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『3年A組』作り手と菅田将暉の姿が重なる? “展開の速さ”で視聴者惹きつける現代的ドラマの作り方

リアルサウンド

19/2/24(日) 6:00

 日本テレビ系で日曜夜22時30分から放送されている『3年A組-今から皆さんは、人質です-』(以下、『3年A組』)は、ミステリーテイストの学園ドラマだ。物語の舞台は、魁皇高校の3年A組。卒業まで残り10日となった3学期末。クラスメイト29人は担任の柊一颯(菅田将暉)に爆発物が仕掛けられた教室に閉じ込められる。

「今から、皆さんには、人質になってもらいます」

 柊はそう言うと、半年前に命を落とした生徒・影山澪奈(上白石萌歌)について語り始めた。水泳部でオリンピック代表候補にもなっていた影山はなぜ命を落としたのか? 生徒たちはスマートフォンと荷物を没収され、原因を考えろ、真実を知っているものは名乗り出ろ、と言われる。柊は自ら警察に通報。マインドボイスというSNSを通じて課金を求める。そして、柊の出す課題に答えられなかったら、一人ずつ生徒の命を奪うと言う。そして第1話のラスト、生徒の一人が柊にナイフで刺し殺されて物語は終了する。

【写真】『3年A組』名シーン

 1話を見終えた時、最初は映画の『告白』や『悪の教典』のように教師と生徒が殺し合うホラーテイストの作品になるかと思った。

 永野芽郁を筆頭に生徒役の俳優のキャスティングにも力が入っていた。そのため、生徒の一人一人を主役にした話を毎話展開し、最後に柊が犯行理由を語り、それが捻れた形での教育的メッセージだったという『女王の教室』(日本テレビ系)のようなオチを予想していた。

 だから、柊が実は生徒を殺してなかった、という展開にはどこか安心すると同時に、やっぱりそういう方向に行くのかと感じた。しかし、ふつうのドラマだったら最終話でネタばらしすることを、今作は前半で見せてしまった。

 この展開の速さこそが、『3年A組』の面白さだろう。本作は視聴者の想像する展開を早送りで見せていくことで、教師視点の学園ドラマにおける物語のパターンのすべてを詰め込もうとしているのだ。

 最初は教師が生徒を裁くピカレスクドラマかと思わせながら、実は柊は生徒を殺しておらず、実は余命いくばくで、命をかけてこの計画を実行したことが明らかになる。そして、影山を殺したのは、生徒ではなく教師ではないか? と視点を切り替える。

 つまり話数が進むごとに設定と状況がどんどん変わっていくのだ。このような短いスパンで物語が急展開していく進み方は、今の1クールのドラマやアニメのヒット作に見られる傾向だ。

 例えば、昨年放送された『大恋愛~僕を忘れる君と』(TBS系)もそういうドラマだった。はじまった当初はエリート女医と元小説家のフリーター男性との格差恋愛モノだったのが、第1話ラストで女医がアルツハイマー病の前段階の軽度認知障害だとわかり、難病モノとなっていく。そして中盤で中年男性の側が小説家として再ブレイクすると格差恋愛の要素が消えて夫婦モノの難病モノとなり、そこにヒロインと同じ病気の青年が恋のライバル役として登場するという形で、10話の中で話が何度も変わっていく。

 『大恋愛』がこういった超展開の連続となったのは、恋愛ドラマにおける必勝パターンをすべてぶち込もうと思ったからだろう。

 逆にいうと、今の目の肥えた視聴者には、あらゆる物語のパターンがどうなるかが、ある程度頭に入っているので、1話を見た時点でどういう話か予想がついてしまうのだ。だから、あらゆるパターンを短い期間で展開しながら、関心を持続させ、一つのジャンルをまるごと一本に圧縮したような物語となってしまうのだろう。これを学園ドラマで展開しているのが『3年A組』だ。

 同じことはアニメでも起きている。『魔法少女まどか☆マギカ』なら魔法少女モノの集大成、『SSSS.GRIDMAN』なら特撮巨大ヒーローモノの集大成という感じで、そのジャンルの総決算とでも言うような怪作に仕上がっている。

 これは、1クールという短い時間で物語を展開しながら、なおかつ、視聴者の関心を引き続けるために生まれた苦肉の作だとも言える。そのため昔のドラマやアニメに慣れていると、どこか居心地の悪さも感じるのだが、同時に思うのはここまでしないと見てもらえないのだ、という作り手の切迫感だ。

 そして、この切迫感――なにがなんでも視聴者の関心を引きつけようという気持ちが、そのまま教室に立てこもってあの手この手で生徒たちにメッセージを送り続ける柊の姿と重なるところが本作の隠れた面白さだろう。

 柊が生徒に発しているメッセージは、一つの問題に対し「じっくりと考えろ」ということだ。安易な結論に逃げて簡単な物語に回収してしまうこと、そのことに対する憤りをドラマを見ていると強く感じるのだが、それは、すぐにスマホに目をやり、安易な動画やSNSに目が行きがちな視聴者に対する苛立ちのようにも見える。

 そんな飽きっぽい視聴者と向き合ったことで生まれたのが、高密度の圧縮化された物語形態だというのは皮肉だが、今の時代、ここまでやらないと、人は相手の話を聴いてくれないのだ。

(成馬零一)

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