には触れず、互いに“主人と家政婦”の関係を演じてきたというわけだ。一輝の将来についての軽い話から、二人して、蓋をしていた記憶の箱を、思いがけず開けてしまったのだ。

 やがて山田は、一輝に事の真相を涙ながらに語り、一輝もまた、目にいっぱいの涙をためて、真実を受け止める。山田は、幼い頃の一輝の個性を欠点だと捉え、受け入れることができなかったのだという。そしてある日、一輝の「丸ごとのタコが見たい」との言葉を受け、山田は義高から2万円をもらい、そのまま帰ってこなかったらしい。タコ代に2万円というのは、「温泉でも行って、少しゆっくりしてきたらいい」という、義高の気遣いでもあった。一輝のタコ嫌いの理由は、ここに隠れていたのだ。

 さて、そんな気遣いから、母である山田が出ていくきっかけを作り、また、山田が家政婦として戻ってくることを快く受け入れた義高。一輝にとって、そして本作において、彼は重要な人物だ。一輝の世界の見方を肯定し、その一輝に世界の見方や付き合い方を優しく諭す存在なのである。

 演じているのは、その渋い存在感で、軽快なストーリー展開に重みと深みを与えている田中泯。今回も、戸田が演じる山田の狼狽する様子を静かに受け止めている。公開中の映画『人魚の眠る家』でも田中の存在は大きい。篠原涼子と西島秀俊演じる夫婦の娘が不慮の事故により命を落とすことから始まる物語を描いた作品で、彼が演じるのはその娘の祖父だ。突然の不幸に胸を痛めつつも、ことの成り行きを冷静に、俯瞰的に見守る存在である。分かりやすい言葉や行動で感情を表出させるのではなく、佇まいや些細な仕草に感情を滲ませる。俳優や踊りを生業とする、表現者である田中だからこその成せる業なのだろうか。この『僕らは奇跡でできている』での言葉の一つひとつが一輝への訓示であることも手伝って、彼が口にするとまるで格言のように私たちにもジーンと響いてくるのだ。

 ラストで一輝は、「(山田さんが)家政婦か母親なのかは重要じゃない。重要なのは、山田さんが存在していること」と口にし、「山田さんから生まれてきて良かった」と続ける。山田が出ていく原因ともなった“タコ”を、一輝は嫌なことの象徴だと思い込んでしまっていたが、実際には、食べられなくなるほどに、好きの象徴だったようである。そして二人はタコ料理を笑顔で囲む。なんとも温かな幕切れであった。

(折田侑駿)

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