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稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾が“映画俳優”として飛躍 「新しい地図」だからこそ挑戦できること

リアルサウンド

19/4/10(水) 6:00

 稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾の3人によるファンクラブ「新しい地図」の発足から1年半以上が経った。アイドルスターとして活動してきた3人は、これまでのファンを大切にし、アイドルとしての自分たちを忘れずにいるが、同時に、役者としての活躍の場を広げている。それぞれに舞台にも立っているが、油の乗った40代を迎えた彼らが、邦画界を盛り上げてくれるだろうと期待がかかる。

 SMAPを解散して以降、彼らにとって初めての映画であり、これからの決意表明にも映ったのが、2018年4月に公開されたオムニバス『クソ野郎と美しき世界』である。

 エピソード1は稲垣吾郎が恋に落ちたピアニストを演じた「ピアニストを撃つな!」。鬼才として知られる園子温がメガホンを取り、園作品の常連が多数出演。稲垣は、広い一室でひとりガウンをまとってワインを片手に愛を語り、ピアノを激しく弾きまくる男・ゴローを、テンションの高い園作品に埋もれることなく、ユーモアを交えて演じた。

 そして今年2月には単独主演作『半世界』が公開。骨太な人間ドラマを撮ることで知られる阪本順治監督のオリジナル作品であり、とある地方都市を舞台に、稲垣は中学生の息子を持つ炭火焼職人の男・紘を演じた。インタビューで、山中にこもってのロケ撮影も役柄に影響を与えてくれたと話している稲垣。イメージにはない土臭く不器用な男になりきった。これまでにも様々な役を演じてはきているのだが、改めて、稲垣吾郎のイメージに留まらない役者であることを証明している。

 今年はさらに日本・ドイツ・イギリス共同製作による、手塚治虫作品をクリストファー・ドイルを撮影に迎えて手塚眞が映画化する注目作『ばるぼら』の主演作公開も控える。手塚治虫が芸術とエロス、オカルティズムを前面に押し出した問題作で、初共演となる二階堂ふみとどんな化学反応を見せるのか、期待が膨らむ。

 『クソ野郎と美しき世界』のエピソード3「光へ、航る」は、爆笑問題の太田光の監督作。息子を失ったやくざ者の父オサムを草なぎ剛が演じ、冒頭のアップのシーンから射るような眼差しで観客を圧倒。その後も、妻役の尾野真千子と激しい魂のぶつかり合いを見せ、オサムの悲しみややるせなさを滲ませた。

 また、現在は西加奈子の児童文学を映画化した『まく子』が公開中だ。監督は世界でも評価を受ける『はつ恋』『過ぐる日のやまねこ』の鶴岡慧子。不思議な転校生コズエと出会った思春期の小学5年生・慧(サトシ)の成長譚を描く。草なぎが演じているのは、慧の父親・光一役。隣町の女性との浮気を続ける女好きで、慧からダメな大人と軽蔑されている。「光へ、航る」も『まく子』もともにダメな父親役だが、見せる顔は全く異なっており、『まく子』での終盤の慧とのふたりのシーンは、実にナチュラルなものだった。柔も剛も胸に響かせることのできる草なぎ。早く次の作品が観たい。

 そして『クソ野郎と美しき世界』のエピソード2「慎吾ちゃんと歌喰いの巻」は、香取慎吾が“慎吾ちゃん”として出演。舞台演出家・劇作家としても評価の高い山内ケンジ監督(『ミツコ感覚』)が生み出したのは、歌を喰われたアーティストという、香取慎吾本人とおぼしき役だった。香取は、“絵を描く”という素晴らしい才能を持つが、三谷幸喜作や『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の両さんなど、はまり役がありつつも、映像作品においては、稲垣や草なぎのほんの少し後ろを行く印象もある。

 だが、「慎吾ちゃんと歌喰いの巻」では、本人と言ってもいい役柄であったためか、驚くほど自然にその場を支配していた。矛盾するようだが、しかし自分に近いというのは決して簡単な役ではない。自分をさらすことは、ある意味、何かを演じることよりも勇気のいることだ。そこを素直に見せた香取の強さを感じる。そして6月には、現在の日本映画の先頭を走る白石和彌監督作『凪待ち』で主演を飾る。ここで“慎吾ちゃん”ではなく、40代の男となった香取慎吾の生身の姿がさらに覗けるかもしれない。

 3人が揃って登場した『クソ野郎と美しき世界』のエピソード4「新しい詩(うた)」(児玉裕一監督)には、稲垣、草なぎ、香取の決意がみなぎっていた。彼らだから培ってきたものを捨てることなく、「新しい地図」としてスタートしたからこそ踏み出せる場所へと、果敢に攻めていくその姿勢は、すでに日本の映画界を担う監督の間で重宝される存在として形になって現れ出てきている。キャリア十分にして、まだ折り返し地点でもある3人。これから、映画俳優としてもなお一層、魅了していってくれるに違いない。(文=望月ふみ)