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いま、最高の一本に出会える

ONE OK ROCKが国内外で続けるあくなき挑戦 カテゴライズ超越した『Eye of the Storm』を聴いて

リアルサウンド

19/2/16(土) 10:00

 この1枚の登場を今かいまかと待ち焦がれていたリスナーは、日本のみならず海外にも多いのではないだろうか。前作『Ambitions』から早2年、ONE OK ROCKのニューアルバム『Eye of the Storm』がついにリリースされる。

(関連:ONE OK ROCK、なぜオーケストラとコラボ? 新たな実験が行われた日本ツアーを振り返る

 彼らは2015年にアメリカの<Warner Bros. Records>と契約し、日本で発表済みだった7thアルバム『35xxxv』をすべて英語詞で歌い直した『35xxxv Deluxe Edition』を北米で発表。その後<Fueled By Ramen>へと移籍し、国内バージョンの『Ambitions』とは収録曲を一部変更&全英語詞の『Ambitions』インターナショナルバージョンをリリース。Billboardのアルバムチャート(Billboard 200)で最高106位まで上昇したほか、同Hard Rock Albumsで2位、Alternative Albumsで9位、Top Rock Albumsで12位、Digital Albumsで19位という好成績を残している。また、同作を携えたワールドツアーも大々的に開催された。

 2年前のコラム(参照:ONE OK ROCK『Ambitions』は衝撃的な挑戦作だ! 国内外シーンに与える影響を読む)でも記したように、前作『Ambitions』は“「それまでのONE OK ROCKからの脱却」も強く感じられる内容”だった。エモやラウドロックの延長線上にあった6thアルバム『人生×僕=』(2013年)から、次作以降への予兆も感じさせるテイストが含まれた前作『35xxxv』への流れに抵抗を覚えた者は少なかったのではないだろうか。楽曲を構成する味付けこそ欧米のロックシーンと共鳴したものではあったが、その軸足はまだ“デビュー時から支えてくれた日本”に置かれていたはずだ。だからこそ、続く『Ambitions』での変化に動揺したリスナーも少なくなかったようだ。

 しかし、2017~18年とライブを重ねていくごとに『Ambitions』の楽曲が過去の名曲群と並ぶ代表曲になるつつあることは、実際に生で体感した者ならご理解いただけるだろう。中でも「We are」のアンセム度は突出したものがあり、バンドとともに観客がシンガロングする場面には毎回胸を打たれる。比較的ゆったりとしたテンポの楽曲が中心の『Ambitions』だが、過去のアップチューンを織り交ぜることで今まで以上に緩急に富んだセットリストを生み出すことができたのも、バンドにとって大きな武器になったはずだ。

 2018年に入ると、ONE OK ROCKは次の大きな一歩へ向けたいくつかの“予告”を我々に提供する。そのひとつが、初の全国ドームツアー『ONE OK ROCK 2018 AMBITIONS JAPAN DOME TOUR』(3~4月開催)に先駆けて2月にデジタルリリースされた新曲「Change」だった。東京ドーム公演でこの曲を生で聴いた際、筆者は「『Ambitions』で提示した世界観をさらに数歩推し進めたサウンドは、まさに第2章という言葉にふさわしいもの」と感想を残している(参照:ONE OK ROCK、国内での人気はもはや敵なし 4大ドームツアーで宣言した“第2章への道”)。

 また、同年10月に埼玉&大阪で実施されたオーケストラとの共演ツアー『ONE OK ROCK with Orchestra Japan Tour 2018』では、のちに配信リリースとなる新曲「Stand Out Fit In」を初披露。同ツアーさいたまスーパーアリーナ公演を観覧したときには、「楽曲の持つテイスト自体は『Ambitions』から「Change」の延長線上にある、海外のメインストリームでも存分に戦えるキャッチーな楽曲だった。いずれ届けられるであろうニューアルバムをこれだけで語るのは無理があるが、それでも次作はかなりの挑戦作になるであろうことは想像に難しくない」と率直に感じた(参照:ONE OK ROCK、なぜオーケストラとコラボ? 新たな実験が行われた日本ツアーを振り返る)。

 その後も今年2月公開の映画『フォルトゥナの瞳』に提供された「In the Stars (feat. Kiiara)」、4月公開予定の映画『キングダム』の主題歌として書き下ろされた「Wasted Nights」といった新曲を徐々に公開。このように楽曲単位で“次章への予告”を見せ続けてきたONE OK ROCKのニューアルバム『Eye of the Storm』も、2月13日のリリース日をもってその全貌が明らかになる。

 すでにお聴きいただいた方にはおわかりのとおり、今回は『Eye of the Storm』は前作以上の挑戦作であり、真の意味での勝負作になる1枚だ。『Ambitions』という大きなクッションは存在していたものの、その後の「Change」「Stand Out Fit In」などのリード曲で新作の振り切れっぷりは何となく予測可能だったし、その心の準備も多少はできていたことだろう。とはいえ「完全感覚Dreamer」や「Wherever you are」、あるいは「The Beginning」のようなスタイルを求め続けるリスナーには、今作は一聴しただけではその魅力は伝わりにくいのかもしれない。

 だが、ちゃんと向き合えばこの『Eye of the Storm』に収められた13曲はしっかり“ONE OK ROCKらしさ”を引き継ぎつつ、それらをネクストレベルにまで昇華させた作品であることに気づくはずだ。

 このアルバムに収録された楽曲はすべて、海外の著名なプロデューサーの手により仕上げられている。そのメンツはDan LancasterやCJ Baran、Colin Brittainといった過去のONE OK ROCK作品に携わった気心知れた者からDerek Fuhrmann、Pete Nappi、David Pramik、Kyle Moorman、Dan Bookなど数多くのヒットソングを手がけてきたプロデューサー/ソングライターまで多岐にわたる。1枚のアルバムで楽曲ごとに異なるプロデューサーを採用するケースは、サブスクリプションサービスでの単曲配信が当たり前となりつつある海外ではごく当たり前のこと。前作『Ambitions』もその流れに沿った1枚だったが、同作のインタビューでTaka(Vo)は「Colin Brittainと一緒に、自分たちがやりたいものを作っていく、そういう方向でアルバム制作を進めて。それプラス、海外のレコード会社からラジオでかかりやすいような曲も欲しいって言われて、向こうが提示してきたプロデューサーと一緒に曲を作ったりしてます」(引用:Takaが果敢に挑んだ”新たなオリジナリティ” 海外バンドと戦うために完成させた第二のデビュー作/激ロック)と回答しており、こういった流行を意識した人選は現地のレーベルからのリクエストもあったのかもしれない。

 それもあってか、本作で鳴らされている“最近のヒップホップ以降”のサウンドや、2分台後半から3分台というコンパクトな楽曲の体裁は完全に、“今”の欧米のヒットチャートを席巻するものや支持を獲得している楽曲と共通するものが少なくない。ぶっちゃけ、ポスト・マローンのアルバム『Beerbongs & Bentleys』(2018年)あたりと続けて聴いてもまったく違和感はない。オープニングを飾る「Eye of the Storm」からして、聴いた瞬間にその突き抜け方に驚きを隠せないだろう。だが、一度聴いたら耳から離れないキャッチーなメロディとスケール感の大きなアレンジには、これまで築き上げてきた“ONE OK ROCKらしさ”はしっかり残されている。Linkin Parkの最新作にしてチェスター・ベニントン(Vo)の遺作となった『One More Light』(2017年)にもゲスト参加したKiiaraをフィーチャーした「In the Stars (feat. Kiiara)」も、シンガロングしたくなるその親しみやすさは従来の“ONE OK ROCKらしさ”と重なる。かと思えば、スタジアムロック的なコーラスパートが印象的な「Push Back」もあるし、早くもライブでのキラーチューンになりそうな「Stand Out Fit In」だって含まれている。間違いなくこれらは“最新型のONE OK ROCK”なのだ。

 ロックやヒップホップ、ポップスなどジャンルで括ることがバカらしくなるほどに“ONE OK ROCKらしさ”に満ち溢れた、カテゴライズを超越したアルバム『Eye of the Storm』はここ日本において新たな潮流を生み出すことだろう。もしかしたら、本作はロックというジャンルよりも宇多田ヒカルの『初恋』(2018年)あたりとともに語られるべき1枚なのかもしれない。このあくなき挑戦が国内外で、前作を超える成功を収めることができるのか、今から楽しみでならない。(文=西廣智一)

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